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NHKの同時ネット配信で日本製スマホの「ガラパゴス仕様」も終焉か

ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、NHKが始める同時ネット配信サービス「NHK+」をひと足先に体験。「需要がありそう」と、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』でレポートしています。石川さんは、民放も同時配信を進めることになり、ワンセグやフルセグ搭載という日本のスマホの「ガラパゴス仕様」も終わりを迎えるのではないかと予想します。また、今回のメルマガ後半では、需要に疑問符も付く、シャープの8Kカメラ搭載スマホを紹介しています。

同時ネット配信サービス「NHK+」は日本の「ガラパゴス仕様」にとどめを刺す

NHKは3月1日より、総合とEテレの同時ネット配信サービス「NHK+」を開始する。2月20日、メディア向けに「体験取材会」が開催されたので行ってきた。

サービスはスマホとタブレット、PC向けに配信される。スマホとタブレット向けには専用アプリ、PC向けはブラウザでの視聴となる。NHKとの視聴契約があれば無料で利用できる。視聴契約のある人に向けてIDが発行され、一つのIDで同時に5台のデバイスで視聴可能だ。

実際にアプリを体験してみたが、実によくできている。総合とEテレの同時配信だけでなく、1週間分の見逃し視聴が可能。また、番組にはタグ付けがされており、例えば「新型肺炎」といったタグで、ニュース番組やクローズアップ現代+などの特集番組をまとめてチェックすることもできる。

ニュース番組においては項目ごとにチャプターがつけられており、検索して自分の観たい項目だけをピックアップして視聴するといったこともできる。

3キャリアが5Gサービスをスタートする、このタイミングでサービスが開始されるというのがなんとも絶妙だ。NHKのニュースなどの番組がスマホで見放題となれば、かなり人気が出るのではないか。キャリアが「アンリミテッド」な料金プランを提供すれば、データ容量を意識することなく、NHKを視聴することができる。

通勤時間中にYouTubeをダラダラ観るよりも、ずっと需要があるように思う。個人的には、家族で外出しているときなど、子供にEテレの「おかあさんといっしょ」などの教育番組を見せることができそうで、かなり期待している。

ちなみに、視聴契約をしていなくても、アプリは利用可能で、同時配信も観ることができる。ただし、テレビと同じく、画面の隅に「契約してね」というメッセージが出続けることになる。ただし、災害時などはそうしたメッセージは消えて、テレビ放送と同様にひたすら被害状況などを伝える配信が流れるという。

この「NHK+」を使ってみると、NHKが本気でネット配信に取り組んでいるのがよくわかる。このアプリによって、特に大人がスマホでNHKを視聴するようになるだろうし、民放各局は相当、危機意識を持ったほうがいいように思う。現在、TVerを提供しているが、民放も見逃しだけでなく、同時配信にも取り組まなければいけないのではないか。

これまで「スマホでテレビを観るならワンセグもしくはフルセグ対応のスマホ」であったが、NHK+の登場により、ワンセグやフルセグに対応する必要はなくなってくるだろう。NHK+は、日本のスマホの「ガラパゴス仕様」にとどめを刺すことになりそうだ。

シャープが8Kカメラ搭載「AQUOS R5G」を発表――一般ユーザーに「8K」の魅力は浸透するのか

シャープが5G対応のスマホ「AQUOS R5G」を発表した。8Kのカメラを搭載したのが特徴だ。シャープでは8Kテレビに注力し、さらに8Kの業務用カメラ、映像を編集するためのDynaBookブランドのパソコンを開発するなど、撮影から編集、視聴まで一気通貫で8Kワールドを展開。スマホでも8Kを訴求したいのだろう。

ただ、8Kカメラは、先日、発表されたサムスン電子「Galaxy S20 Ultra」でも搭載されている。Snapdragon 865が8Kカメラに対応しているということもあり、ハイエンドモデルで採用されるケースが多いようだ。

一般的に「4Kでもオーバースペックなのに、スマホで8Kなんて必要あるのか」という声が多そうだ。確かに、テレビで4K対応は増えてきたものの、4Kのテレビ放送を視聴するのはハードルが高く、お茶の間に4Kが浸透しているとは言い難い。そんな状況であるにも関わらず、いきなり「スマホで8K」と言われてもピンとこないと思われる。

とはいえ、実際にAQUOS R5GやGalaxy S20 Ultraで8K撮影された映像を8Kのテレビで視聴すると、「これがスマホで撮影されたものなのか」と驚くほど、実に高精細だ。8K映像を見てしまうと、8Kテレビが欲しくなってくるほどだあと何年かかかるかわからないが、確実にテレビは4Kから8Kに移行するだろうし、人間の目も8Kに慣れていくことだろう。

ただ、実際に8Kで映像を撮影しようとすると、ファイルサイズが巨大になってしまい、あまり実用的ではなさそうだ。本体の熱処理などでもかなり負荷が高いと思われる。実際に購入したところで、8Kで撮影する機会は必ずしも多くないかも知れない。

とはいえ、デジカメでも同様であったが、カメラ性能をアピールする際、とにかく数字の大きさが物を言う傾向は強い。だからこそ「1億画素」という画素数アピールをするところもあるし、8Kというスペックも一般的には伝わりやすいのだろう。果たして、AQUOS R5Gの8K訴求がどこまで一般に浸透するのか。注目していきたい。

image by: beeboys / shuttersyock

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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