MAG2 NEWS MENU

「桜」前夜祭の答弁に読売以外は引導「安倍首相もう詰んでいる」

「桜を見る会」前日に自身の後援会が主催した夕食会について、安倍首相の答弁と、会場となったANAインターコンチネンタルホテル東京(旧・東京全日空ホテル)側の説明に矛盾があることが明らかになり、各紙が大きく報じています。ジャーナリストの内田誠さんが、メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』で、各紙が伝えた内容を詳しく解説。なぜかホテル側への裏取りをしない(していても記事にしない)読売以外は、首相答弁の矛盾を厳しく追及しています。

「桜」前夜祭を巡る「首相の醜態」を各紙はどう報じたか?

ラインナップ

◆1面トップの見出しから……。

《朝日》…「桜」夕食会 深まる矛盾
《読売》…アップル 大統領と蜜月
《毎日》…「桜」前夜祭 答弁矛盾
《東京》…首相の虚偽答弁か ホテル例外措置か

◆解説面の見出しから……。

《朝日》…「桜」答弁 首相窮す
《読売》…高齢者施設 予防手探り
《毎日》…法曹離れ 歯止め図る
《東京》…新型肺炎 軽症が8割

【プロフィール】

「桜」前夜祭を巡り、「首相の醜態」を取り上げます。各紙とも次第に焦点が合ってきた、そんな感じです。一紙を除いて、ですが。

■信頼性揺らぐ首相の言葉■《朝日》
■まだ裏を取っていないの?■《読売》
■決定的なホテル側回答内容■《毎日》
■言い逃れはもう無理■《東京》

信頼性揺らぐ首相の言葉

【朝日】は、昨日、先陣を切る勢いで首相答弁の矛盾を報じたが、今朝はさらに力を集中し、1面トップと2面解説面の双方をこの問題に充て、全力で報じている。見出しから。

(1面)
「桜」夕食会 深まる矛盾
首相答弁の「営業の秘密」自民確認できず 首相事務所へ聞き取り

(2面)
「桜」答弁 首相窮す
野党「根拠覆った」
ホテル説明通りなら「違法」恐れ

昨日の国会内外での動きを通して、「首相の国会答弁の信頼性が18日、さらに揺らいだ」(リードより)とするのは、ホテル側から昨日聞き取ったとする答弁内容のうち、「個別の案件については営業の秘密にかかわるため、回答に含まれない」という部分が、野党議員は勿論、自民党議員らによるホテルからの聞き取りでも確認できなかったことを指している。「営業の秘密」云々は、「首相の作り話」である疑いがあるということになる。

2面。野党4党は、「ホテル側から首相が書面で回答を得ない限り、審議に応じないことを確認」。与党内からも不満や不安の声が上がっているとも。首相がホテルの見解を認めれば、夕食会の収支を政治資金収支報告書に記載しなかった法令違反を問われることになる。

uttiiの眼

内容的には既に「詰んでいる」。安倍氏の説明は非常識であり、明細書も渡さず、宛名のない領収書を交付するなどということを「一流」とされるホテルがやるはずがない。「個別の案件については申し上げない」という部分だけならホテル側の回答と一致する可能性もあるが、最も重要なのは「例外はない」ということだ。

「一般論」とは、例外もあるということを意味しているのではなく、すべてのケースに原則が貫かれているという意味。相手が首相の後援会であろうがなかろうが、ホテル側は常に一定の姿勢で対処するという意味だろう。だから「例外はない」。

まだ裏を取っていないの?

【読売】は4面政治面に記事。この問題を利用して野党を攻撃しようという意図が見える記事になっている。見出しを以下に。

(4面)
野党が審議一時拒否
「桜」前夜祭
首相説明の「矛盾」批判

見出しで目に付いたのは、上記3行目。「首相説明の「矛盾」」と、矛盾にわざわざ括弧を付けているところ。野党が「矛盾だ」と言い立てるので、括弧を付けて「野党が言うところの矛盾」という意味を添えたということだろう。《読売》は矛盾ではないと捉えている可能性がある。

記事内容の特徴は、昨日に続いて、またも「裏取り」をやっていないところだ。裏取り取材は行ったかもしれないが、その場合でも取材結果を記事に反映させていないことは確かだ。

uttiiの眼

ホテル側は、首相サイドからの電話による聞き取りに対してどう答えたのか、ホテル側に直接確認を取るくらいのことは、《読売》の記者だって当然やりたいと考えるだろうが、取材してはならないと上部からクギを刺されたか、取材したとしても記事に反映させられないのが分かっているので“自粛”したか。

少なくとも、他紙の取材に対してホテル側が「営業の秘密云々は答えていない」とか「例外はない」と答えていることについて、《読売》は今日に至っても全く伝えていない。

それにしても、首相の嘘が暴かれようとしているときに、それを「野党の審議拒否」が主題のニュースに読み替えるなどということは、《読売》にしかできない技だろう。御丁寧に、野党席が空席になった衆院第1委員会室の写真まで添えられている。

決定的なホテル側回答内容

【毎日】は1面トップと5面6面の関連記事。5面には社説も。見出しから。

(1面)
「桜」前夜祭 答弁矛盾
首相「個別案件は営業の秘密」
ホテル「伝えた事実ない」
国会紛糾 野党反発

(5面)
ANAホテル「もう使わず」
自民議員恨み節
首相答弁に食い違い
このままでは信用できぬ(社説)

(6面)
桜名簿白塗り「脱法」
政府「新たな文書作成」に専門家
「作成過程明記 職員の義務」

記事の特徴は、首相側とホテル側の発言内容を比較する表の中に、「毎日新聞への回答」が2項目キチンと入っている点だ。1つは、明細書を出している点についてで、ホテル側が「例外はない」と明言したこと。2つ目は「野党には一般論として答えた」とともに、首相側に対して「営業の秘密に関わるため個別案件は回答に含まれない」と伝えた事実はないということだ。

uttiiの眼

毎日新聞への回答である上記2点は、「首相の嘘」を決定づけるポイント。《毎日》はこの2点を目立たせるよう、2点の背景だけを黄色で塗りつぶしている。うまい工夫だ。

5面の記事はベタ記事だが、自民党議員(名は伏せてある)が、ANAホテルの対応に不満を表明し、「もう使わない」と恨み節を吐いているとの記事。この手の記事は取材しなくても書けそうに見えてしまうので、議員の名はチャンと明かすべきだろう。

言い逃れはもう無理

【東京】は1面トップを解説記事「核心」の扱いにするという珍しい編集。関連で5面に社説。見出しから。

(1面)
首相の虚偽答弁か ホテル例外措置か
桜懇親会明細書巡る説明 真逆
「うそを延々と」野党 首相批判

(5面・社説)
首相懇親会疑惑
言い逃れはもう無理だ

見出しの「首相の虚偽答弁か」が伝えるべき最も重要な点に位置づけられている。記事の特徴としては、自民党内からも総理の説明が求められているとして、「多くの方に分かってもらえるよう、説明を尽くすことが基本」という、鈴木俊一総務会長の言葉を拾っている点。

5面社説。見出しに続いて、「会場となったホテルが、従来の首相答弁を否定する見解を野党に示した」として、「言い逃れはもう無理ではないか」と見出しの表現を重ねている。

社説の中では、「誰がどう聞いても、首相の説明には分がない」、「そもそも、最大800人もの宴会が参加者との個人契約で行われる訳がない」とし、「宴会の日時を予約し、料理や料金を確認する幹事が店との契約者になる」という民法専門家の解説を引き、したがってこれは政治資金規正法や公職選挙法違反に問われる事案になるとしている。

uttiiの眼

昨日は少し控えめな記事だったが、きょうは解き放たれたように生き生きとしている。文字通り、「言い逃れはもう無理だ」と安倍氏に引導を渡す記事及び社説になっている。

image by: Drop of Light / shutterstock

内田誠この著者の記事一覧

ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 uttiiの電子版ウォッチ DELUXE 』

【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け