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第3のビールの大増税。庶民の楽しみを奪う自民党政権の税制改悪

350mlのビールの税金は77円。世界の中でも法外に高い税率を避けるために、日本のビールメーカーは企業努力を続け、庶民に安くて楽しい「家飲み」を提供し続けてくれました。そんな努力をまたも無にしようとする増税が10月から始まります。2026年には、第3のビールの税金が倍近くになるこの「税制改悪」について、メルマガ『きっこのメルマガ』を発行する人気ブロガーのきっこさんが詳しく解説。庶民の楽しみを奪う「税制改悪」を繰り返す自民党政権に対して憤る気持ちを綴っています。

世界でも群を抜いて高すぎる日本のビール税

皆さん「家飲み」してますか?…というわけで、新型コロナウイルスの感染拡大による「緊急事態宣言」で、仕事の帰りや週末などに「外飲み」するのが好きだった人たちの大半が、今は「家飲み」に切り替えていると思います。そして、みんなとワイワイ賑やかに飲むのが好きな人たちは、スカイプの無料のグループビデオ通話などを利用して、それぞれが自宅にいながら、いつものように仲間とおしゃべりしながら「家飲み」を楽しんでいるそうです。

あたしの場合は、もともと外食も外飲みもしない派なので、新型コロナに関係なく晩酌は自宅で1人か母さんと2人ですが、今は中村愛ちゃんやミシマユウキちゃんなど、あたしの大好きな女性タレントが「ネット飲み会」を開催してくれているので、たびたび参加しています。外出自粛と先が見えない展開で「コロナ疲れ」が溜まっている人たちのために、いろいろな人が開催してくれる「ネット飲み会」は、視聴者がチャットで参加できるので、とても賑やかで楽しいです。

でも、こうした「家飲み」には、大きな落とし穴があると言われています。それは「飲み過ぎ」です。自宅にいるから帰りの電車を気にする必要もなく、眠たくなったらいつでも寝られるという安心感から、ついつい飲み過ぎてしまうそうです。普通に1人で晩酌している時なら、自分のペースで自分の酒量を守って飲んでいる人も、仲間とビデオ電話でつながっておしゃべりしたり、好きなタレントさんの「ネット飲み会」に参加すると、自分のペースが分からなくなり、いつもの酒量を超えてしまうそうです。

その上、今は収入が減ってしまって節約生活をしている人が多いため、安くてすぐに酔える度数の高いストロングタイプの缶チューハイが売れているそうです。ビールはだいたい4.5~5度ですが、ストロングタイプの缶チューハイは9度なので、1缶飲んだらビールを2缶飲んだことになります。ストロングタイプの缶チューハイの500mlを2缶飲んだら、ビールの中瓶を4本飲んだことになるのです。でも、この「ビールより缶チューハイ」という流れは、これからもっと進んで行くと思います。それは、今年の10月に「酒税改正法」が施行されるからです。

あたしは以前、ツイッターで、次のようなツイートをしたことがあります。

【世界のビール税】(1リットルあたり)日本220円、イギリス、スウェーデン90円、デンマーク50円、オーストリア、オランダ、ベルギー20円、イタリア、フランス、ギリシャ、ポルトガル15円、ドイツ、アメリカ、スペイン10円(編注:各国の税額は著者調べ)

この一覧を見ただけで、日本政府のビール税の巻き上げっぷりが良く分かると思います。もしもビールが好きな人たちの多いドイツが、日本と同じビール税に引き上げたとしたら、きっと暴動が起こるでしょう。で、こんなにもビール税が高いと、あたしたち消費者はもちろんのこと、各ビールメーカーも困ってしまいます。それは、小売価格が高くなるために売り上げが伸びないからです。

ビール、ガソリンなどは税にも消費税の二重課税

日本の場合、350mlの缶ビールはコンビニでだいだい220円くらいですが、このうち77円が税金なので、ビールメーカーには143円しか入りません。でも、あたしたち消費者は、この220円の缶ビールを1本買うと、さらに10%の消費税が上乗せされて242円になってしまうのです。1缶220円の内訳は、ビール本体が143円、ビール税が77円なのですから、本来ならば本体価格の143円にだけ消費税が課せられて、計234円になるはずです。それなのに、ビール税にまで消費税が課せられるという「税の二重取り」が平然と行なわれており、1本買うごとに8円も多く巻き上げられているのです。

これはガソリンや軽油も同じです。ガソリンには1リッター当たり約57円、軽油には約34円の複数の税金が課せられていますが、この税金を含んだ小売価格に、さらに消費税が上乗せされているのです。今は少し安くなってレギュラーガソリンが1リッター130円くらいなので、10リッター給油したら1300円で、これに消費税10%が上乗せされて1430円になります。でも、ガソリンの本体価格は10リッター730円ですから、本来の消費税は73円なのです。それなのに、実際には130円、つまり57円も多く巻き上げられているのです。そして、これは10リッターの話ですから、20リッターなら114円、30リッターなら171円と、どんどん「過払い金」が増えて行くのです。

話をビールに戻しますが、350mlの缶ビールが220円くらいだとすると、発泡酒が165円くらい、第3のビールが145円くらいになります。ザックリ説明すると、これらは原材料の中の麦芽の比率によって分けられています。麦芽が67%以上だとビール、67%未満だと発泡酒、0%だと第3のビールになります。そして、350mlの缶ビール1缶あたりの酒税を比較すると、ビールが77円、発泡酒が47円、第3のビールが28円になります。つまり、これらの商品の価格の違いは、ほとんどが税率の違いによるものなのです。

そもそも発泡酒が開発されたのは、日本のビール税があまりにも高いために、ビールのカテゴリーに該当しないように麦芽の比率を低くしたのが始まりでした。当初の発泡酒は麦芽50%以上の商品が多く、味もビールに近かったので、多くの人がビールから発泡酒に切り替えました。すると、ビールの販売数が減り、国に入るビール税も減ってしまったのです。そこで、当時の橋本龍太郎首相は、酒税法を改定して、麦芽比率が50%以上の発泡酒の税率をビールと同じに引き上げたのです。

相次ぐ税改正で企業努力はビールの泡ならぬ水の泡に

この「カネ!カネ!カネ!」のあさましい自民党の手口によって、少しでも安い価格で消費者に美味しいものを提供しようとがんばった各メーカーの企業努力が、ビールの泡ならぬ水の泡になってしまいました。でも、メーカーだって負けてはいません。今度は麦芽比率が50%未満で美味しい発泡酒を開発しました。すると、今度は当時の小泉純一郎首相が、発泡酒の酒税を「50%以上」「50%未満25%以上」「25%未満」の3段階に分け、大半の発泡酒が含まれる「50%未満25%以上」の酒税を引き上げたのです。

そのため、先ほどは麦芽の比率が「67%未満だと発泡酒」と書きましたが、実際には、現在販売されているほぼすべての発泡酒が「25%未満」なのです。しかし、ここまで虐められて来たビールメーカーは、わずかな麦芽比率でも美味しい発泡酒を開発することに成功し、さらには、麦芽0%でも美味しい第3のビールまで開発したのです。麦芽0%なら発泡酒よりも酒税が低くなり、そのぶん消費者に安く提供できます。こうした流れから、自宅でビールを飲んでいた人たちの多くが、1本目はビール、2本目以降は発泡酒か第3のビールという飲み方をするようになりました。

でも、これまでの自民党の手口からも分かるように、1円でも多く税金を巻き上げたい現在の安倍政権は、またまた庶民の味方である発泡酒と第3のビールをターゲットにした酒税法改正案を数の力で採決し、それが今年の10月から施行されるのです。どんな改定かと言うと、現在、350mlの缶でビールが77円、発泡酒が47円、第3のビールが28円の酒税を「すべて55円に一本化」するのです。ビールは22円も低くなりますが、発泡酒と第3のビールは増税になります。

これは、一気に一本化するのではなく、段階的に一本化して行きます。まずは今年の10月に、ビールの税を7円引き下げて70円にして、発泡酒は47円のまま据え置きで、第3のビールの税を10円引き上げて38円にします。それから、3年後の2023年10月に、またビールを7円下げて63円にして、第3のビールを9円引き上げて47円にします。これで第3のビールは発泡酒と同じ税率になります。税率が同じになったため、この時点で第3のビールというカテゴリーは消滅し、今、第3のビールとして売られている商品は、すべて発泡酒に変わります。そして、さらに3年後の2026年10月に、ビールを8円下げて55円にして、発泡酒と第3のビールを8円引き上げて55円にして、ここで一本化が完成という段取りなのです。

庶民の暮らしなどまったく考えていない税制改悪

この改定で喜ぶのは、普段からビールだけ飲んでいるお金持ちだけで、少しでも安く飲みたくて発泡酒や第3のビールを愛飲して来た庶民は、みんな増税パンチを食らうのです。特に、あたしのように第3のビールばかり飲んでいる人は、酒税が2倍になるのですからシャレになりません。

「じゃあ安くなったビールを飲めばいいじゃん」と言われるかもしれませんが、ビールは現在77円の酒税が55円になるだけなので、1缶220円が200円になる程度、あたしには手が出ません。もちろん1本や2本は買えますが、あたしの場合、週に2回は晩酌しますし、いつも飲んでいるのは格安店で買って来た第3のビールの500mlなので、これをビールの500mlに置き換えたら、年間で1万円以上も高くついてしまいます。

それなら、現在の第3のビールと同じ税率、350mlあたり28円の缶チューハイを飲んだほうが遥かに安上がりです。でも、そう言っていられるのも、あと6年なのです。ビールと発泡酒と第3のビールの酒税が55円に一本化される2026年10月には、現在28円の缶チューハイの酒税も7円引き上げられて35円になってしまうのです。そうなると、それまで普通の度数の缶チューハイを飲んでいた人たちも、少ない本数で酔えるストロングタイプに切り替えるかもしれませんし、そのためにアルコール依存度が高くなってしまうかもしれません。

第3のビールや缶チューハイの税率を引き上げる一方でビールの税率を引き下げるなんて、完全に「金持ち優遇」の税制改悪です。2014年4月、安倍晋三と麻生太郎は消費税を増税しましたが、その翌月、法人税を引き下げました。また、昨年10月にも消費税を増税しましたが、2カ月後の12月には大企業の税率負担が軽減される複数の措置をコッソリと行ないました。これでは何のための増税だか分かりません。庶民の暮らしなどまったく考えていない自民党らしい税制改悪、本当に腹が立ちます。これじゃあ「家飲み」でもしないとやってられません!…って、本末転倒ですか?(笑)

image by: shutterstock

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