緊急事態宣言により外出自粛が求められるなか、消費の動向に変化が生じています。ネット通販の売り上げ増はもちろんですが、リアル店舗でも意外に売れているものもあるようです。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんがその事例を紹介。現在のような危機に際し、事業者、売り場担当、マーケティング担当がどう対応すれば売り上げ増に繋げられるのか、その方法を伝えます。
危機の時に売り伸ばすには~リスク大の時に何を見て何をすべきか?
コロナの危機の中、消費者の行動はどうなっているのか?
コロナウイルスの感染拡大防止の動きがある中、企業もいろいろな対策を打っています。非常事態宣言などにより、三密を避ける、という心理が働くので、繁華街に行っての買い物や、外食などにいかないようにしているため、家庭内での行動が増えています。
それにともなって、「買い物も外に出ずに」という気持ちになるのが、ここのところ言われている、“巣ごもり消費”ですよね。巣ごもり消費の際に、まず思い浮かぶのが、「通販」ですよね。家で見て、探せる媒体でものを買い、自宅に届けてもらうことになります。
とくに通販では、本や文房具、またZOZOなどで服や靴を買う、ということが浸透してきましたが、ここのところ外出を控える心理が働くため、「生鮮食品などの食材も通販で買おう」という動きも出ています。
日本経済新聞の記事によると、西友楽天スーパーでの販売量が増えているので、配送の人員体制を組むのが難しくなり、「当日配達ができない」といった、需要過多も生まれるくらい伸びていますよね。
意外でしたが、日本のEC利用率はまだ全体の約7%。中国の22%、韓国の16%、英国の19%に比べるとまだ低いのですが、これを機に伸びていくことが予想されます。これまでは、インターネットの普及に伴って、ネット通販の“売上の量”が伸びてきました。
ここ最近は、何がどう変わり、これからどうなるのか?
しかし、コロナウイルスによる巣ごもり消費によっての、今回の通販の伸びの“中身”は、若干異なります。まずは、「買っている層」です。
一般の消費者に加えて、リモートワークで在宅勤務をする人たちも、家にいる分だけ、いつもより多く買い物をしています。この層により、対法人向けの企業も売り上げを伸ばしています。たとえば、文具やオフィス家具の通販の会社、アスクルも対前月比で。24%売り上げを伸ばしているとのこと。
次に、「買っている商品・サービス」です。これはリアル売り場の話ですが、小田急百貨店では、高級ワインの売り上げが伸びているそうです。休校措置などで、子供達が家にいるので、リアルでもネットでも、書店での本や参考書の売り上げが伸びでいるとのこと。また、食品では学校に行かず給食ではなく家で食べるので、パンの売り上げが伸びている、ということ。
これらの事実から推測されることは、(マーケティング用語でインプリケーションといいます)家庭内での消費に対する「考え方」が変わった、ということ。小田急デパートの高級ワインを例にとると、「家で食べることって、意外といいな」「ちょっと贅沢してみよう」と、いうお客様の心の変化だったりします。
さて、ここまで読んでもらって気がついたことがありますよね。あなたがもし、文具メーカーだったら、売り先をリアルやネットの書店にシフトすれば、売り伸ばしにつながる可能性がありそうです。パンのメーカーや、ベーカリーの経営者だったら、学校近辺にデリバリーカーを出せば、売れるかもしれません。小田急百貨店の酒類担当者だったら、商品ラインアップに、高めのワインをより多く入れれば、売り伸ばしできそうです。
人は環境が変わると、変化に応じた行動をするものです。ということは、
- 巣ごもり消費になって
- ある消費者層の行動が変わり
- 普段とは違う特定の商品を購入した
という傾向があるので、これを、自社の顧客層と商品に当てはめればいいのです。
まとめるとこうです。
「変化に敏感になり、売り先と売り物を変える」
コロナ危機のような「不確定要素」が多い状況下では、これまでのやり方では“ダメ”です。新しい時代が来る前触れ、といってもいいでしょう。
消費は一旦逃すと、とりもどすのが難しい、と言われています。しかし、やはり企業としてここは耐える時。お客様が減ってしまったこの時期だからこそできる、自社でしかできないことを、今こそすべきです。
変化に応じて、消費傾向は変わります。その行動の先を読み、「売れる可能性がある層」に、「買ってもらえそうな商品」を当てる。実はこれ、マーケティングの基本です。そして、その出発点にあるのは常に、「環境の変化にいかに敏感に対応できるか」です。そのためには、アンテナを貼り適切な情報収集をすることが、最初の一歩なのです。PDCAサイクル、とよく言いますが、P、すなわち計画の前には、I、すなわち情報と、A分析が必要なのです。
そして、新しい顧客ができたら、そのお客様がどんなものを買ってくれたのかをしっかりデータとして残して、回復してきた時に、よりきめ細かなサービス、たとえば、お客様ごとに欲しそうな商品を用意するなど、お客様名簿をしっかりと作り込んで備えておくといいですよね。
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