アベ友の影、再び。首相に「宇宙作戦隊」を作らせた財界人の実名

 

「体制間対立」という過去の幻想

どうしてこんな馬鹿げたことがまかり通るのかというと、20世紀を彩った「冷戦思考」から脱け出すことができないからである。

「米国では、米国主導のリベラルな世界と、中国主導の権威主義的世界のどちらが好ましいのか、という体制間競争の視点が強まっている」と、神谷万丈=防衛大学教授は指摘する(18日付朝日)。その通りで、冷戦がとっくに終わって世界を二分する資本主義陣営と社会主義陣営が覇を競い合うと行った国際政治構造は本質的に消滅したというのに、いつまでもそのようにしか思考できないのが米国である。

そのため、一方では、20世紀のパックス・アメリカーナへのノスタルジアに駆られて独りよがりな軍事力行使に打って出るかと思えば、他方では、また自らの体力の弱まりに気付いて急にしおらしくなったりするといった、周りからは予測不能なほどの振幅で唐突な行動を繰り返す老人のような症状を見せる。

このことは十分に予想できたことで、例えば、CIAはじめ米政府の情報機関を集めた国家情報評議会(NIC)が4年に一度発表する未来予測報告書の2004年版「2020年の世界」は、「米国は2020年においても最も重要な単独の大国に留まるであろうけれども、その相対的なパワーは徐々に衰えていくのを自覚することになろう」と述べていた。この言葉を受けて、私は2006年9月に出した著書『滅び行くアメリカ帝国』(にんげん出版)の最終章で、次のように述べた。

▼キーワードは「最も重要な単独の大国」で、米国の政府シンクタンクからこういう言葉が発せられたことにかなり驚いている。

▼パックス・アメリカーナを維持しようとすれば、“唯一超大国”である米国を頂点として欧州とアジアを左右に従えたピラミッド型の支配秩序をあくまで追い求めなければならないが、そんな目標は幻想的で、米国は「超のつかない、しかし十分に世界最大の経済を持つ、普通の大国の1つ」へと軟着陸を遂げなければ大破綻を避けることはできない。

▼しかし、米国が〔覇権秩序を捨てて〕「多国間協調主義(マルチラテラリズム)」、国連はじめ国際機関重視の流れに屈するなどということがありうるのか。キッシンジャーは「それだけでは自滅的にならざるをえない〔ブッシュ子の〕単独行動主義〔ユニラテラリズム〕と、抽象論に止まって何もできずに終わりかねない多国間協調主義との対立を超越していく展望」が必要だと言い、またフランシス・フクヤマは国連など公式の国際機関ばかりでなく非公式ないし民間の機構や臨時の連合などを含めて幅広い国際組織を活用する「多元的多国間主義〔プルーラル・マルチラテラリズム〕」を提唱するが、実際には米国は今後も、その両極の間でますます激しくブレを繰り返し、軟着陸に失敗し続ける公算の方が大きいだろう……。

14年前の予想のとおり、米国は2020年になってもまだ超大国から巧く降りることができずに失敗し続けている。その米国をまだ“盟主”だと信じてしがみついて行っているのが安倍首相で、その構図が日米の宇宙協力という分野でも顕著になっているのである。

ちなみに、その安倍首相の尻押しをしているのが葛西敬之=JR東海名誉会長である。極端な嫌中親米派として有名な葛西は、まずいことに、政府の宇宙開発戦略本部の諮問機関「宇宙政策委員会」の委員長で、日米が手を組んで「中国が月面を支配する可能性を封じる」方向に日本を仕向けようとしている。

image by: 航空自衛隊 Japan Air Self-Defense Force - Home | Facebook

高野孟この著者の記事一覧

早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 高野孟のTHE JOURNAL 』

【著者】 高野孟 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週月曜日

print
いま読まれてます

  • アベ友の影、再び。首相に「宇宙作戦隊」を作らせた財界人の実名
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け