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品揃えの問題ではない。伊勢丹の靴売り場に学ぶ付加価値の上げ方

伊勢丹は、既に婦人靴売り場で導入されていた「3D計測器」をこの春から紳士靴売り場でも導入しています。靴専門の販売サイト「ZOZOSHOES(ゾゾシューズ)」も3D計測を導入しており、靴販売の一つの流れとなっています。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんは、ここに付加価値の付け方のヒントがあると解説。新商品や品揃えや価格の安さではない顧客価値の上げ方を伝えています。

靴売り場で靴を売ってはいけない!伊勢丹に学ぶ商品の付加価値の付け方

マーケティング・テクニック~売上ジリ貧からの抜け出し方

「ここのところ、売り上げがジリ貧なんですよね」この悩みは、どこの職場からも聞こえてきます。そこで「差別化せよ!」と社長から号令がかかるのですが、「何を、どうすればいいのかわからない」というのが、あなたの本音でしょう。そもそも、なぜ「売り上げがジリ貧」になるでしょうか?

ここで、このメルマガを読むのを1分間やめて、ちょっと考えてみてください。

思いついきましたか?多くの人は「ほかより価格が高いから」とか、「商品に目新しさがないから」と答えます。それは、半分正解、半分不正解です。

売り上げが下がってくる理由は、「お客様からみて価値が下がったから」買ってもらえなくなったからです。他社より安くしても、他がさらに安くしてきたら、次はそちらで買われてしまいますし、目新しさだけでは、すぐに飽きられてしまいます。これは、BtoCでもBtoBでも同じことです。

まずしなければならないのは、お客さまから見た時に、ライバルよりも、「価値がある」と認識されるようにすることです。いわゆる“付加価値”ですね。値引きや接待といった、特別な価格または特別な人間関係以外で、付加価値をつけていくことが大事です。

ではどうやって、付加価値をつければいいのでしょうか?お客様が感じる価値とは、あなたの売るものやサービスから、得る“便益”と、失う“損失”のギャップです。

ラーメン店でいえば、美味しい、ここにしかない、という“いい点が便益”、出てくるのに時間がかかる、いつも満席だ、という、“よくない点が損失”です。この便益を上げれば上げるほど、価値は高まりますし、同時に「損失」を減らせば減らすほど、価値は高まります。

多くの人は、便益を上げることばかり考えます。これは大事なコトですが、お客様が感じる損失を減らしても、顧客からみた価値は“上がる”のです。損失を減らすことを忘れがちなのです。

なので、知らず知らずのうちにお客様が感じている、「損失」をいち早く見つけ出し、取り除いてあげるコトが大事なのです。

今日のマーケティング・テクニック

「お客様が感じる“損失を見つけ取り除く”ことで、付加価値をあげる」
では、この損失の取り除き方について、伊勢丹の靴売り場の事例で、ひもときながら、考えていきましょう。

靴はやっぱりリアル店舗で買わないと!足のサイズに合わないよね

ここのところ、ファッション業界で、3D(3次元)技術を活用した、「足の計測サービス」が広がっているとのこと。ネット通販のZOZOは自社で開発したマットで計測し、靴を購入できるサービスを開始しました。ZOZOのサイトに行くと、「ZOZOマット」というマットを申し込めます。こちらは無料。マットだけに、タレントのマットさんが、イメージキャラクターとして出ていました。

ZOZOスーツの販売で計測用ウエアを配っていた時と、同じ考え方です。今回は、そのウエアが計測用の“マット”になり、足をそのマットの上に置いて、スマホを使い、サイズを計測できるようにしたのです。

ZOZOのサイトには、「靴選びにおいては、着用サイズの「大きい/小さい」や、甲高・幅広・外反母趾などの、人それぞれの足の形状によって、快適な履き心地が異なるため、ECで購入する際の「サイズ選びの不安」や、「試着の必要性」などの課題が衣服に比べ多くあります」と書かれています。

確かに、リアル店舗で既成の靴を買っても、試しばきをして、「ぴったりだ」と思って買っても、実際に履き始めると、甲が当たって痛かったり、幅が広すぎてスカスカだったりと、面倒なことは多いですよね。ビジネス用の革靴だとなおさらです。

私はこの前、ふるさと納税の返礼品で、初めて靴をオーダーメードしました。オーダーメードだと、足のサイズだけではなく、足幅の広さや甲の高さなど、かなり細かく聞いてくれます。そして、実際に出来上がった靴を履いてみても、かなりぴったりとフィットするのです。

しかし、靴をネットで買う場合は、「試しに履いてみる」ということができないので、「買ったはいいが、履いてみたらフィットしなかった」ということになりがちです。なので、これまでは、「服はネットで買うけれど、靴はちょっとな」という人も多かったはずです。

この、「サイズが合わないかもしれない」という不安が、前半で述べた「お客様が失う損失」です。ZOZOではそのようなお客様の心理的な損失、すなわち、「困りそうなこと」を解消しようとしているのです。

伊勢丹が靴売り場で売っているコト

この動きに目をつけたのが、三越伊勢丹ホールディングスです。紳士靴向けの計測器を伊勢丹本店に入れたとのこと。15秒ほどで計測できるらしく、その後に、顧客の足に合う商品を推奨するそうです。

この背景には、スーツをぴったり着るというような人が減り、また、カジュアルな服装で通勤する人たちが増えていることから、革靴の需要が減っていることがあります。確かに、ベンチャー企業やIT関連の人たちでいえば、Tシャツにジーンズというスタイルが一般的ですよね。

反面、オーダースーツも比較的安価に作れるようになったり、以前このメルマガでも紹介した鎌倉シャツの、オンラインでのオーダーもできるようになってきたりと、ビジネスファッションにこだわりを持つ人たちが、増えていることも事実です。このような、伸びている市場を狙っての、伊勢丹の靴のサイズオーダーです。

デパートの靴売り場では、どこでもほぼ同じような品揃えになってしまいます。立地条件や、ポイントシステムも大事ですが、このようにフィットする靴を選べる、という「お客様の損失回避」があると、ちょっといい靴は伊勢丹で買おうかな、という心理が働きますよね。

マーケティングでやるべきは、大きいか伸びている美味しい市場を見つけて素早く参入すること。そして、お客様の悩みや課題を解決してあげることです。今回の伊勢丹は、ZOZOのテクノロジーを見て、さらにこの2点に目をつけた施策をとっている、というわけです。

image by: picture cells / shutterstock

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ビジネス・仕事に大事なのは、情報のキモに「気づき」どう仕事に「活かす」かです。トレンドやヒット商品には共通する「仕掛け」と「思考の枠組み」があります。このメルマガでは、AI、5G、シェアリングなどのニュースや事例をもとに、私の経験とMBAのフレームワークを使い「情報の何に気づくべきか?」という勘どころを解説していきます。現状を打破したい企画マン・営業マン、経営者の方が、カタくなっている頭をほぐし情報を気づきに変えるトレーニングに使える内容です。

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