新型肺炎の拡大で確信。危機管理のプロが提言する「病院船」導入

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クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号では、新型コロナウイルス感染症の拡大が大問題になりました。この事態を受け、政府内からも今後に備えて「病院船」の活用を検討しようという声があがっています。この「病院船」とはどのようなものなのでしょうか?軍事アナリストで危機管理の専門家でもある小川和久さんは、主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』で、病院船の規模や船舶数、必要な設備や平時の運用方法から必要人員の確保策まで、具体的に提言しています。

次なるパンデミックに備える

新型肺炎(新型コロナウイルス感染症)のニュースのうち、私が気になってならないのは、クルーズ客船ダイヤモンド・プリンセスのケースです。

これがもし、感染力と致死率が高い強力なウイルスによるパンデミック(感染症の世界的流行)だったら、クルーズ客船は悲劇の船として歴史に名が刻まれるかも知れません。

いま、私たちがしなければならないことは、現在進行形で新型肺炎の蔓延を抑え込むとともに、致死率の高いウイルスによるパンデミックへの備えに着手することではないかと思います。

そこで、少し発想を変えてみたいと思います。今回のクルーズ客船ごと、医療設備が整った環境のもとに「隔離」することができるなら、簡易検査キットを使って短期間に全員の検査を終え、平均2週間と言われる潜伏期間が明けると同時に、感染していない乗客を自宅に戻すことができたのではないでしょうか。

この考え方は、オーストラリア政府が中国湖北省から退避した約600人を本土から1500キロ離れたクリスマス島の移民収容施設に隔離した発想と似ていますが、医療面からもう少しレベルアップを図る必要があります。

むろん、日本にはクリスマス島にあたる最低限の医療施設が備わった離島はありませんし、クルーズ客船にも医療設備が備わっているわけではありません。

しかし、3万トン前後の中古貨物船に医療モジュールコンテナを積み、標準で200ベッド、場合によっては500ベッドを備えた病院船を、それも5隻から10隻備えていれば、医療環境が伴った状態で2週間の洋上隔離が可能になるでしょう。この3万トン前後の中古貨物船の活用モデルは、中国が先鞭をつけ、国際貢献活動に投入しているものです。

災害も疫病も発生していないときは、70~80%の船をアフリカ沿岸などの医療活動に投入し、日本の国際貢献の柱として活動させ、定期点検に入っていない残りの船は、救急医療や疫病の専門スタッフを教育・訓練するための洋上の病院として日本列島周辺を巡回させ、日本で大災害や疫病が発生したときにはただちに投入できるように備えておくのです。

人材不足が叫ばれて久しい医師など医療スタッフについては、アジア、アフリカなどに人材を求め、日本で育成し、一定の義務年限は日本の医療に従事してもらうシステムを確立すれば、この病院船ばかりでなく、日本の地域医療を安定的に維持できるのではないかと思います。

いま必要なことは、いたずらに悲観的になったり、押っ取り刀で走り回ったりするのではなく、次なる危機への備えをスタートさせるといった、禍を転じて福となす発想ではないかと思います。(小川和久)

image by: Ken Schulze / shutterstock

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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