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「このまま死ね」と言ったも同じ。国民「見殺し」の緊急事態宣言

各方面からの要求の高まりを受け、ようやく4月7日に発令された緊急事態宣言。しかしその強制力を伴わない内容に、疑問の声も上がっています。そんな中、現政権下ではこれが限界だろうとするのは、人気ブロガーのきっこさん。きっこさんは今回の『きっこのメルマガ』にその理由を記すとともに、「緊急事態宣言の問題点」の整理を試みています。

国民切り捨ての緊急事態宣言

4月7日(火)夕、安倍晋三首相は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための改正特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を発令しました。対象区域は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県、期間は、今日4月8日から5月6日までの1カ月です。

「緊急事態宣言」が発令されると、対象区域の知事は都府県民に対して「外出自粛」などの要請ができるようになります。しかし、これはあくまでも「要請」なので、欧米のようなロックダウン(都市封鎖)とは違います。対象区域の都府県民は、今まで通りに自由に外出できますし、外出したことで逮捕されたり罰金を払わせられたりすることはありません。本来の「感染拡大を防ぐための措置」という目的を考えれば、すべての人が不要不急の外出を控えて自宅から出ないようにすることが必須なのですから、あたしは、もっと強制力のある法律が必要だと思います。

しかし、これまでの数々の安倍首相の犯罪疑惑は、すべて自分の権力を悪用して行なって来た「政治の私物化」によるものです。自分の疑惑の証拠隠滅のためには人の命など何とも思わないような人物に、「さらなる権力」を与えることは極めて危険なのです。ですから、あたしは、今回の「緊急事態宣言」を「生ぬるい」と思う一方で、「今の安倍政権下ではこれが限界だろう」とも思っています。

強制力のない今回の「緊急事態宣言」ですが、これまで何も気にせずに生活していた人たちの何割かは、少しは不要不急の外出を控えるようになると思いますので、一定の効果はあると思います。でも、強制力のない宣言ですから、出社せずに自宅のPCなどで仕事ができるリモートワークを導入している一部の企業を除き、大多数の職種の人は職場へ行かなければ仕事ができません。

人間は働いて収入を得なければ生活できませんので、1カ月もの「外出自粛」を要請するのであれば、まずは全員に一律30万円とか50万円とかの現金を支給して、それから「外出自粛」を要請しなければ意味がありません。いくら感染リスクがあると言われても、生きて行くためには仕事に行かなければならないからです。

それでも、仕事がある人はまだ良いほうです。飲食店などで働いている人たちは、「緊急事態宣言」によって店自体が休業になるところも多いため、働くことができなくなるのです。また、休業しない店に関しても、「外出自粛」の要請によって売り上げは大幅に減少するでしょうから、パートや派遣は解雇されてしまう可能性が高くなります。

カラオケ店を経営しているあたしの友人は、すでに6人いたバイトを4人解雇しましたが、残った2人のバイト代も払えないと嘆いていました。あたし自身も、今月から本職のブライダルのヘアメイクに復帰する予定で、去年のうちから、4月に3本、5月に6本、6月に5本のお仕事を契約していたのですが、先月までに4月と5月のお仕事はすべてキャンセルになり、6月も保留になってしまいました。しかし、多くのフリーランスと同様に、国による補償はゼロです。

この2カ月で収入が激減して、すでに現時点でも生活に困窮している人がたくさんいるというのに、一律の現金支給もせずに「緊急事態宣言」を発令するということは、そうした人たちに「このまま死ね」と言ったのと同じことなのです。あまりにも遅すぎた上に、あまりにも無責任な今回の「緊急事態宣言」に、あたしは本当に唖然としてしまいました。しかし、今は「批判」より「感染拡大を防ぐこと」が最重要なので、今回は「問題点の整理」を行ないたいと思います。

今回の「緊急事態宣言」で、あたしが何よりも問題だと思ったのは、その対象区域です。安倍首相は「東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡」の7都府県を指定しましたが、これは一体、何を根拠に選定したのでしょうか?もちろん、この7都府県は多くの感染者が発生していますので、選定に異論はありません。しかし、福岡より遥かに多くの感染者が発生している愛知や北海道が、どうして除外されているのでしょうか?都道府県別の感染者数を見ると、1位が東京で、以下が、大阪、神奈川、千葉、愛知、北海道、兵庫、埼玉、福岡、京都、これがワースト10です。

また、本当の感染率を把握するのであれば、感染者の累積数ではなく「10万人当たりの感染者数」を比較しなくてはなりません。人口1,300万人の東京と人口100万人の県を感染者の累積数で比較すれば、東京が多くなるのは当たり前だからです。以下は、4月の頭の時点での「人口10万人当たりの感染者数」のワーストランキングです。

「感染者数」ではなく「感染率」では、驚くことに福井がワースト1位なのです。厚労省が検査の総数を発表しないため、福井が他県よりも積極的に検査を実施しているのか、それとも実際に「感染率」が高いのか、それは分かりません。本来であれば、47都道府県すべてでランダムに1,000人ずつ検査をして、そのうち何人が陽性だったのかを比較しないと事実は分かりません。しかし、今はこれしかデータがないので、このデータで考えると、安倍首相が指定した7都府県は、埼玉の他はすべてランクインしています。そして、神奈川は全国平均よりも低いですが、埼玉や神奈川は東京に隣接しているという意味から、今回の指定は適切だったと思います。

しかし、指定された福岡より「感染者数」も「感染率」も上位の愛知や北海道が指定されていないことが、あたしには理解できないのです。そして、「感染率」だけで言えば、全国ワースト1位の福井や、指定された兵庫と並ぶ高知や、指定された福岡と並ぶ石川や大分、これらが指定されていない理由も分かりません。

特に、北海道、愛知、京都が指定されなかったことについては、あたしだけでなく多くの人が疑問に思ったようで、安倍首相の宣言前の各党への説明の場でも野党から質問が出ました。これに対して西村康稔経済再生担当相は「感染者数が倍になるスピードと感染経路不明者の数から総合的に判断した」「愛知は感染者数は多いが倍増するスピードがゆったりしている。感染経路が分からない人も比較的低かった」と説明し、京都、北海道についても「同様の判断をした」と述べました。

しかし、東京オリンピックの延期が決まるまで、東京を筆頭に多くの自治体が検査に消極的だったのです。その上、厚労省は未だに検査の総数を隠蔽し続けているのですから、感染者数も増加のスピードもいくらでも調整できるのです。分かりやすい例としては、小池百合子都知事が東京オリンピックの延期を発表した翌日から、東京の1日の感染者数が突然、4倍になったことです。これは単に1日の検査数を4倍にしただけで、急に感染が広がったわけではありません。

こうした感染者数や感染率について、隠蔽体質の安倍政権の発表にどれほどの信憑性があるかは分かりません。でも、先ほどのランキングだけを見て言えば、今、自分の住んでいる地域が今回の「緊急事態宣言」に指定されなかったとしても、それだけで安心するのは時期尚早じゃないか?…とあたしは思いました。特に全国平均より上だった地域の人たちは、指定された地域と同じように、不要不急の外出は控えるべきだと思いました。

とにかく、2カ月も待たされて、ようやく発表された初めての具体策が「1住所に布マスク2枚」なのですから、普段はどんなに威勢の良いことを言っていても、これが安倍首相の能力の限界なのです。今回の「緊急事態宣言」で安倍首相が打ち出した数々の対策も、「大胆な」だの「過去に例のない」だのとお得意の大げさな表現が散りばめられていましたが、あたしたち庶民には手の届かないところに吊るされた札束ばかりでした。

「緊急事態宣言」当日の4月7日に文化放送『SAKIDORI!』に生出演した国際ジャーナリストの小西克哉さんは、安倍首相が新型コロナ対策として「事業規模108兆円」「財政支出39兆円」と強調したことについて、次のように述べました。

安倍さんは相変わらず大きい数字を並べるのが好きですが、経済対策としても国民への支援としても実効性のないものばかりですね。たとえば国民全員に一律10万円ずつ支給すれば12兆円、消費税を1年間ゼロにすれば20兆円、合計32兆円あればできます。このほうが遥かに安上がりで実効性があります。

あたしも本当にそう思いますし、この小西さんの意見に賛同する人は多いと思います。でも、生まれてから一度も「国民目線」に立ったことがない人物に「国民目線で実効性のある対策」など期待しても無駄だと分かりました。ここまで国民が苦しんでいても、安倍首相は何も感じないのですから、もはや自分の命は自分で守るしかありません。今は、1人1人が自分にできる「生きるための最善」を尽くし、これからの1カ月、どこかで潮目が変わるのを待ちながら、何とかがんばり抜きましょう!

image by: 首相官邸

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