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「社会は変えられる」という自信に。小学生の陳情を区議会で採択

「なぜこんな制度があるのだろう」「もっとこうだったらいいのにな…」仕事をしていて、あるいは日常生活でこんな思いを抱くことはありませんか?でも「決まりだから」とか、「自分が提言したところで何も変わらないだろう」と現状改善に動くことを躊躇してしまう…。そんな凝り固まった思考で、「より良い未来」を創ることを諦めがちな大人たちに、小学生が「お手本」を見せてくれました。

区長さんへ「サッカーができる場所がなくて困ってます」

NHK NEWS WEBや朝の情報番組「スッキリ!」が紹介した、板橋区の小学生チーム「ザ・レッドムーン」の活動に賞賛の声が集まっています。

公園の「禁止事項」はもうやめよう。武田教授が指摘する日本人の病」でも記されているように、「危険がないように」「トラブルが生じないように」という保守的な議論から子供たちの遊び場に禁止事項が次々と設けられ、ついにはサッカーやキャッチボールなどのボール遊びができない公園で溢れるようになりました。遊戯やスポーツまでをも禁止する公園もあり、「公園でできることは瞑想だけ」という皮肉が聞こえる事態になっています。

ザ・レッドムーンの小学生たちが放課後にサッカーをして遊んでいた公園も、新たに設けられたルールによって、ある日ボールの使用が禁止に。児童相談所を建設する工事の影響でスペースが減り、危ないからという理由でした。

困った小学生たちは顔なじみのボランティアセンターのスタッフの助言を受けて区役所で相談。区長に手紙を出せる制度があることを知り、区長に手紙をしたためました。

「ぼくたちは、小学5年生です。ぼくたちはボール遊びを、やる事ができなくなってしまったのです。その事から、ぼくらはとても悩んでおります。あたらしい公園などを作ってもらえれば、こうえいです。日本はとても狭い国です。しかもその中の、東京に、そのような場を作れなど、とてもむずかしい事です。だけどぼくらは、サッカーをしたいのです。おねがいします!!!」

その1ヶ月後に区長から届いたものは、「ボール遊びができる公園は15か所あります」「小学校の校庭を開放していますが、安全のため柔らかいサッカーボールでないと使えません」という、パソコンで打たれた無機質な紙切れ一枚でした。

「事実調査」と議会への「陳情」

「柔らかいボールしか使えないことは知っている。だからこそ、これまで通りに遊べる場所が欲しいのに、答えになってない」。以前と比べると1/6ほどの広さしかないスペースでは思いっきりボールを蹴ることのできなかった小学生たちは、放課後の時間を使って遊べる場所を探し始めます。

ホームページにはボール遊びできると書いていても、看板を見ると禁止されていたり、利用時間が短かったり…。結局遊べる場所を見つけられなかった小学生たちの次の手が「議会への陳情」でした。またも、ボランティアセンターのスタッフに、「陳情」という方法があることを教えてもらったのです。

区議会議員を紹介してもらい、「陳情」の仕組みを教わり、大人の力も借りながら次の3点を盛り込んだ「陳情書」を作成。

小学生から板橋区議会に陳情書が出されたのは初めてのことだったようですが、その他の議案とともに慎重に協議され、聞き届けられたものもありました。

制度も社会も、自分たちの手で変えられる

文部科学省が推進している「アクティブ・ラーニング」。従来の受動的な授業・学習と対になる「能動的な学習」を指した学びの手法ですが、情報化社会が進み、社会的変化が著しい世の中において、自らが主体的に物事を判断し、社会や物事に対して働きかけていく力が今、求められています。

たくさんの情報にアクセスし、他者と協働しながら、積極的に新しい未来を形づくっていく。ザ・レッドムーンの活動は、まさにこのアクティブラーニングを地で行くものではないでしょうか。

また、「僕らと同じ意見の人もいれば、反対の意見の人もいる。公園やグラウンドはみんなのものだから、不公平にならないように決める必要があるんだ」「大人はこうやって話し合って決めているんだと知ることができた」という小学生たちの気づきは、自分たちの力で社会を変えられたという自信とともに、多様性についての理解や大人の世界への興味をもたらしたことでしょう。

「もうすぐ中学校に進学するので、サッカーをする機会は減るかもしれないけれど、少しでも後輩たちのためになったのならやってよかった」とコメントしたというザ・レッドムーンのメンバーたち。彼らの取り組みは、ネットでも様々な反響をもたらしています。

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image by:shutterstock.com

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