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NY在住の日本人3人が見た、ロックダウンの街で起きていること

新型コロナウイルスの感染爆発により、3月22日に外出禁止令(ロックダウン)が発令されたニューヨーク。その影響は、多くの事業者に及んでいるようです。メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者で『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋克明さんも、「創業以来の大ピンチ」に直面。それでも、メディア発行者としての使命を果たすように、日本のニュースではなかなかわからない、ロックダウン下の街の様子を伝えてくれました。インターンとして働く2名の従業員によるレポートも加え、3人の目で見て感じたニューヨークの“今”です。

ロックダウンでバリカンの売上が急上昇

ご存知の通り、今、ニューヨークはコロナ“戦争”の真っ只中です。あえて戦争というワードを使っても、もはやどこからもクレームはないと思っています。ほとんどの店がクローズし、急用以外で出歩くことを禁止されている街は、人もまばら。この街に来て20年、かつてない光景です。

当然、我々、新聞業界もモロに打撃を受けます。無料形態のフリーペーパーなので、会社の売り上げのほとんどが広告費。会社が業務をストップする際、お店が営業を停止する際、当然、広告も引っ込めます。企業が経費節減をする際に真っ先に削るのが広告費です。すでに数社から、広告の一時停止の要望が入りました。今後、さらにキャンセルは増えてくると予想されます。

その中に、格安ヘアカット専門店QBハウスのニューヨーク支店長からも、広告キャンセルのお電話を頂きました。当然です。ヘアサロン他、スパ、マッサージなどのお客さまと接触するビューティ系はこの期間、営業停止を言い渡されています。お店が営業できないのに、宣伝はできない。終息次第、また再開するから、とお約束頂き、広告は一時ストップしました。

電話を切る際、社長は「ニューヨークは長髪だらけになると思うけど」と自虐交じりの冗談を言われていました。ニューヨークのQBハウスはビジネス的にも順調、いつも客が行列を作っていただけに、計算外の痛手です。

そう、この街は今、美容院で髪を切れない状態が続いています。なので、今、アマゾンでバリカンが飛ぶように売れているのだとか。自分で髪を切るために。電機メーカーも、バリカン部門だけは売り上げを上げている。

先のQBハウス社長に「でも、社長、終息したら、一斉にお客さんが駆け込みますね。そこで、(売り上げ)凹んだ分、取り返しちゃってください!」と深くも考えず、励ましの意味も込めて言いました。確かに、ロックダウンが開けた際には、美容院も忙しくなるとは思います。スパも、ネイルサロンも、マッサージも、空白期間があった分、客が押し寄せてくるでしょう。もし、このロックダウン期間が短期間であれば。

この外出禁止状態が長引くほど、みんな、それらのサービスに頼らず、なんとか自分で解決しようとします。街が動き出すのを待っていられない。先のバリカンの売上急上昇がいい例です。

ジム利用や観劇、当たり前だった習慣に変化

友人のジム経営者と電話で話しました。この期間は、もちろんジムは営業停止。売上はゼロ。ただ、みんな家で閉じこもっていた分、「ロックダウン明けには、新規も含め、入りきらないほどの人間が会員登録するんじゃない?」そう励ますと、「そう願いたいけど…、長引くと、人間さすがに我慢できずにジョギングだの、ウオーキングだのを始めちゃうと思うんだよね。(適度な運動の為の外出は禁止されていない)。なんなら近所の公園で簡単な筋トレやエクササイズをするよようになると思う。そこで気付いちゃうかもしれない…、プロのアスリートでもない限り、健康的に運動するのに、わざわざ月に100ドル払ってジムにまで行く必要がないことに…」と彼はつぶやきました。ジムの経営者が、絶対言っちゃいけないセリフだとは思いますが、ある意味、真理をついている。彼の心配もわからなくはない。

ロックダウンが長引けば長引くほど、揺り戻しの反動も逆に小さくなるのではないかと心配しています。もちろん、僕たちの広告業もそうです。出稿しなければしないで、どこまでの支障があるのだろう、と考える顧客も当然出てきます。

3度の飯よりミュージカル好きのうちの奥さまも、この2ヶ月間ブロードウェイで観劇していません。毎月2回は劇場まで足を運んでいた彼女は、当初、「早く、ブロードウェイ再開しないかなぁ」と口癖のように言っていました。ところが最近は、YouTubeにハマるなど、軟禁状態なりに楽しむ方法を見つける生活に変わってきています。

ブロードウェイが再開したら、さすがに、劇場に飛んでは行くにしても、「今までのように、新作が切られたら、なにがなんでも見に行く!って感じにならないかも」と言っていました。なければ、ないなりに、楽しい日々を送ることができる、と気付いたようです。これもロックダウンが長引いた結果による、産物かもしれません。

犠牲者が出ている今回のことで、不謹慎だと怒られることを、覚悟で言うならば、人間としては、ある意味、いろいろなモノを見つめ直すいい時間を与えられたのかもしれません。

ただ、経済は予想以上に落ち込んでいく気もします。株価がどう、とか、雇用率がどう、ということ以外に、今後、世界が「在宅で楽しめるエンターテイメント」中心の生活になっていき、外出先で享受するサービス、エンターテイメントがこのまま一気に激減する世の中になってしまうのではないかと、少し不安です。

それならそれでいじゃないか、と言われるかもしれません。なにが悪いんだ、と。いや、よくない!と言い切る根拠も、理由も確かにいまのところ、見当たりません。経済が心配なのと、ただ感情論として、少し寂しいなとは思います。

そんな中、IT関連と人材派遣業は、今、絶好調だと聞きます。これはニューヨークの日系に限ったことなので、他のエリアではわかりませんが、IT系は、テレワークが中心になった今、zoomやSkypeなどのリモートコミュニケーションのツールのニーズが急に高まった為と思われます。人材系も、この異常事態だからこそ、緊急の解雇、採用が相次いでいるのが要因だと思われます。

当然ですが、飲食を始め、サービス業はかつてないピンチを迎えています。旅行業の中には、一時的だとは思うのですが、全社員レイオフした会社もあるそうです。そして、うちのような零細新聞社も、当然、創業以来の大ピンチです。売上がゼロになったとしても、解雇しない限り、社員の給与は払い続けなければなりません。もう、笑うしかない。笑ってる場合ではないんだけれど。

ある意味、もっとかわいそうなのは、今、うちで働いている短期間のインターン社員たちです。彼らは、日本から期間限定でニューヨークに来ています。中には僕の日本での講演会に来てくれ、感化され、そのまま渡米した人間もいます。華やかなニューヨークの、華やかなマスコミ業に憧れて。有限の期間の中、いる間は目一杯、ニューヨークでのメディア業を堪能したかったはずです。

今回、ふたりの弊社、女性インターン社員に、このメルマガの為だけに、コラムを書いてもらいました。在米20年の経営者である僕ではなく、日本から来たばかりで、いい意味で、まだこの街に馴染めていない、自由のきかない一社員。そんな彼女たちに、今のニューヨークのコロナパニッックの現状をレポートしてもらうのは、非常に意味があると思ったからです。

ひとりは30代前半。日本で編集の職歴を経て、ニューヨークでファッションマスコミを勉強するために彼女は来ました。1年6ヶ月の契約で、今、1年経ちました。このまま契約期間を過ぎても、なんとかニューヨークに残りたい!と思うほど、憧れのニューヨークライフを堪能している真っ只中、でした。

ひとりは20代半ば。シアトルで大学を出てOPT(オプショナル・プラクティカル・トレーニング)を取得してきました。西海岸のシアトルからひとりで車を運転し、1週間かけて大陸を横断してニューヨークに引っ越してきたガッツのある女性です。たまの休日も朝からひとりでマンハッタンを歩き回るほど、彼女もこの街が気に入っていました。

「ロックダウン中のニューヨークの今。」

文・中澤絵里奈

今ニューヨークは、コロナウィルスによる感染拡大防止のために街がロックダウンされ、不要な外出も禁止されているような緊急事態です。正直、中国や日本で感染拡大がニュースになっていた頃は、まるで他人事のように遠い場所での出来事のように感じられたので、まさかその1ヶ月後、10,000km以上も離れたニューヨークでこのような事態になるなんて全く想像もしていませんでした。

ニュースなどで「みるみるうちにニューヨークでも感染者が増え始めているな~」と危惧していたら、3月16日から学校閉鎖、飲食店閉鎖、リモートワーク義務付け、外出禁止令が次々と発令され、あっという間に私たち「ニューヨークBiz」の社員、インターン生たちも在宅勤務をせざるを得ない状況に。

しかも、このニューヨーク州や市による措置決定から実施までのスピードが驚くほど速く、「明日から学校閉鎖!」「明後日から出勤禁止!」という感じで、「そんなにいきなり言われてみんな対応できるの?」と個人的には半ば半信半疑だったのですが、翌日街に出たら本当に人が閑散としていて…。ある意味ニューヨーカーのフレキシブルさに感心してしまいました。

日本はなにかと、決定から実施までに段階を踏んで慎重に時間をかけていくカルチャーだったりするので、こういった一刻を争う非常事態にはアメリカらしいスピーディーな決断力や実行力、リーダーシップが本当に頼りになるなあというのが今回感じた点でもあります。

これは在宅勤務が発令される少し前、いつもより1時間遅い出社時に乗った地下鉄のLライン。

平日の午前9時半の通勤時間帯なのに、電車に乗り込むとまさかの車両に自分一人だけ…。普段のラッシュ時は人が乗りきれないほど満員になるLラインですが、ニューヨークの多くの企業は在宅勤務令が出る前から早々にリモートワークに切り替えていたようです。

毎日多くの人々が行き交うニューヨークの主要駅、グランド・セントラル・ターミナルも人がまばら…。

今、ニューヨークでは人との間隔は6フィート(1.8m)以上と定められていて、人と気軽に近づくこともできません。ここまで物理的に人と近づくことを禁止されたのは生まれて初めての経験で(もちろん誰にとっても)、友人と一緒にご飯を食べたり、どこかに出掛けたり、仕事の打ち合わせをしたり、そういった人との交流、日常をことごとく奪ってしまう目に見えないウイルスというのは、本当に恐ろしいなと感じています。

飲食店もイートインができないので、大好きな近所のカフェで一人でまったり過ごすこともできません。友人たちとのホームパーティーや、イベントの予定もすべてキャンセル。生活は一変してしまいました。また、レストラン以外にも美容院やネイルサロン、ギャラリーなどの営業も停止になっているので、美容師の友人やアーティストの友人も不安な日々を過ごしているようです。

ニューヨークの街にはほとんど人が歩いておらずゴーストタウン化しています。たまに食料の買い出しのために外に出るとちらほら人を見かけますが、あの“マスクをしない”ニューヨーカーが、当たり前のようにマスクにビニール手袋姿で足早に歩いています。スーパーの店員も、このように日本では見たこともないような本格的なマスクをしながらレジ打ち。ある意味、対策が必要だと判断すれば日本人より徹底しているかも。

でもこんな時でも、お会計が終わると帰り際に「Stay safe!」(安全に!)なんて声をかけてくれたりと、明るくて人を思いやる余裕のあるニューヨーカーの優しさに触れ、心が温まります。

ニューヨークのロックダウンはまだまだ始まったばかりで、少なくとも1ヶ月はこの状態が続きそうですが、今は多くの人が自分たちがするべき行動を理解していて、コロナ終息のために「我慢」という努力のもと、心を一つにしているような気がします。この非常事態を早く乗り越えられることを信じて、私も不安に飲まれず日々をポジティブに過ごすようにしています。

こうして毎日強制的に家にいなければならないわけですが、普段なかなかできない凝った料理を作ったり、読めていなかった本の続きを読んだり、英語の勉強をしたり、家での時間を意外と有効活用できており、普段の働き方や生活を見つめ直す良い機会なのかもな、とも思ったりもします。

また、メディアとして情報を発信できる仕事に携わっているからこそ、こんな今だからこそ、みなさんにとって有益な情報をたくさん発信できればと思っています!少しでも早く、大好きなニューヨークが活気ある街に元通りになりますように。

そしてニューヨークはもちろん、被害が甚大なヨーロッパやアジアの世界各国でもこの事態が収拾し、平和な生活をみんなが取り戻せることを心から祈っています。

「新型コロナウイルスに対するニューヨークと日本の温度差。アメリカにいて感じた事」

文・田部井愛理

こんにちは。『NEW YORK ビズ!』編集部の田部井です。ニューヨーク市に住み始めて半年以上が経った頃、現地時間の3月22日の午後8時からニューヨーク州では新型コロナウイルスの拡大防止のため、外出禁止令(ロックダウン)が発表されました。

アメリカ在住歴5年にして、世の中が一気にガラッと変わる出来事が起き、その瞬間に居合わせるのは初めての体験です。アメリカ同時多発テロ事件の際は日本から、東日本大震災はニュージーランドからテレビで見て知りました。今回、街の様子が変わっていく瞬間に身を置いて感じたことを書いていこうと思います。

まず、今年の1月末に新型コロナウイルスが流行り始め、ニュースやSNSでは部屋で祝日を過ごす中国の人々や、武漢の様子などが頻繁に流れていました。最初は、大陸向こうの話であるし、海をまたいできたとしてもそこまで流行らないだろう、と心の中では思っていました。しかし、次第にWHOによる緊急事態宣言に始まり、イタリアが非常事態宣言を発表するなど、ものすごいスピードで世界的に広まっていきました。

他国ではすでに猛威を振るっていた新型コロナウイルスがニューヨークにやってきたのは、3月1日。当初は、1日に数人の感染者がニュースになっていたのが、今では感染者と死者がどれくらい出ているか、感染が確認された数が中国より上回ったなどの報道が渦巻いています。日本にいる方々は、ニューヨークで急激に感染が増えて、人も多いし大丈夫?とご心配してくださる方や不安に思われるかと思います。

確かに、私自身、日に日に新型コロナウイルスを身近に感じ、日常がこのウイルスによって急激に変化することに戸惑いを強く感じていました。ですがそれと同時に、市や政府、周りの人々の対応の早さにも驚きました。新型コロナウイルスの検査の無償化や、原則全ての企業に対する全従業員の在宅勤務化、休校措置、飲食店や小売店の店舗休業や連邦政府による現金給付。

これ以上感染者を増やさないため、被害を最小限に抑えるために、政府、医療機関、企業、民間人、全ての人が力を合わせて協力しています。スーパーでは混まないように入場制限を設けたり、レジに並ぶ際は約1.8メートルの社会的距離の確保(sociel deistance)を保ったり、消毒が街単位で常にされていたり、マスクと手袋着用、不要な外出を避けるように「Stay Home」を掲げてSNSで呼びかける人々やセレブの投稿など。新型コロナウイルスで世の中が混乱している中、ニューヨークでは一人一人が意識して行動している光景に何度も出くわしました。

数字上では、圧倒的にアメリカ、特にニューヨークが群を抜いて感染被害が多く心配だとは思います。確かに、ニューヨークの街の雰囲気は一気に変わりました。レストランもカフェもどこもかしこも休業です。ですが、必要な物資は買えています。デリバリーもできます。外出禁止だからといって、全体がパニックになっているわけではありません。

制限の中で、みんな、必死に生活しています。物資などを提供するボランティアの方々や、身を危険にさらして治療に全力を注ぐ医療関係者。たくさんの人が最善を尽くして協力し合う姿をメディアを通して、また、実際にこの目で見てきました。そんな方々がいるから、こんな時だからこそ自分に何が出来るのかを強く意識できるようになりました。

そんな中、日本にいる人のSNS投稿を見ていると、お花見や旅行、飲み会やら、人混みが多いところへ行き、普段と変わらない行動をしていて驚いてしまうのが本音です。

これは決して、「私たちがこんなに不自由な目にあっているのに、なんで日本のみんなは楽しそうに遊んでるの?!」という僻み妬みではありません。私自身、家に引きこもる生活を苦に感じないため、外で遊べないからイライラするという思いにはなりません。数年前だと「私も外出したい!」と思っていたかもしれませんが(笑)。

もちろん、彼らの中には自宅待機を呼びかける人たちもいます。それでも外に出て大人数の集まるところに行ってしまう人たちにとっては、「大げさだな」とか「別に自分は感染しないから大丈夫」と思っているのではないでしょうか。

「ウイルス」という目に見えないものを、自分ゴトにするのは難しいことかもしれません。ですが、自分が感染したことを想定してみてください。まず、同居している人に感染する恐れ、それに伴う大きな代償が生じます。自分の大切な人を日々不安に追いやってしまうのです。そして、自分が通っている学校や職場が閉鎖されてしまいます。そして、自分自身が病に苦しむだけでなく、不安と恐怖に直面することになるのです。

世界各国で、感染者が自ら動画を上げ、現状や呼びかけなどを訴えているものがSNSでシェアされています。呼吸器をつけ、みな口々に、「自分は大丈夫」と心のどこかに思っていた、と言っています。彼らの勇気あるメッセージを受け、自分は何ができるのか、ここから何を学ぶかが大切な事ではないでしょうか。

アメリカも日本もこれからなのです。中国では収束してきたとの報道がありますが、新型コロナウイルスは世界的に広まっています。どうか不安を煽った情報に翻弄される事なく、冷静に現実を受け止め、自分には何ができるかを今一度考えてみてください。今だからこそできることや新しい発見の探求、そしてお互いが思いやる心をもっていれば乗り越えることができると信じています。

image by: shutterstock

高橋克明この著者の記事一覧

全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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