MAG2 NEWS MENU

「官僚の言いなり」な安倍首相を見捨てる、自公実力者たちの実名

新型コロナウイルスを巡る諸々の対応が批判的に受け取られ、支持率が急落した安倍政権。かつては「安倍一強」とも言われた同政権は、なぜここまで追い詰められるに至ったのでしょうか。その最大の要因として、とある官僚による「菅官房長官排除」の動きを挙げるのは、ジャーナリストの高野孟さん。高野さんは自身のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で今回、官僚や側近らに操られ迷走する安倍首相に対して苦言を呈すとともに、現政権が「いつまで持つのか」を占っています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年4月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

ダッチロール状態に突入した安倍政権――「6月首相退陣」という予測まで飛び出した!

4月7日発表の108兆円緊急経済対策の目玉であったはずの「大幅減収家庭への30万円給付」を、わずか9日後の16日に撤回し「1人一律10万円給付」に切り替えたのは、前代未聞の大珍事で、これはもう「動揺」とか「混乱」とかいうレベルを超えて、政権自体がキリキリ舞いのダッチロール状態に入りつつあることの証左である。

世論はこの政権の体たらくに結構敏感で、4月10日過ぎに発表された一連の世論調査では、内閣支持率が急落し不支持率と逆転するという現象がはっきりと現れた。共同通信がそうなるのはおかしくないけれども、露骨に安倍首相寄りの読売や産経でもそうなっていることに、安倍首相は神経をすり減らしていることだろう。

   支持 不支持

産経 39.0  44.3
読売 42   47
共同 40.4  43.0

産経の調査では、7日の緊急事態宣言について「遅すぎる」が何と82.9%、アベノマスクを「評価しない」が74.8%である。

私に言わせれば、それでもなお4割前後の支持があることの方がむしろ不思議だが、支持の理由のだんとつトップは相変わらず「他にかわるべき人がいない」で、この数字には自民党内の反主流派や野党のだらしなさへの批判や失望が半分くらいは含まれていると見なければならないだろう。つまり、安倍首相への積極的な支持はたぶん20%程度だということである。

安倍首相はいつ辞めるのか?

代わりがいるかいないかに関わらず、安倍政権は自壊しつつあり、問題はこの有様で一体いつまで持つのかということである。

《20年6月?》

「サンデー毎日」4月26日号は「安倍6月退陣で『麻生首相』の悪夢」と題した記事を掲げ、二階俊博自民党幹事長が安倍首相に見切りをつけ、コロナ対策が落ち着くことを前提に「6月には退陣してもらうしかない」と周囲に話しているようだ、と書いている。

《20年9月?》

6月とはいかにも早すぎて、コロナ対策が落ち着いている可能性は大きくない。それでも「9月か10月になればコロナ対策も落ち着いて退陣の道筋がつきそう」だと、同誌は指摘する。仮に安倍首相が体調不良やコロナで入院した場合、麻生太郎副首相兼財務相が首相臨時代理となり、21年9月の党総裁任期まで務め総裁選を行うことになる。臨時代理とはいえ「麻生首相」というのは、国民にとってはもちろん、自民党にとってさえも悪夢でしかない。

しかし、実際に安倍首相は、体調不安説に加えて、アベノマスクや「うちで踊ろう」便乗ビデオなど、何をやっても裏目に出て、不評どころか嘲笑の対象となってしまう状態にかなり精神的に参っていて、近しい者には「もう辞めたい」と漏らしているようなので、あり得ないシナリオではない。

《21年4月?》

さらに、そこを何とか乗り越えて来年まで辿り着いたとしても、果たして来夏に本当に五輪を開くことができるのかという大難問が待ち構える。本誌が再三強調してきたように、新型コロナウイルス禍は来年7月までに収まっていればいいというものではなく、できれば来年1月、いくら遅くとも3月一杯までに全世界的に(第2波、第3波のぶり返しが各国ごとに起こり得ないとほぼ確信できるところまで)収まっていなければ、日本もIOCも各国の五輪委や選手団も、本格的な準備作業に入ることができない。

アビガンにせよ何にせよ、安心して使える治療薬が国際的に承認されて行き渡っているという奇跡的な状況が生まれていれば別だけれども、来春までに皆が気を取り直し心を一つにして五輪成功に向かって走り出すということには、なかなかなりにくいのではないか。とすると「再延期」はあり得ないから「中止」で、その時点で安倍首相は引責辞任せざるを得なくなる。

《21年9月?》

五輪が無事に開かれれば、その終了後に安倍首相は総裁の任期を満了し後を総裁選に委ねる。岸田文雄=政調会長と石破茂=元幹事長の対決となれば、安倍首相に近すぎる岸田に勝ち目はない。

総選挙を打つタイミングもない

こうした流れを解散・総選挙で断ち切ることはできないかと安倍首相周辺が考えるのは当然で、トランプ米大統領が11月に再選を果たせば早速12月にも来日を求め「強固な日米同盟」を演出して年末ないし年初に解散という話も持ち上がっているようだが、戯言に等しい。

第1に、今秋にはコロナ禍は国内的には一段落しているかもしれないが、米国をはじめ世界はどうなっているか分かったものではない。

第2に、その中で、ほとんど酔っ払いのおじさんのようになっているトランプが再選されるかどうかは、ますます疑わしくなっている。

第3に、大物の国賓としては今春の来日を延期した習近平=中国主席を年内にも招くのが先で、その前にトランプを挟むのは筋違いである。

第4に、それ以前に、来秋はこの数カ月の自粛による経済破綻が一気に爆発して大変なことになっている公算大で、とうてい安倍首相の「政権立て直し」という自己都合のための総選挙に国民は付き合ってはいられな
い。

安倍首相の下でも、ましてや麻生臨時代理の下ではなおさら、総選挙はありえず、来年9月に選ばれる自民党新総裁の下で、10月の任期満了までの間に行われると見るのが順当である。

てんでんバラバラの政権運営

「安倍一強」と言われてきた政権がなぜこれほど無様なことになってしまったのか。

致命的な要因は、昨年9月の人事で首相秘書官の肩書で満足仕切れなかった今井尚哉が首相補佐官をも兼任して官邸を取り仕切る権限を得、菅義偉=官房長官を意思決定システムから排除しようとしたことである。

安倍政権がこれほどまでに長続きしてきた最大の要因は、良かれ悪しかれ、菅のいかにも旧自民党の党人派的な人脈管理術に基づく根回し能力であり、菅がいればこそ二階=幹事長や公明党の山口那津男=代表とのパイプも繋がっていた。また菅とその脇を離れない警察出身の杉田和博=官房副長官とは全省庁に目配りをし、その政策と人事の動きを情報管理していた。

それに対して、今井、その副官である佐伯耕三=秘書官(アベノマスクや安倍自宅リラックス動画アップの発案者)、西村康稔=経済再生症/コロナ対策相など、いずれも東大→経産エリート官僚の道を歩んできたグループは、本当のところは、その場限りを切り抜けるだけの小賢しい浅知恵しか持ち合わせていないのに、それで安倍首相を操ればこの国を取り仕切れると勘違いして、菅という「盲腸」を切って捨てようとしたのである。

安倍首相は、「今井ちゃんに聞けば、何だってすぐ答えが出てくるんだよ」と、その圧倒的な学力の差に感服しまくっていて、それはその通りなのだろうが、その今井らの「学力」とは上述のような「小賢しい浅知恵」以上のものではないので、その結果が政権の迷走状態となって発現するのである。

このようにして、菅を無視したことで二階にも山口にも話が行き渡らず、結果として安倍首相が大恥をかくことになった。さて、これから二階や山口は、どういうタイミングで安倍首相を見限ることになるのだろうか。

image by: 首相官邸

高野孟この著者の記事一覧

早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 高野孟のTHE JOURNAL 』

【著者】 高野孟 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週月曜日

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け