障がい者だけじゃない。福祉従事者にも「学び」の機会が必要な訳

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特別支援学校を卒業したあとの学びの場を地域で作っていく必要性を訴え、活動を続けている引地達也さんが、日々のさまざまな気づきをメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』に綴っています。今回は、青年期の学習こそ「自分づくり」の大切な時間だという鳥取短期大学の國本教授の考えを紹介。障がい者はもちろん、福祉領域の従事者にとっても継続的な学びは必要で、課題はいかに「学び」=「楽しい」を実感してもらうかにあるとしています。

青年期の学びは自分みがきに向けた「自分くずし」の時間

先日、甲府市で行われた「青年期における学びを考える会 シンポジウム2020」に招かれ、私は特別講演として支援が必要な人への学びの場であるシャローム大学校の取組みを紹介しながら、特別支援学校を卒業した後の「青年期」の学びの重要性を説きつつ、それは社会全体が生涯にわたる学びの楽しさを実感し共有することが第一歩であると力説した。

そう、これはシンポジウムで自分が言いながら熱を帯びて言葉になったものなので、私の中で熟成した言葉ではなかったのだが、これまでの取組みは結局、一緒に学ぶ場づくりは、参加する人が楽しいと思えることが重要で、勉強や学習にネガティブなイメージを持っていると、なかなか行動が楽しくならないのが実感として明確だ。だから、障がい者の生涯学習や社会教育を考える上でつくづく「楽しさ」を追究するのは間違いではないと思う。

このシンポジウムでは鳥取短期大学の國本真吾教授が「七転び八起きの『自分づくり』」の基調講演もあり、そこで國本教授は青年期の学びの重要性を「自分くずし」の時間と説いた。つまり、「自分くずし」から「自分さがし」を経て「自分みつけ」に至り「自分みがき」へと移行する、という考え。

特別支援学校を卒業し、すぐに就労や福祉事業所への通所に至っても、そこでは一定の作業という役割が与えられ、生活は職場や事業所と自宅との往復が中心となる中で、なかなか「自分くずし」が出来ないままとなる。

実は、いるかもしれない本当の自分、いるかもしれない何かをやりたい自分、できるかもしれない自分、にはたどり着けないなのではないかと考えてしまう。國本教授の言う「自分づくりの過程の保障」をこの社会はどんな人へも提供しているだろうか、との疑問にも行き着く。

障がい者に限らず、「自分くずし」により新しい「自分みがき」をするのは、その可能性を社会が示すだけでも、あるべき自分に押し込められた方の中には、その押し込められたストレスから解放される気分になるかもしれない。

現在、私が文部科学省事業として開発を進めている福祉領域に携わる方が、再教育をして広いステージで活躍してもらうためのカリキュラムは、どうしても「研究」とか「再教育」という言葉で硬質なイメージになってしまうが、要は福祉領域で確立している自分を再度の学びで「くずし」て、新しい自分みがきへ至るためのきっかけづくりである。

それを「面白い」と思ってもらうために、カリキュラムの内容をより活動的なアクティブラーニングを基本としながら、受講者どうしが関わりあい、話し合い、学びあう場所にしながら進行中である。

学びにはどうしても評価が伴うから、その評価を苦手と思う人は多い。評価されることに拒否反応やトラウマがある人もおり、若いころの「成績」に対するプレッシャーの傷は多くの人にとっては深く、いまだ癒えていないらしい。だからこそ、社会教育や生涯学習でその傷を癒せないかと考えてしまう。

前述のシンポジウムで私が口走った「勉強って面白い、生涯学習は楽しいって市民のひとり一人が思えなければ、大きな広がりにはならないと思います」というのは本音で、つまり楽しくすれば、問題は解決できるはず。口走りながら、自分の中では課題が明確になったのだと一人で納得している。

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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