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米国「不揃い」野菜の宅配サービスブームはコロナ後も継続するか

新型コロナウイルスの感染拡大により外出が制限され、生活必需品の購入に宅配サービスを初めて利用したり、利用頻度が増えたという人が多いのではないでしょうか。日本より厳格なロックダウンの措置が取られたニューヨークにおいてはその傾向は顕著なようです。ニューヨーク在住『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』著者のりばてぃさんもこの期間にフード系の宅配サービスをさまざま試していると報告。今回のメルマガでは、日本でも広がっていくかもしれない不揃い、訳ありの野菜の宅配サービスを比較しながら紹介しています。

フード・デリバリーのインパーフェクト・フーズ

「家にいる時間が長くなったので、その分、家で食べたり飲んだりする食べ物、飲み物の需要が高まる」と再確認したので、改めて、フード(またはミール)宅配サービスを試している。

ちょうどタイミングよく4月に入ってから、新型コロナの影響で、経済誌、有識者向け雑誌、女性誌の3つの異なるジャンルの雑誌が次々と食事や食料品の宅配サービス特集記事を掲載。その3つの雑誌のオススメを比較・分析し、その中からフレッシュリー(Freshly)、ミスフィッツ・マーケットのミスチーフ・ボックス(Misfits Market Mischief Box)の2つを実際に試し、その様子はブログやYouTubeで紹介した。
今、米国で注目のミール・デリバリー・サービス、フレッシュリー(Freshly)を試してみました
今、米国で注目のフード・デリバリー・サービス、Misfits Market Mischief Boxを試してみました

今回、これも予約殺到でずっとウェイティングリストだったImperfect Foods(インパーフェクト・フーズ、直訳すると、完璧ではない食品)がようやく宅配可能になったとのことで取り寄せてみたのけど、これがなかなか興味深い結果だった。せっかくなので、実際どんなだったのかというお話と多様な意識があるからこそ、そもそもインパーフェクト・フーズやミスフィッツ・マーケットのようなサービスが生まれたのかというお話をしたいと思う。

インパーフェクト・フーズは、有識者層に人気のニューヨーク・マガジンが、特に力を入れて紹介していたサービス。ミスフィッツ・マーケットは2018年創業とかなり新しいがインパーフェクト・フーズは2015年創業と先。当然、ミスフィッツ・マーケットよりも形の悪い野菜への理解は少なかった。

オーガニック商品を多く取り扱い、環境や社会問題にも敏感な取り組みをすることで有名なホールフーズでさえも、形の悪い商品(ホールフーズではアグリー・ベジタブルと呼んでいる)を店内で取り扱いはじめたのは記憶している限りでは2016年以降のことだ。

しかもホールフーズに続きウォルマートも形の悪い商品を販売するコーナーを設けていた。しかし、2019年2月には、「想定以上にお客さんに買ってもらえなかった」という理由でこのトレンドは長くは続かないと判断し、形の悪い商品を取り扱うのをやめている。
Walmart and Whole Foods end ‘ugly produce’ tests, suggesting trend may have limits

1年前ですらこのような状況なので、ミスフィッツよりも先に創業したインパーフェクト・フーズはメッセージの伝え方が徹底している。まず、届いた箱の外側の目立つダンボール箱の上部には以下のように書かれていた。

「40% of the food in the U.S. goes uneaten」(米国の食品の40%は食べられずに廃棄)、「$218 billion in food is thrown away every year」(毎年2,180億ドル(約23億円)分の食品が捨てられています)、「This box is made with 100% recycled materials.」(この箱は100%リサイクル素材で作られています)…などのメッセージ。

このジャンルの先駆者だけある。しかも、ダンボール箱の側面には、「Groceries on a mission」(使命を受けた食料品)そして、「Whoever said that one person couldn’t make a difference in the fight against food waste obviously never met you」(食品廃棄物との戦いに、たった一人じゃ変化をもたらせるわけがないと言うのは、明らかに、あなたに会ったことがない人だ)…という力強いメッセージも。

ミスフィッツ・マーケットよりも硬派な社会派、本格派な印象だ。実際に箱を開けてみると、ミスフィッツとの最大の違いはまず梱包が違う。ミスフィッツはフェデックスという輸送会社の翌日配送を利用。輸送時間が長いこともあり、衝撃吸収材や保冷剤などを入れている。より鮮度が高いし、衝撃に弱い葉物野菜(例、パクチー)なども良好な状態で配送されてきた。

一方で、インパーフェクト・フーズは配送センターから直接その日に車で配送される仕組みなので梱包はそれほどしっかりしていない。ダンボール箱にはただ雑多に野菜や果物が入れられてるだけ。しかも、野菜や果物のセレクションも、非常に硬派で派手さがない、見慣れた野菜や果物しか入っていない。

ミスフィッツはどうやって食べたらいいのか謎の野菜が入っていることもあるので、好奇心をかきたてられるのだけど(つまり料理へのわくわく感も出てくる)、インパーフェクト・フーズはあまりにも普通すぎて、正直つまらない印象だった。

先にインパーフェクト・フーズを取り寄せていたらこうは思わなかったかもしれないが、自分ではまず買わないミステリアスな野菜が毎回、何かしら入っていると『宝箱』感覚を楽しめるし、ミスフィッツ・マーケットは『宝箱』感覚を消費者心理として理解しているのかもしれない。もしかしたら、インパーフェクト・フーズよりも後からできたミスフィッツが、先駆者との差別化のために生み出した工夫、演出なのかも?

一方、「硬派な社会派、本格派」なインパーフェクト・フーズの方は、珍しい野菜の代わりに、ロゴマークにもなってるカタチの悪いにんじんがたくさん入っていた。

他には野菜や果物だけでなく、肉や魚、ナッツ類や乳製品、穀物類なども追加で購入できるようになっているので、ほぼすべての材料をまとめて購入したいという人には便利な内容となっている。しかも、オリーブオイルなどインパーフェクト・フーズのロゴが入ったプライベート・ブランドを出すなど利益を出しやすいビジネスを展開している。

インパーフェクト・フーズとミスフィッツのどちらを選ぶかは好みとニーズによると思うが、うちの場合は『宝箱』感覚のほうが魅力的なので隔週でミスフィッツのオーダーを続けている。

ところで、インパーフェクト・フーズもミスフィッツも多様な考えがあったからこそ生まれたサービスのように思う。これまで当たり前とされてきた、みんなと一緒、同じという考え方に何の疑問も持たなかったら生まれなかったもの。上述したように大手スーパーが一時は試したものの止めている。賛同するのはまだ一部の消費者だけなのだ。

でも信念を持ち続け続けてきた結果、新型コロナ問題で一気にブームに。そして、この2社のサービスがあったから買い物に行けない人でとても助かったという人たちは数多いだろう。これを機に購入を継続するという人は少なくないだろうから、今後の動向が非常に楽しみである。
インパーフェクト・フーズ
ミスフィッツ・マーケット

image by: shutterstock.com

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ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。読んでハッピーになれるポジティブな情報や、その他ブログで書けないとっておきの情報満載のメルマガは読み応え抜群。

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