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失業申告2000万人以上の米国で「銃」と「ひよこ」が売れる理由

新型コロナウイルスの感染爆発がもっとも深刻なアメリカでは、失業申告をした人だけで2000万人を超えたそうです。そして銃とひよこが売れているなど、アメリカ国内で起きていることを報告してくれたのは、メルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の著者で米国在住の医学博士・しんコロさんです。しんコロさんは、危機に際し、保守派とリベラル派で二分する反応それぞれに危うさを感じているようで、リベラル派に近い反応を示す日本人に向けても警鐘を鳴らしています。

アメリカの飲食店事情

ボストンではすでに倒産・休業している業種も多い中、レストランやバーなどは数週間前から半クローズしています。半クローズというのは、店内での飲食はやっていないけれども、持ち帰りだけ可能だからです。日本と違って、アメリカではほとんどのレストランで「テイクアウト」が可能です。よほどの高級店はさすがにテイクアウトは一般的ではありませんが、多くの店が持ち帰りには対応してくれます。

そもそも、食べきれずに余ったものを持ち帰るという文化があるので、テイクアウトにも簡単に対応できるのだと思います。しかしこのテイクアウト文化のおかげで、この状況にもかかわらず飲食店はまだ生き延びる術が存在するわけです。店内飲食しかやっていない店だったら、外出禁止令によって閉店せざるを得ない状況になっていたことでしょう。日本は店内飲食が一般的な店が多いし、ファストフードでもない限りはテイクアウトはあまり一般的ではないので、休業要請が大打撃になっているのは間違いありません。

日本のニュースを見ていると、「シャットダウンはしないけど休業要請」という中途半端な政府の決断に、賛否両論飛び交っています。多くの業界から「休業要請するなら政府が補償しろ」という悲鳴が上がっています。「倒産したらどうするんだ!」「失業したらどうするんだ!」という声があちこちから聞こえてきます。一方で、アメリカは容赦なくシャットダウンしました。失業したらどうするんだ!なんて悠長なことも言っている暇もなく、一気にシャットダウンです。結果、すでに2000万人以上が失業申告をしました。

そもそも失業保険などがない人、正社員でない人、パートタイムの人などを含めたら、実際に失業している人は2000万人どころではないと思います。この状況がまだしばらく続くことになるだろうことを想像すると、アメリカ経済への打撃は本当に深刻なものになります。もちろん経済よりも人命が第一ですから、まずは感染を防ぐことが最優先です。しかしそうすることで経済が稼働できないという状況になり、八方塞がりな状況です。

治安が悪くなるかも

日本と違って、アメリカは失業者が増えたら犯罪や暴動が発生して、治安が悪くなるというシナリオが濃いです。最近は銃が飛ぶように売れているそうです。そして一方で、ひよこも飛ぶように売れているのだそうです…。銃とひよこ、怖いんだか可愛いんだかわけわからんですが、にわとりを育てて卵を産ませようということなんでしょう。スーパーでの食材のパニック買いが起きる一方で、ひよこのパニック買いも起きているわけです。可愛く聞こえますが、ひよこを買い求める人たちはもちろん真剣です。

いざという時に、自給自足をしようという考えなわけですから。確かに、本当に極限の状況を仮定したら、にわとりを飼っているのは強いでしょう。そんな中、きっとひよこ泥棒も発生するでしょう。そして夜中に鶏小屋に忍び込んだら、容赦なく銃で撃たれるでしょう。映画のような世界です。

ちなみに、これは会社の同僚に聞いた話ですが、お隣のニューハンプシャー州では他人が自分の敷地に入ってきたら侵入者とみなして銃で撃っても良いのだとか…。なんちゅう乱暴な!一方で、マサチューセッツ州は侵入した家の庭のプールで溺れたら、家主を訴えても良いのだとか!なんちゅう理不尽な!アメリカは特に保守派の人たちは「自分の身は自分で守る」という文化があり、そのために銃やひよこを買いに走るのかもしれません。

一方でリベラルな人たちは、銃やひよこには走りませんが、「政府がなんとかすべき」という考えが強い印象です。僕は保守派にもリベラル派にも驚かされることが多いので、どちらの肩を持つ気もありませんが、こういった危機がやってくると双方のコントラストがハッキリします。

僕は「フリーシンカー(自由に考える姿勢をもつ人種)」です。アメリカの保守とリベラルのコントラストを見ていると、どちらも非常に極端で洗脳されていると感じざるを得ません。人というのは、自分が欲する情報だけを求める傾向があります。生まれ育った環境が保守派ならば、そういったメディアの情報を求めるし、逆にリベラルならばメインストリームのメディアから情報を得ます。

そして、何か危機が起きた時には人は「ブレイム(責める)対象」を欲します。僕の身の回りのアメリカ人も「あいつのせいだ」「こいつのせいだ」とギャーギャー騒いでいます。差別が多いのはトランプのせい、株価が落ちたのはコロナのせい、失業したのはアジア人のせい、などなど。「~のせい」と決めてかかるのは、そうすると物事が一見簡単に理解できて一時的に安心できるからです。しかし実際には、物事というのはそんなに簡単ではありません。様々な理由が重なって結果が起きるものです。

ちなみに僕は「~のせい」というような方程式はすぐに破綻すると思っています。ハッキリ分かっていることは、銃に頼ったら危険だと思うし、政府に頼っても危険だということです。僕は保守派ではありませんが、むしろ一番頼れるのはひよこだと言ってもいいくらいです(しかしひよこを過信すると、しおちゃんがとっ捕まえてガブリとするので過信はできませんが)。

危険な経済刺激

ということで、日本政府もアメリカ政府も「経済刺激」を始めました。その長期的な副作用を理解しておかないと大変なことになります。日本政府は100兆円規模、アメリカ政府は600兆円相当規模の刺激を行うと言っています。この「刺激」をもっとわかりやすく言うと、「お金を刷ってばらまく」ということです。しかし僕の予想では、アメリカに関しては600兆円では済まないと思います。

メルマガで幾度となく僕は書いていますが、「お金を刷る」というのは「価値を生む」行為ではありません。逆に「価値を薄める」行為です。そして「お金を刷る」行為は「財政赤字を生む」ことでもあります。そして最終的にはアセットを持っていない中流層がかならず被害を受ける仕組みになっています。

現代貨幣理論(MMT)では「自国通貨であればどんだけ財政赤字を出しても大丈夫」という考え方があり、日銀もずっとそれを行ってきました。しかし古代ローマが滅びた時も今でいうMMTと同じことをしていたので、決して「現代」の理論ではありません。そして長期的には「うまくいかない」ということは歴史が物語っています。

現在の日本に当てはめてみると、「政府が補償すべきだ」「補償してくれれば大丈夫だろう」という考えは危険だと言わざるを得ません。銃を持つほど極端に走らず、「政府が助けてくれる」という安易で極端な考えにも走らず、「生き延びるには何が必要か」ということを見据えて考える必要があります。

自分の業界が危ないのならばバックアップを考えなければなりません。無制限の経済刺激で貨幣の価値が薄められるならば、どうやってその通貨の希釈から身を守るかも考えなければなりません。これから先、国際社会にさらなる「嵐」が訪れると僕は予想していますが、だからこそ「~のせい」と短絡的に片付けずに現実を直視して対応していかなければならないと考えている今日このごろです。

image by: rawf8 / shutterstock

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ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。

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