【書評】記憶力の衰えで気分が滅入る人が「やめるべきこと」

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歳を重ねるに連れ衰えを見せる記憶力。そもそもなぜ人は、加齢とともに記憶する力を失ってゆくのでしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では編集長の柴田忠男さんが、そんな「老いと記憶」を科学する一冊を紹介しています。

偏屈BOOK案内:増本康平『老いと記憶 加齢で得るもの、失うもの』

dc20200521-s老いと記憶 加齢で得るもの、失うもの
増本康平 著/中央公論新社

振り返るという動作をしたら、その時考えていたことを忘れる症状がときおり出て来る、ということを発見した高齢者のわたしである。たった今でも、モニタに向かったまま、テキストを書く基本的な操作が不意に分からなくなることがある。都合の悪い過去は積極的に忘れる(ようにしている)が、関係した誰かは覚えているというのが困る。じつに困る。いまわたしが読むべき本がこれだ。

著者は神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授、専門分野は高齢者心理学、認知心理学、神経心理学。記憶の研究に参加する高齢者の多くは「物忘れが多くなった」「記憶にはまったく自信がない」と自信を持って言う。「どうすれば物忘れを減らせるのか」ときまって聞く。記憶が加齢でどう変化するのか、正しい知識を持つことが不可欠、といわれてもすぐ忘れちゃいそうな気もする。

第一章では「衰える記憶」と「衰えない記憶」について解説。第二章では「衰える記憶」への対処。第三章では記憶機能の訓練について解説。第四章では記憶機能の低下と認知症の予防について現在実施されている取り組みを紹介。第五章では高齢期における記憶の役割についての考察。うー、めんどうくさい。わかりやすく書かれているが、正直言ってよくわからない、ってのも変だが。

なぜ物忘れが生じるのか。経験したことを記憶し、それを思い出すためには、経験を情報として頭に入力し(符号化)、その情報を保持して(貯蔵)、保持した情報から必要な情報を思い出す(検索)という三つのプロセスを経る必要がある。年をとると特に低下するのは符号化と検索のプロセスで、その理由は加齢にともなう萎縮が顕著な前頭前野が、符号化と検索のプロセスを担っているためだ。あー、そうですかい。いまリアル老人が知っても意味ないわ。

記憶力の衰えの自覚によって気分が滅入るなら(わたしは開き直っているから平気)覚えることをやめればいい。覚えなければ忘れることもない。著者自身、記憶に問題があると家族に言われている。話を聞いていないし、聞いていたように見えても後で確認すると覚えていないし、まるで思い出を共有できていないと言われることもあるという。日々の予定も正確に把握していない。

仕事の情報も覚えているかというと、それほど自信がないという。自分の記憶をそれほど信用してはおらず、会議の日時や約束のスケジュール、論文の執筆に必要な情報など、正確性が求められる情報ほど記憶に頼ることをやめている。じゃどうしているのかというと、自分の記憶は捨てて、SOC理論に基づいた記憶補助ツールのスマホやタブレット、メモなどをその代わりしているのだ。

SOC理論というのは、選択(Selection)、最適化(Optimization)、補償(Compensation)の重要性の指摘で、頭文字をとったものだ。覚えておく必要のある重要なことは記憶するのではなく(選択)、メモや手帳などの記憶補助ツールによって正確に記録し(最適化)、記憶力の低下を補い、物忘れに対処する(補償)ということ。メモや手帳は重要だが、能動的に教えてくれない。

その欠点を補うのが高齢者の多くが持つ携帯電話だ。普及率も高く80%。それより機能が高いスマホの普及率が低いわけは、ガラケーを使い慣れていてスマホに移行する必要性を感じないことや、新たに操作方法を覚えるのが苦痛だからだ。いずれにせよ、記憶補助ツールの使用により、記憶機能の低下は補償できる。わたしは電話が大ッ嫌いだ。Macが使える限り頼るつもりだ。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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