潰えた改憲の夢。2020年に安倍政権が倒れてもおかしくない理由

 

となると退陣か?

さて、五輪後まで安倍政権が続いていたとして、そこで彼が直面するのは、

  • 破れかぶれの解散・総選挙で局面打開を図り、その結果が巧く行けば改憲目標を一層高く掲げて4選も視野に入れて突き進むのか
  • それだけの気力も失せて、総裁任期を1年残して退陣するのか

という選択だろう。私の見るところ、その時点で彼には、もう一度奮い立って強行突破を図るだけの体力・精神力は残っておらず、また自民党全体に対しても公明党に対しても、強烈な求心力を発揮して両党を解散・総選挙という試練に引きずり込むことが出来そうにない。従って前者の可能性はほぼ絶無で、後者に傾く

その時に、それでもまだ少々とも余力を残していれば、無難な岸田文雄あたりを後継指名してキングメーカーとしての地位を得ようとするのだろうが、その力も残っていなければ、第1次政権の末尾と同じように、だらしなく投げ出す格好となり、岸田と石破茂を軸とする繰り上げ総裁選に自民党の行方が委ねられることになるのだろう。

いずれにせよ、このような展開では、安倍首相の夢である改憲は政治日程に上らず、挫折する。これは鶏と卵の関係で、来年前半の政局を通じて安倍首相が改憲発議への道を少しでも前進させられるのであれば、それをテコとして政権の延命を図ることも出来るかもしれない。しかし相変わらず改憲の具体的な道筋を示せないまま、口先だけで譫言(うわごと)のようにそれを唱えているだけでは、逆に政権を終わらせる導引となるのである。

野党共闘の行方は

来年半ばには訪れるかもしれない安倍政権の頓死が、野党による政権交代の機会となるのかどうか。現状ではその可能性は極めて少ないが、いつでもそれに対応できるよう備えるのが野党の務めだろう。

このところ、立憲民主と国民民主の両党の合流」という話が盛り上がっていて、それはそれで結構なことだとは思うけれども、やはり中心問題は理念と基本政策における対自民のオルタナティブをどう明示出来るかである。それを抜きにしての一緒になるとかならないとかの話が切羽詰まっているのは、政党助成金の半分が1月1日を基準とした政党の議員数によって配分されるという事情によって煽られているだけのことで、国民とは何の関係もない(なおもう半分は直近の選挙での得票率で配分される)。

私は、何はともあれ数を増やして巨大な野党を作って2大政党制の原理に従って政権交代を実現するという観念には、今は不賛成で、与野党ともがその時々の直近の課題を軸に連立政権構想を掲げて政権交代を目指すのが現実的ではないかと思う。

従って、現状での立憲民主と国民民主の「合流」は、単なる数合わせに終わるしかないことが見えているが故に賛成でなく、改めてリベラル・サイドの理念と基本政策を打ち立てた上でそれに賛同する個々人の再結集が必要だと思っている。

それが、安倍政権がいつ頓死してもおかしくない2020年政局に間に合うのかどうか、はなはだ心配ではあるけれども、政治はいつも意外性の連続。そうなったらなったで何とかなっていくものだと思い切るしかないのかもしれない。

【資料】2020年の主な予定

image by: 首相官邸

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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