産んだ後は自己責任か。子育てに追い詰められる母親達の声なき叫び

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少子化問題解決が声高に叫ばれる我が国ですが、とある調査で、多胎児を育児中の母親の9割以上が子供に対してネガティブな感情を持ったことがあるという事実が明らかになりました。まさに危機的といっても過言ではないこのような状況を改善する方法はないのでしょうか。健康社会学者の河合薫さんは今回、メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、子育て中の母親たちを取り巻く厳しい現状を紹介するとともに、行政の支援だけでなく私たち周囲の人間がサポートできることもあるはずと記しています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年12月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

「子供にネガティブな感情9割」の苦しみ

双子や三つ子といった多胎児を持つ親の93%が気持ちがふさぎ込んだり、子供にネガティブな感情を持った経験があることが、民間団体によるアンケート調査で分かりました。

育児中につらいと感じることは(複数回答)…

  • 「睡眠不足・体調不良」と「自分の時間が取れない」がいずれも77%
  • 「外出・移動が困難」が89%

どんな支援があれば気持ちが和らぐか?の問いには、

  • 「家事育児の人手」68%
  • 「金銭的援助」57%
  • 「子を預ける場所」52%

また、0歳の双子を育てるある家庭からは、「1日にオムツ替えが28回、授乳が18回あり、自分のための時間どころか、食事やトイレ、風呂の時間もままならない」との意見があったといいます。

子供一人でも大変なのに支援体制は極めて限定的。「多胎家庭向けの育児教室や父母の交流会などを開催」や、「育児ヘルパー派遣の支援」を単胎児の家庭より利用期間を優遇したり、多胎育児への公的支援としてタクシー利用費の補助制度などをしている自治体はありますが、保育園の入園を必要とする理由に多胎育児中であることは含まれていません

2018年1月に、生後11カ月の次男を床にたたきつけ死亡させた三つ子の虐待事件」で母親に実刑判決が言い渡されたことに関する見解は本メルマガVol.119「三つ子虐待死事件。減刑署名に猛反対の母親たちに見る日本の闇」で書きました。9月に行われた控訴審判決では「量刑は『重すぎて不当』とは言えない」として、懲役3年6月の実刑が言い渡されています。

多胎育児家庭では単胎児に比べて2.2倍も虐待が発生しやすいとされ、「家庭」あたりで計算すると虐待死の発生頻度は4.0倍です。「子どもを虐待しているかもしれない」と自責の念にかられている母親も決して少なくありません。

その一方で、年間に出産する母親のおよそ100人に1人が多胎児の母親で、出産年齢は高い。出産可能な病院が都市部に偏在するため、出産前から母親には精神的、肉体的負担がかかるうえに、経済的負担も大きい

以前、自民党の山東昭子・元参院副議長が「子供を4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」と発言し、物議を醸したことがありました。

子供をたくさん産め!と言っているのに、支援体制は不十分

やれ少子化だ、それ育児と仕事の両立だ!と豪語する偉い人たちは山ほどいますが「産んだあと」の母親へのサポートはどうでしょうか?

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