MAG2 NEWS MENU

最悪2年連続マイナス成長シナリオも。各紙が報じた「大封鎖」不況

IMF(国際通貨基金)は、新型コロナウイルスの世界的大流行が世界経済に与える影響について、世界大恐慌以来の落ち込みになるとの見通しを示しました。この観測について、新聞各紙がどう報じたのか、メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』の著者で、ジャーナリストの内田誠さんが紹介。読売新聞が取り上げた基本シナリオと3つのリスクシナリオについて、どれが現実になるかは、各国有権者がどのような政権を選ぶかにかなり依存すると見解を述べています。

各紙が報じた「世界大恐慌以来の不況がくる」

ラインナップ

◆1面トップの見出しから……。
《朝日》…世界恐慌以来 最悪の不況
《読売》…世界成長マイナス3%
《毎日》…独自「宣言」9道県
《東京》…医療現場 物資足りない

◆解説面の見出しから……。
《朝日》…需要も供給も破壊
《読売》…コロナ 休業や操業停止
《毎日》…プロスポーツ 停止状態
《東京》…監視・追跡 各国躍起

プロフィール

■未曾有の「大封鎖」■《朝日》
■基本シナリオと3つのリスクシナリオ■《読売》
■ユーロ圏の落ち込み■《毎日》
■重層的な危機に直面する各国■《東京》

未曾有の「大封鎖」

【朝日】は1面から2面に続く大きな記事で、世界経済について書いている。見出しを以下に。

(1面)
世界恐慌以来 最悪の不況
成長率 異例のマイナス予測

(2面)
需要も供給も破壊
米1700万人が失業保険申請
新興国は多重苦
日本 不況「長く続く可能性」

まずは【セブンNEWS】第一項目を再掲。

国際通貨基金(IMF)は最新の世界経済見通しで、2020年の世界成長率を前年比3.0%減とし、1月に予測した3.3%増から大幅に引き下げた。新型コロナウイルスの感染拡大で、世界経済は約90年前の世界大恐慌以来最悪の歴史的大不況に直面している。

2面。冒頭、グローバル化した経済が新型コロナウイルスの感染拡大で一気に凍り付き、各地の外出規制などによって需要と供給が同時に破壊されたとして、さらに感染拡大が長引けば「歴史的な不況はさらに深刻化しかねない」と言っている。

アメリカで失業保険の申請がとんでもない数になっている。失業の問題に直面させられているのは、リモートワークができないような低賃金の労働者で、衣料品大手ギャップが13万人近い従業員の大部分を削減するなど、空前の規模で拡がっているという。

IMFも少し前は「中国がV字回復する」と言っていたが、今は、今回の危機を「大恐慌」に匹敵する「大封鎖」と形容するようになっているという。

ブラジルを含む南米など新興国や発展途上国では、「経済危機」と「人道危機」の多重苦が本格化しそうだという。「人道危機」とは人々が餓死する状況を意味している。

日本については、4~6月期のGDPが年率11.08%もの減になるとの予想がある(日本経済研究センター)。緊急経済対策はまとめたが、感染拡大が収束するまでは積極的な消費喚起策を実行できない。緊急事態宣言の解除も一気には進めにくく、V字回復は難しいという。今後、失業が拡がると予想されるが、既に非正規労働者の「雇い止め」という形で、「派遣切り」が進行しているという。

●uttiiの眼

「需要」と「供給」が同時に破壊されたという表現は初めて見たけれど、決して誇張ではないように思われる。金融危機に端を発したリーマンショックが「需要」面の打撃中心だったこととの対比で、このような表現になったようだ。そしてIMFが今回の経済危機を「大封鎖」(The Great Lockdown)と呼んでいるのは示唆的で、この危機の根源に狡猾な新型ウイルスとの闘いがある以上、危機は簡単には終わらず、V字回復はないということだろう。《朝日》は世界各地の経済危機の有り様について、4回にわたって現場報告を掲載するという。

基本シナリオと3つのリスクシナリオ

【読売】は1面トップと3面の解説記事「スキャナー」、9面の経済記事まで。見出しを以下に。

(1面)
世界成長マイナス3%
今年 リーマン超え最悪
IMF予測
「大恐慌以来の後退」

(3面)
米欧落ち込み深刻
コロナ 休業や操業停止
「今年後半収束 回復へ」
不確実性は高く

(9面)
経済低迷 3シナリオ
IMF成長予測
最悪時 2年連続マイナス

9面記事にはIMF成長予測の詳細が掲載されている。発表になった世界経済見通しは、「新型コロナウイルスの感染拡大が2020年後半に収束する基本シナリオ以外に、よりリスクの大きい3つのシナリオを提示した」ものであり、「世界経済は極めて不透明感が大きい」とも。

記事には基本シナリオを含む4つのシナリオの概略が一覧表になっていて、特徴付けとともに、それぞれの2020年と2021年の成長率の想定が書き込まれている。第1のリスクシナリオは「すべての国で外出自粛などの封じ込め策が基本シナリオより5割長引いた場合」であり、第2は「21年に再び感染拡大が起こる」ケース、第3は「封じ込め策長期化に加えて第2弾の感染拡大がおきる」場合。

最悪のケースでは2020年の成長率が3.0%以上マイナスとなり、2021年には基本シナリオが想定する5.8%の成長率を約8%も下回り、計算上、再び2%以上のマイナスということになると想定されている。

つまり、見出しにあるように、「2年連続マイナス」という状況が想定の範囲内にあるということだ。その場合、「国家の財政悪化が市場で警戒され、所得補償などにあてる財源の調達に悪影響が出るおそれもある」ということにもなる。今、各国がやっているような補償が困難になるかもしれないという。

●uttiiの眼

基本シナリオの可能性が一番高く、3つのリスクシナリオは、リスクが高い想定になるほど可能性が低いものと普通なら考えるところだが、この場合はどうなのか。

どのリスクシナリオが実際に現実になるかについては、各国有権者がどのような政権を選ぶかにかなり依存しているように思う。自らの失態を覆い隠すためか、中国とWHOへの責任転嫁を目論む大統領を米国国民が選び続けるのか、未だにPCR検査さえ十分に実施できず、「直接補償を行っている国はどこにもない」などとウソを口にして恥じない総理大臣を日本国民が信頼し続けるのか。ここから先は自然過程ではなく、社会的政治的過程が私たちの進路を決めていくと思われる。

ユーロ圏の落ち込み

【毎日】は1面左肩のみ。見出しを以下に。

(1面)
世界経済マイナス3%
IMF今年予測 後退、大恐慌以来

●uttiiの眼

《毎日》の特徴は、世界経済全体の予測だけでなく、米国、日本、中国、ユーロ圏、中南米、ASEAN5ヵ国、インド、アフリカ、それぞれについて、2020年と2021年の成長率予測を書き込んだ世界地図を掲載している点。

目を惹くのはユーロ圏の今年が「マイナス7.5%」となっていること。各国・各地域のなかで最悪の数字になっている。また、米国が日本のマイナス幅よりも大きい5.9%のマイナスとなっていることも。

来年2021年の数字がすべてプラスになっているので、これは「基本シナリオ」であることが明確だが、言うなれば、最も楽観的なシナリオと言えるだろう。この程度の数字に収まる保証は、どこにもない。

重層的な危機に直面する各国

【東京】は3面の記事のみ。見出しを以下に。

(3面)
世界成長マイナス3%
20年予測 大恐慌以来の不況

●uttiiの眼

基本的に本記のみだが、特徴は、成長率について世界全体に加えて、米国、日本、ユーロ圏、中国を比較した表を掲載し、合わせて、1980年以来の世界経済成長率の折れ線グラフを掲載していること。リーマンショック時のV字回復と同様の回復の軌跡が点線で書き込まれているが、勿論、このようになる保証はない。

記述のなかで目を惹いたのは以下の一節。
「IMFは「多くの国が重層的な危機に直面している」と深刻さを指摘。ウイルスとの闘いに加え、国内経済の混乱、海外需要の落ち込み、金融市場の動揺などが同時多発しているためで「今回の危機は他に類を見ない」と指摘した」という。

image by: shutterstock

内田誠この著者の記事一覧

ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 uttiiの電子版ウォッチ DELUXE 』

【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け