韓国とは別。日本人になら可能な人口減少に負けぬ国づくりの方法

 

最低賃金が異常に低い日本

さらに気がついたのは、日本の最低賃金が低すぎる」ということ。189pに出ている表(最低賃金、購買力平価、米ドル)によると、日本の最低賃金は、6.5ドル。これは、韓国の7.36ドルより低い。台湾の8.75ドルよりも低い。ちなみに、アメリカは8.5ドル、イギリスは9.38ドル、ドイツは10.56ドル、フランスは11.03ドルです。

最低賃金を上げると、生産性が上がる

アトキンソンさんは、「最低賃金を上げると、生産性も上がるというはっきりとした傾向があることを指摘されています。

欧州を中心に、生産性を向上させる効果がもっとも期待され、実施されている経済政策は、継続的な最低賃金の引き上げです。最低賃金と生産性の間に、強い相関性が認められるからです。
(168p)

彼は、成功例としてイギリスをあげています。イギリスには1999年まで、「最低賃金」がありませんでした。その後、継続的に最低賃金を引き上げた。

  • 2000年:2.78%
  • 2001年:10.81%
  • 2002年:2.44%
  • 2003年:7.14%
  • 2004年:7.78%
  • 2005年:4.12%
  • 2006年:5.94%
  • 2007年:3.18%
  • 2008年:3.8%
  • 2009年:1.22%
  • 2010年:2.24%
  • 2011年:2.53%
  • 2012年:1.81%
  • 2013年:1.94%
  • 2014年:3.01%
  • 2015年:3.08%
  • 2016年:7.46%
  • 2017年:4.17%
  • 2018年:4.4%

そして、ここ20年の最低賃金の平均引き上げ率は、年4.17%!!!本当に驚きました。こんなことをしたら、「倒産が激増するのではないか?」と普通は思いますよね?私もそう思いました。

アトキンソンさんは、「最低賃金引き上げで生産性があがる6つの理由」を記しています。

  1. もっとも生産性の低い企業をターゲットにできる
    考えてみると、「最低賃金を上げられて困る企業」は、現在「最低賃金で労働者を雇っている会社」です。労働者の立場からいえば、「安くこきつかう会社」ということでしょう。こういう企業に賃上げを強制し、生産性を上げさせる効果がある。
  2. 効果は上に波及する
  3. 消費への影響が大きい
    今最低賃金で働いている人たちの所得が増えるので、その増加分は、ほとんど消費に向かうでしょう。
  4. 雇用を増やすことも可能
  5. 労働組合の弱体化
  6. 労働生産性向上を強制できる

イギリスでの検証結果は?

年平均4%以上の最低賃金引き上げを20年にわたってつづけたイギリス。どういう結果になったのでしょうか?倒産と失業者が激増したのでしょうか?アトキンソンさんは、「その後のイギリス」について書いています。

  1. 失業への影響はなかった
    イギリスの最低賃金は、1999年の3.6ポンドから2018年の7.83ポンドまで2.2倍引き上げられた。2018年の失業率は、4%。これは1975年以降でもっとも低い数字。つまり、「最低賃金を上げると失業が増える」ことはなかった。
  2. サービス業がより影響を受けた
    サービス業では、失業が増えず、生産性は1998年から2000年の間に11%向上した。
  3. 生産性が向上した
  4. 生産性の高い企業ほど雇用を増やした
    別の場所で、アトキンソンさんは、最低賃金引上げの重要な効果について触れています。最低賃金引き上げで、「格差が縮小した」。

先進国では格差が拡大している国がほとんどですが、イギリスはその中で格差が縮小している数少ない国の1つになっています。
(198p)

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