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なぜインフルエンザの薬を新型コロナウイルスにも使えないのか?

世界中に拡大を見せる、新型コロナウイルスの感染問題。呼吸器系の感染症で、発熱やせきの症状があり、重症化すると死に至るという認識の人が多いのではないでしょうか? もちろん、間違いではありませんが、そもそもきちんと理解できているという人はそう多くないかもしれません。そこで、無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』の著者で現役科学者のくられさんが徹底解説。まずは「病原体」とはなにか、ということについて詳しく説明しています。

コロナウイルスが話題の今、「病原体」とは何かを再確認しよう!

新型コロナウイルス、WHOがその病名をCOVID-19と名付け、話題になっていますが、今一度改めて「病原体」というものの知識を整理しておきましょう。

病原体というのは、病気を引き起こす原因です。当たり前ですが、まずはそこからが大事で、ウイルスや細菌、寄生虫にいたるまで無症状ないし無自覚のものが多くあります。

生物は常に行き交うウイルスによって遺伝子の導入をされ、むしろ非病原性のものも多く、この世界に人間などの動物はもちろん虫や植物、細菌にいたるまであらゆるものに対応したウイルスが存在し、それらが複雑に関係し、遺伝子導入にかかわることで進化の動因となってるとも言われています。

細菌にしても、腸内細菌や皮膚の常在菌なんて細菌もむしろ居ないと困る菌ですし、皮膚にはニキビダニといわれる顕微鏡サイズの虫がほぼすべての人類に暮らしています。一見単体に見える生き物も実は多くの生き物、ウイルスの共生環境であったり媒質であったりするわけです。

「病原体」の種類と大きさ

話を病原体に戻すと、病原性の微生物と寄生虫に分けられます。

サナダムシ(条虫類)などのわかりやすい寄生虫にくらべて原虫類と細菌を混同する人、真菌ってなんなんって人もいるでしょう。そもそもウイルスを生物として考えていいの?という定義はとりあえず今回は議題ではないので置いておきます。

細菌は原核生物といって明確な核膜を持たない原始に近い生命です。一方で、真菌や原虫は核に核膜をもったもう少し進化した感じの生命で真核生物といいます。

真菌はカビや酵母などが所属する植物よりの雰囲気で、原虫は動物よりの雰囲気と普通の人は考えておいて十分です(この辺掘り下げるとあらゆる反証例外だらけなのであくまで雰囲気というのでご理解ください)。

人の細胞を10μmと考えると、細菌は1μm程度のサイズ(リケッチアなどめっちゃ小さいのもいる)、ウイルスは0.1μm程度なので、10分の1ごとに小さくなるみたいなイメージを持っていればOKです。

原虫は実はかなりザックリした分類なので細菌サイズのものから細胞サイズのものまでいろいろいるのでまちまちです。

こうした病原性微生物の違いを科学から縁遠い人も一応知って置いた方がよいのは、その治療薬が全然異なるというのを理解するためです。

病原体によって治療薬が異なってくる

細菌は非常に種類が多いですが、それらを包括的に倒すことができる抗生剤(抗菌剤、抗生物質など細かい分類はしない)が存在し、細菌を相手にする病気に対して人類の文明はかなり前進しました。

真菌は酵母やカビといった感じで有名なものは水虫の白癬菌などですが、体内で増える真菌もおり、そうした真菌の体の仕組みを逆手にとった抗真菌剤というものが存在します。なので、そういった水虫薬のおかげで足の平和も保たれているわけです。

抗真菌剤や抗生剤はざっくり広く効果を発揮するので狙い撃ちというものがあまり要りません。抗生剤、抗真菌剤は、ざっくり細菌、真菌が相手であればオールマイティにダメージを与えられる物理魔法的な感じです。

しかしウイルスはあまりに小さく、そして構造や増え方があまりに違いすぎるので、ウイルスをざっくり狙い撃ちして倒すという薬は存在しません。故に風邪には抗生剤を処方しないように…という話につながるわけです。

ウイルスと人類の戦い、そしてワクチン

ウイルスに対する薬は長年あまり無く、ワクチンで人類はヤバい病気に打ち勝ってきました。

そして近年、インフルエンザウイルスを標的としたオセルタミビルをはじめとして特定の病原性の高いウイルス狙い撃ちで薬が開発されるようになってきました。

これはウイルスの使っている特定のタンパク質を狙い撃ちしてウイルスの行動を邪魔するもので、反属性攻撃みたいなものです。炎タイプに氷をぶつけると「こうかは ばつぐんだ!」という感じです。

このように効果は高いのですが、属性攻撃と表現したのは、非常に狭い範囲でしか効果をもたないからでして、相手の属性を知らずに無闇にぶっ放しても良いわけではありません。「こうかが ない みたいだ……」になっちゃう。

よって、インフルエンザ用の薬が今回のコロナウイルスにも効くというわけではない点が大事。細菌よりもウイルスの同定検査は大事になってくることが多いわけです。

続きはこちら!コロナウイルスとは、反ワクチンとは…といった、この記事の続きはアリエナイ理科ポータルでご確認ください。

コロナウイルスが話題の今、「病原体」とは何かを再確認しよう!

また、コロナウイルス騒動を乗り切るための基礎知識の記事はこちらです。

【新型肺炎】新型コロナウイルス騒動を正しく乗り切るための基礎知識

image by: Robert Wei / Shutterstock.com

くられこの著者の記事一覧

シリーズ15万部以上の不謹慎理系書「アリエナイ理科ノ教科書」著者。別名義で「本当にコワい? 食べものの正体」「薬局で買うべき薬、買ってはいけない薬 」などを上梓。学術誌から成人誌面という極めて広い媒体で連載多数。

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【著者】 くられ 【発行周期】 週刊

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