総会はどう乗り切れる?新型肺炎の感染に怯えるマンションの実態

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新型肺炎感染拡大の予防のため多くのイベント等が中止される中、一部のマンション管理組合では、この時期の総会を書面決議に変更する動きもみられるようですが、そこにはちょっとした誤解が生じているようです。マンション管理士の廣田信子さんは、今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』で、「書面決議」の意味を改めて確認すると共に、現状況下で実現可能な総会の進め方を記しています。

新型コロナウイルス対策で総会を書面決議に変える?

こんにちは!廣田信子です。

この時期、総会開催予定の管理組合は、新型コロナウイルス対策をどうするか悩んでいます。通常総会は、管理規約(標準管理規約準拠の場合)で新会計年度開始後2か月以内に開催しなければならないとなっていますので、総会を開かない訳にはいきませんが、この時期、人が集まって議論する総会は、万が一、新型コロナウイルスの感染拡大につながってしまったら、その場合、責任が取れるか…と、理事を悩ませていることと思います。

1か月先延ばしすれば、確実に開催できるのであれば、非常事態ですので、延期もありだと思いますが、この先、3か月ぐらいは状況がよくならないことも想定しなければなりませんので、総会ができないまま、期が進んでいくのでは新しい役員も決まらず様々な支障が生じます。

すでに議案書を配布済でこの週末が総会という場合は、できる対策と協力を呼びかけながら、総会を開催するしかないと思います。消毒薬とマスク入手に奔走し、ネットで高額で購入したという話も聞きました。

一方、「今回は、総会をしないで書面決議にします」と、簡単に口にされるケースにいくつか遭遇しました。「書面決議」が簡単ではないことを身に染みて知っている私としては、えっ、「書面決議」が本当に可能なの?と思って、具体的に聞くと、それは区分所有法が認めている「書面決議」ではないでしょうというものでした。

「書面決議」とは、区分所有法第45条に定められている、総会を開かないで、総会で決議したのと同様の効果がある決議方法です。

【第45条】(書面又は電磁的方法による決議)

 

この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない。

 

2 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があつたときは、書面又は電磁的方法による決議があつたものとみなす。

(以下略)

総会を開かず済ませるためには、代わりに、「書面」又は「電磁的方法」のいずれかで決議することになります。

「書面」というのは、その名の通り、各区分所有者から、紙に、決議事項について賛成か反対かを書いて提出してもらうものなので、議決権行使書のイメージです。「電磁的方法」は、ITを用いた方法で、下記法務省令で、認められる要件が細かく決められています。

建物の区分所有等に関する法律施行規則

メールで、賛成、反対を送ってもらえばいいというようなものでなく、電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第二条第一項の電子署名電子署名付きでプリントアウトできるものというかなり厳格なものです。

で、一番重要なことは、第45条の方法で決議するためは重大な条件があるのです。

1.書面又は電磁的方法で決議すること

(総会を開かないこと)について、全区分所有者が同意している。

又は、

2.決議する内容について、全区分所有者が賛成している。

のどちらかが必要なのです。もし、議案に反対の人が1人でもいたら、総会を開かず多数決で決めることに賛成しないでしょうし、そもそも、通常の総会で100%意思表示に参加してもらうことすら難しいのですから、実質的に「書面決議」は、本当に限られた場合にしか使われません。

一つは、新築マンションの分譲時に分譲業者が買主全員に規約案を提示して書面による合意を得て、規約を設定する場合です。もう一つは、10戸以下ぐらいの小規模マンションで、区分所有者が全員マンションに居住していて、理事長が全戸を説明して回ればわざわざ総会を開催しなくても全員の同意を得られるような場合です。

今回、耳にした話は、緊急時であるということで、理事会の判断で「今回は総会を開催しないで書面決議にします」と宣言し(全員の同意なしです)、議案書と議決権行使書を配布し、議決権行使書を期日までに提出してもらい、賛成の数が、決議要件を満たしていれば、反対の人、未提出の人がいても、決議できたとするというもので、改めて言うまでもなく、これは「書面決議」ではありません。

そうなんです。区分所有法45条の「書面決議」は簡単ではないのです。

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