MAG2 NEWS MENU

第三次世界大戦は不可避か。米国が戦争を始めるしかない裏事情

アメリカによるイラン革命防衛隊司令官の殺害により、緊張が高まる中東情勢。第3次世界大戦の勃発も囁かれるなどもはや軍事衝突は避けられぬ状況とも言われますが、各国はどのような思惑を持ち中東での「立場」を定めるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、アメリカ・イラン・アラブ諸国、さらにEUや中露の動向を読むとともに、日本が受ける影響や今後についても考察しています。

日米株価

NYダウは、連日の高値更新で、1月2日に史上最高値28,872ドルとなり、今年も爆上げが続くのかと思っていたら、2日米国防総省は、イラン革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害したと発表したことで、1月3日に233ドル安の28,634ドルになっている。ドル円は一時107円台まで上昇し、原油価格は一時63ドル台に上昇。金相場は1540ドル台に急伸

日経平均株価は、12月17日に年初来高値24,091円になったが、以後景気後退などから下落して、12月30日に23,656円となり、中東情勢が緊迫して円高・原油高で1月6日は窓を開けた下落になる可能性が高いことになる(編集部注:2020年1月6日の大発会は、日経平均2万3204円86銭で2019年末より451円76銭安)。

中東戦争になるか?

米国が2日ソレイマニ司令官を無人機で爆殺したことで、イランのトップであるハメネイ師は報復を行うとした。ロシア、中国、フランスはイランのソレイマニ氏を殺害した米国の攻撃を非難。

米国は戦争に備えるために、空挺部隊3,500人を急遽、中東に派遣し、イスラエルのネタニヤフ首相はギリシャ訪問を急遽切り上げて帰国し、イランに対して戦闘警戒態勢に入った。米国・イスラエル対イラン連合軍の戦争は、避ける事が出来ないようだ。しかし、サウジなどスンニ派諸国は、ホルムズ海峡封鎖の恐れがあり、戦争に反対である。

イラン連合軍とは、シリア、レバノンのヒズボラ、イラクシーア派、パレスチナのハマス、イエメンのフーシ派などであり、裏で味方するのは、ロシアと中国になる。

このレバノンのシーア派民兵組織ヒズボラの指導者ナスララ師も、報復を宣言している。イスラエルとの国境付近にいるが、レバノン政府もヒズボラの影響下にあるので、イスラエルとレバノンの戦いも起きることになる。ゴーン氏の逃亡先も戦火に見舞われることになる。

イランは報復を宣言しているが、米国との正面戦争では負けるので、報復と言っても、米国またはイラクでの大規模テロのようなことを計画しているように感じる。

イランは、米国との正規戦争をしたくない。するなら、中露を味方にして、共同戦線にすることになるが、核戦争になるので、米中露は、裏で戦争回避に動くので、米国とイランの単独戦争になる確率が高い。しかし、それでは、イランが負けることになる。米国は、このため、ロシア国内でのテロ計画の情報をロシアに提供しているし、中国とは、米産品輸入量などの貿易面で譲歩している。

しかし、米国は3日にも現地の民兵組織を標的にしたドローンによる新たな攻撃を行い、5人を殺害した。その後も攻撃を緩めない。米国はイランとの単独戦争に持ち込む意向のようである。

米ポンペオ米国務長官は3日、イランのあらゆる報復措置に対応する準備ができていると発表。中国とロシアがイランに味方して戦争に参入しない準備ができたということである。

ソレイマニ司令官殺害は、トランプ大統領の指示によると国防総省は発表しているので、何かの意図を感じ取る。トランプ大統領は、「ソレイマニ司令官は過去20年間に1,000名をこえる市民を拷問し殺害してきた世界ナンバーワンのテロリストだ。彼を殺害する行動を米国はもっと早い時期に取るべきだった」と、また「米国人を死傷する攻撃を計画した」と米国市民の殺害計画を述べて、トランプ大統領は、行動を正当化しているが、違う理由がある

トランプ再選には、福音派の支持が必要であり、福音派は聖書の予言の実現を望んでいる。もし、トランプ大統領がヨハネの黙示録の最後の第7の封印を解くなら、絶大な支持が期待できる。ということで、再選するために中東戦争をするしかないのだ。

その上に、株価のこれ以上の上昇は、選挙前にバブル崩壊になり、経済混乱になるので、利下げも量的緩和もできないし、中国国内体制を問題化する交渉では、中国の抵抗で第2弾の合意もできない。

このため、戦争による需要創造で景気上昇をさせて、発行する戦時国債をFRBに買わせて、ドル札を大量に発行してインフレを起こして、ドルを下落させ、原油価格の上昇で米国のシェール企業を儲けさせる。また、ホルムズ海峡の封鎖で日本や中国に米国産原油やLNGを高値で売ることもできる

ということで、米国にとって、中東戦争はいいことばかりである。

問題点は、ロシアと中国が参戦すると、世界核戦争になるので、裏で根回しして、中露の参戦を止めることである。

2020年の予測

中東戦争と米国経済

正月から不吉なことになっている。トランプ大統領の再選にとって何が有利かで事態が動くことになる。米国民の30%が信仰する福音派の存在は大きい。福音派は、聖書に書いてあることは全て正しいと信じているので、ヨハネの黙示録も当然実現すると見ている。

ヨハネの黙示録には、7つの封印があり、第6の封印までは解かれている。最後の第7の封印を解くとあり、それはハルマゲドンという最終核戦争が起きることで、イスラエルが滅亡すると書いてある。この実現を福音派はトランプ大統領に託している。そのため、トランプ大統領を神の使いと言っている。そして、トランプ大統領に、実現を強く迫っている。

しかし、トランプ大統領は実現に動かないので、福音派の雑誌がトランプ大統領を批判したことで、戦争が嫌いなトランプ大統領も、渋々実現する方向に向かっている。ソレイマニ殺害後、直ぐにトランプは福音派の集会に出席し、その席に雑誌の編集長の孫娘を壇上にあげて、実現したことをアピールしている。しかし、トランプ大統領も、まだ本格的戦争には向かわないようにしているようだ。

この中東戦争が今年の一番大きなことである。これ以上には合意できない米中通商交渉が後ろに隠せたことになる。そして、国債発行とFRBの量的緩和により米国株価は、上昇することになる。

よって、中東戦争一歩手前になれば、トランプ大統領の再選の可能性が高まることになる。

しかし、日本にとっては、円高になり原油・LNG価格が上昇して、貿易赤字が増えることになる。

戦争遂行で、米国の製造業立て直しで日本企業の協力が必要になり、日本経済は苦しくなるが、日本企業は米国での生産が増えることになる。日本の株価は下がるが、米国進出の企業の株価は上がる可能性もある。

この米国に味方する国があるかというと、フランスは、米国を非難しているし、ドイツも米国との関係は良くない。ということで、EU諸国は中立になる。カナダ、英国、ニュージーランド、豪州などは米国の味方であり、共同行動をとることになる。日本は後方支援になる。メキシコなど中米は米国の味方になる。南米は中立。

中露の動向

この攻撃をしめたと内心思っているのは中国とロシア、そしてトルコかも知れない。

中国は、ミンスキー・モーメント寸前であり、バブル崩壊になるとその影響は大きいし、日本にも大きな影響を及ぼすと見ていた。

人民元を大量に市場に供給するジャブジャブな中国経済がいつまで持つのかはわからない。このような経済の崩壊は時間の問題であるが、その時間延しを中国政府は行っている

香港も市民のデモなどが活発であるが、中国政府としては、動きようがない。米国から人権問題を言われて、米国との貿易を止められると経済崩壊になるからである。

しかし、中東戦争になると、イランなどからの戦争特需が中国経済を活性化させるので、今年にバブル崩壊にはならない可能性がある。

中東戦争が続いている間は、経済崩壊にはならないが、中東戦争でイランが負けることになれば、イランに貸した借金が戻らずに、経済崩壊になるので、イランが負けそうになると、中国が中東戦争に参入する可能性が出てくる。

ロシアは、原油価格低迷のために経済が不振に陥っていたが、イランとの戦争状態が長引けば、原油価格の上昇で経済が回復する。しかし、ロシアは、シリアに空軍と大量の非正規な陸軍人を送り込んでいる。このため、シリアが戦場になると、ロシアも参戦することになる。

トルコ議会は正式にリビアへの派兵を決定し、リビア原油の権益確保に乗り出す。原油価格が上昇すれば、派兵費用が掛かっても元が取れることになる。

米国は、戦場をイラクに限定したいはず。中国とロシアが参入しないように戦場を限定して、イランをやっつけたいのであろうが、レバノンのヒズボラがイスラエルに戦闘を開始すると、戦場は、中東全体になる。イスラエルを戦場に巻き込むと危ない。本当にハルマゲドンになる。第3次世界大戦になってしまう。それだけは避けてほしい。

北朝鮮

北朝鮮は核とミサイル開発を続けるが、中東戦争を米国が始めるなら、当分、そのままになる。トランプ大統領も口では牽制するが、2正面作戦は行わない。第2次朝鮮戦争になるかと思いきや、金正恩委員長は、命拾いをした可能性がある。しかし、ドローンでの空爆という可能性もあり、気を抜けないはず。

日本経済

日本は原油高、円高になり、しかし、金融政策が取れないし、財政出動も大規模にはできないことで、日本経済の衰退は、急速に進むことになる。前の1964年東京オリンピックが高度成長で、2020年東京オリンピックが経済衰退の転換点として、将来、記憶される可能性が高い。

毎年50万人以上の人口減少とマイナス金利政策、IT経済に転換のために、日本の構造変革を急速に行う必要になっているが、それを政府も大企業は行っていないことで、世界の競争についていけなく、日本経済は縮小を始める地方経済の縮小は、より大きい

その上に、温暖化で台風の勢力も増して、毎年、大きな被害を出している。大きな地震も多発している。この被害からも、日本経済は、大きな重荷を背負わされている。

もう1つが、世界的な新興市場のバブル崩壊が起きて、日本の代表的な投資企業も大きく躓くような気がする。昔の西武セゾンGの堤清二氏を見ているような感じがしている。この面からも日本の株価は下落する可能性が高い。

しかし、日銀ETF買いを続けているので、大きくは落ちない。日銀は、売り買いの基準を決め、永続的なETF買いの制度を確立することである。このコラムでは日銀がETF買いを始めた時から口を酸っぱくして言っていることである。PERやPBRの基準を定めるべきなのである。もし、日銀のETF買いを公式に止めたら、株価は大幅な下落になり、株価は1万円以下になる。だから、止めることもできない。

そして、日銀ETF買いにより、日本の多くの企業の筆頭株主が日銀になっている。今は経営に口を出さないというが、政策を実行するためには、口出しをする必要にもなる。特に資本主義の問題点は、再分配機能がないことであり、この機能は国家しかできない。企業役員と従業員間の給与差などを拡大しないようにするなどである。

日本の統制経済化を進めて、衰退することを前提に日本国民をどう食わせていくかを考えないと、いけない状態になっていると見る。

消費税は、これ以上には増税できないが、高額商品に対しては間接税を上げることができるので、そのような観点から富の再分配を検討することである。

法人税を上げないで、配当性向を高めて配当金を上げる政策にすることで、資本主義の枠内で、日本企業を海外で儲けさせて、日本経済は下落するが、日銀への上がった配当金を国庫納付金にして、日本国民の生活の質を上げる事に使えばよいのである。

配当性向を上げると、株価も上がることになり、財政出動時、日銀に株を売ってもらい、臨時納付金にもできる。

その面からも、野党の活躍が期待される状態であるが、自民党のあら捜しに奔走して、これから訪れる日本衰退時の経済政策を提示していない。

日本の政治

安倍首相は、東京オリンピック後辞任すると見る。そうして、新しい首相の下での衆議院選挙になる。今は、次の首相候補を岸田氏と石破氏と言っているが、この段階で名前が出る人たちは、本命ではない

それなら、安倍首相の子飼いの人たちや菅官房長官が出てくるのかというと、それでは、モリカケ、桜を見る会、IR汚職などの国民が不審を持つ問題の責任が取れないので、無理である。

ということで、それ以外の人になる。安倍首相と麻生副総理が組んでいるので、その線からの候補者が出てくるような気がする。

さあ、どうなりますか?

image by: SNK777 / Shutterstock.com

津田慶治この著者の記事一覧

国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 国際戦略コラム有料版 』

【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け