トランプ落選は確実か。アメリカの理念を崩壊させた大統領の功罪

 

日本の外交はどうするか?

トランプ大統領の「人権」より「法と秩序」の考え方に、ドイツのメルケル首相、カナダのトルドー首相も唖然としている。このため、メルケル首相は6月に計画したG7首脳会議への出席を辞退した。また、イギリスのジョンソン首相も、ロシアをG7に復帰させるというトランプの提案を拒絶した。

このようなことは、欧州の同盟国や友好国が、いかに米国に幻滅しているかを表している。特にトランプ大統領の抗議デモに対する人権無視のデモ弾圧で、ダメ押しになったようだ。

ホワイトハウス周辺の平和的なデモ隊が「強制排除」されたことに、メルケル首相をはじめヨーロッパの複数のトップ層から非難の声が上がった。トルドー首相は、悲痛な顔をして「見たくないものを見た」とコメントしている。

逆に、いつも人権問題で米国から批判されてきた中国は、米国内の人種問題や人権抑圧を嬉々として取り上げ、イラン外務省の報道官は「国家による弾圧」に立ち上がった米国国民に同情の意を表した。

米国のデモ弾圧で、中国は香港デモ弾圧を正当化できることになり、天安門事件も正当化できることになってしまった。

また、中国は、米中貿易協議の第1段階合意の米国からの輸入を止めている。合意を破棄はしないで、米国の出方を見ている。トランプ大統領も景気浮揚のためには、中国への輸出が必要であり、中国への非難をどうするのか、米中は腹の探り合いをしている。

米国の対中政策は、言葉上では非難しているが、まだどうなるのかわからない。トランプ外交は、取引外交であり、主義主張がなく、成果があれば簡単に変わることが多い。

国内のデモ制圧や対中関係などで、トランプ大統領の支持率が少し下がり、バイデン候補の支持率が上がり、差は10%以上になっている。このままであると、11月の大統領選挙で再選されないことになる。勿論、まだ5ケ月もあり、わからないが、トランプ氏が大統領では無くなることも視野にいれる必要が出てきた。

ということで、米民主党バイデン候補の対中政策がどうなるのかが、重要な外交政策決定のキーになってきた。

しかし、バイデン候補の対中政策が誰にも分らない。中国はハッカー集団を使い、バイデン候補のサイトに侵入して政策を探ったようである。というように、中国にも分らないのであろう。

もう1つ、心配なのが米国の大統領が変わると、今まで進めてきた米国との約束がすべて反故にされてしまうことである。トランプ大統領と進めてきた日米同盟の枠組みが反故になることもありえる。

しかし、同盟国や友好国から信頼されない、予測できない米国と日本が同盟しても、何も解決できない。中国に対抗することもできない。中国対抗の効果的な国際秩序や規範も構築できない。

日本は、単純に米国との同盟関係を維持すればよいという事態では無くなってきた。人権を旗印にできない米国の世界覇権は、失われようとしている。

日本は、ドイツなどの欧州や英国と緊密に連絡を取り合い、米国抜きでも国際秩序や規範を共同で決めていくしかない。米国は当分、主義主張がない予測できない、取引での外交と割り切り、そのように見て、距離を置いた友好な関係を構築するしかない。

そして、バイデン候補の対中政策を見て、次の日本の外交政策に出るしかない。そこまでは、中国に対する政策もあいまいにするしかないのかもしれない。

中国と米国が「人権」より「秩序優先」という同じムジナになったことで、正義の理念は消えた感じになった。今までの世界正義の人権外交を日欧で引継ぐしかないようだ。

さあ、どうなりますか?

image by: Evan El-Amin / Shutterstock.com

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