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新型肺炎はアップルもダメージか。3月の新製品発表会に中止危機

14日にはフェイスブックが「グローバル・マーケティング・サミット」の中止を発表するなど、新型肺炎流行の影響による各種イベントの延期や中止が相次いでいます。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、世界最大の通信関連イベントが中止に追い込まれた経緯を紹介。さらにスマホの生産拠点であり一大マーケットでもある中国で新型肺炎が猛威を振るう現在の状況は、IT業界に大きなメージを与えることになるとの見方を示しています。

MWCが新型肺炎の影響でついに「中止」を決定――果たして、3月のアップル発表会は開催されるのか

毎年、スペイン・バルセロナで開催される世界最大の通信関連イベント「MWC」が中止になってしまった。

LGエレクトロニクスが早々に参加の辞退を発表したのが2月5日。その後、エリクソン、週が明けて、日本企業からソニーやNTTドコモ、楽天モバイル、さらにノキアなどが相次いで、2月23日に主催者であるGSMAが開催中止を発表した。

確かに企業として、世界中から人が集まる大きなイベントに出張者を送り込むというのは無理があるだろう。

しかし、参加を辞退する企業が続出しても、GSMAは開催を強行するかと思っていた。なぜなら、MWCのチケットは一人あたり何十万円もするし、出展料も高額だ。GSMAにとってみれば莫大な収益源であり、開催すれば、収益は確保できる。参加者が勝手にキャンセルしようが、出展者が見送ろうが、勝手に欠席するのであれば、GSMAの懐は傷まない。

しかし、開催自体が中止となれば、チケット代は返金しなくてはいけないし、出展料収入も見込めなくなる。GSMAは意地でも開催するかと思ったら、結局、中止に追い込まれてしまった。

MWCが中止になったことで、MWCには直接、参加しない企業のプライベートイベントもキャンセルとなった。また、様々な企業を集めて、製品をメディアにアピールするイベントも流れてしまった。

2月15日午後現在、ファーウェイだけがプライベートイベントの開催をキャンセルしていない状態だ(メディア関係者に「MWCが中止になってもバルセロナには来るか」のアンケートは取られている)。

今回の新型肺炎騒動は世界的に経済に大きなダメージを与えることだろう。もちろん、IT業界にとっても深刻だ。日本のメーカーも、製造拠点が中国にあるため、様々な調整に忙殺されている。また、新製品を発表したサムスン電子も、スマホの製造拠点はすでにベトナムがメインだが「部材の多くを中国に頼っており、厳しい状態にある」(サムスン電子関係者)という。

イベントという観点で見ると、次に動向が注目されるのがアップルだ。アップルは例年、3月に新製品発表会を開催している。ただ、今年は2月に中国で新型肺炎騒動が起きたため、新製品がまともに作れていない可能性が極めて高い。

また、アップルは現在、中国市場を重要なマーケットと位置づけているが、新製品発表会を開催しても、肝心の中国メディアを招待できないという憂き目にあう。そうなると、3月に発表会を開催するのか、というか開催できないと思われる。

今年、MWC前後に5Gスマホが発表、発売され、さらにアップルも3月に新製品、9月には5GiPhoneが発売されると思われるが、中国の今の状態を鑑みると、5Gスマホが安定して供給されるかも危うい。

今年、5Gスマホが盛り上がりを見せるかと思ったが、中国の状況により、業界全体で大きなダメージを負うことになりそうだ。

楽天モバイルの料金プランは「3月3日」に発表――高額ローミング料金を回避するには「Google Fi」を見習え

2月13日に行われた楽天の決算会見で三木谷浩史社長が楽天モバイルの料金プランについて言及した(Galaxy S20発表会取材の帰国日だったため、取材にはいけず。以下、メディア報道から引用)。

料金プランの発表は3月3日に行われる。気になる中身については「日本の携帯電話料金が高いとともに、データの使用量も先進国のなかでは少ない。とにかくわかりやすい料金設定にしたい」(三木谷社長)という。

先日、楽天モバイルショップの恵比寿店がオープンした際には、無料サポータープログラムユーザーの平均が月に15GBだったと発表があった。当然のことながら、料金プランは15GBを超えた設定値になるのではないか。

2月から2次募集の無料サポータープログラムで利用しているが「My 楽天モバイル」のサイトを見ると「100GB無料プラン」という設定表記になっている。しかも、海外で利用するローミングも、この100GBから減っていく設計だ。シンプルでわかりやすく、しかも大容量で安いという三木谷社長の言葉から察するに「100GBでいくら」という料金プランだけで攻めてくる可能性もありそうだ。3,000円ぐらいで100GBが使えるとなれば、かなりのインパクトがあるのではないか。

ただ、ローミングパートナーであるKDDIの高橋誠社長が「大容量プランをメインにしてauのローミングエリアに入ると非常に高額な……いや高額なって言うと違うな。データ量に応じたローミング料が発生するため、大容量プランには来ないかなと内心思っている」と語っているだけに100GBというのは現実的ではない。もしauエリアで100GBを使われれば、楽天はKDDIに対して1GB500円、計5万円のローミング料を支払わなくてはならない。

楽天は、なぜこんな高額な条件を飲んでしまったのか。もうちょっと交渉の余地はなかったのか。楽天はKDDIだけと契約するからいけないのだ。

例えばグーグルのMVNOサービス「Google Fi」のように、アメリカ国内ではT-MobileとSprint、U.S. Cellularの3つのネットワークにローミングするという方法もありだったのではないか。仮に楽天モバイルのエリアでないところではKDDIもしくはNTTドコモのどちらかにローミングするという方法であれば、KDDIも1GB500円なんて条件にはしてこなかっただろう。

総務省は楽天モバイルを本気で第4のキャリアとして育てたいのならば、NTTドコモとKDDI、さらにはソフトバンクにもローミングさせるような条件をいまからでもつくるべきだ。そうすれば、楽天モバイルは「どこよりもつながる最強のキャリア」になるし、高額なローミング料金からも開放され、安価な料金プランを設定できるはずだ。

総務省は楽天に電波を割り当てただけで仕事を終えた気になっていては困る。楽天モバイルの事業を継続できるよう、いますぐにでもローミング対策を打つべきだ。

image by: Rajaraman Photography / Shutterstock.com

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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