自分の仕事に命を懸けろ。不世出の教育者が若き相談者に説いた事

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恋愛にせよ仕事にせよ進路にせよ、人生の岐路に立たされたときに悩みを思いきり打ち明けられる…。そんな「師」と呼べるような方の存在は、私たちの人生をより充実したものにしてくれます。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、かつて沖縄大学学長を務められた加藤彰彦氏が、師と仰ぐ不世出の教育者・森信三先生と語り明かしたある日の想い出を綴っています。

森先生にぶつけた恋愛相談 ─恋に悩んでいる方へ─ 加藤彰彦

掲載当時、大きな反響を読んだ名エッセイ『ドヤ街に来られた森信三先生にぶつけた恋愛の相談 29歳男性へ』。

あるきっかけから、不世出の教育者である森信三先生と出逢った加藤彰彦さん。加藤さんは森先生に何度もお会いする中で、ある日、恋愛の悩みを打ち明けます。森先生から返ってきた言葉とは──。


 

小学校もろくに通えなかった人もたくさんいて、勉強がしたいという彼らの要望に応え、私は無認可の夜間学校を作って教壇に立ちました。本当に昼も夜もない忙しさでした。森先生はいつも私を気にかけてくださり、「あなたの仕事を見てみたい」とおっしゃっていました。

ある日、関東での会合の帰りに足を伸ばしてくださって、本当にドヤ街に会いに来られたのです。ひとしきり相談所での仕事ぶりをご覧いただいた後は、三畳一間の私の部屋にお泊まりになりました。教育のこと、仕事のこと、このドヤ街の事情、森先生は一晩中私の話に耳を傾けてくださいました。

そして、もう明け方が近づいた頃でした。最後に私は当時一番悩んでいたことを打ち明けました。それは恋愛のことでした。

ドヤ街での仕事ははっきり言ってきついものがあり、自分は家庭など持てないと思っていました。生涯独りで生きていくつもりでしたが、熱心に言ってくださる方が現れ、悩んでいたのです。

話し終えると、先生は声高らかに笑って、「これはご縁があるかどうかですね」と言いました。

「あなたは自分の仕事に命を懸けなさい。そうすれば必ず一緒に行く人は現れます。相手のことを考え、振り回される人生なら、あなたはきっと途中で燃え尽きるでしょう」

そう言って、また笑いました。私はスッキリして、ドヤ街に骨を埋める覚悟で働くことを決意しました。すると不思議なことに、いまの妻が手伝いに来てくれるようになったのです。

私はあの日の朝焼けの空と、先生の澄んだ笑い声をいつまでも忘れることができません。

※ 本記事は月刊『致知』2005年6月号「致知随想」から一部抜粋・編集したものです。

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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