トランプ落選は確実か。アメリカの理念を崩壊させた大統領の功罪

 

米国の抗議デモを武力で鎮圧か

ミネソタ州でのフロイドさんを窒息死させた警官に対する抗議のデモが米国全土に広がっている。一部暴徒化して、裏にアンティファという中国の組織があるとして、このデモに対して、トランプ大統領は、「民生・軍隊など連邦政府の資源で利用できるものをすべて動員する」と警告した。

しかし、抗議デモに対して人種差別反対の見解もなく、人権擁護の言葉もなく、テロ組織の行為であり、軍を使った鎮圧をするとした。その上、州兵を使わない州知事を非難した。

そして、平和的なデモを行っていたワシントンのデモ隊に対して、州兵が催涙ガス弾を発射しデモ隊を制圧している。一部の過激な暴動に対する州兵の行為はまだ、許されるが、平和的なデモを力で制圧した。

これに対して、マティス元国防長官が「ドナルド・トランプ氏は、米国人を結束させようとしないばかりか、そのふりさえしない。こんな大統領は私の人生で初めてだ」「それどころか、私たち米国人を分断しようとしている」と批判した。

これに続いて、マーク・エスパー米国防長官も反乱法を発動して連邦軍武隊を派遣し、デモを鎮圧することに反対すると表明。エスパー氏は記者団に対し、「このような状況下で行政当局に対する支援を行うには、州兵が最も適しているとこれまで常に考えてきたし、今後も変わらない」と表明。「現役部隊の動員という選択肢は、最終手段としてのみ使われるべきで、最も緊急かつ差し迫った状況に限られるべきだ」とし、「われわれは現在、そのような状況にない」とした。

6月4日は、31年前に天安門事件があった日であり、平和的なデモ隊に中国人民軍が出て弾圧したが、これと同じようなことを民主主義国家の米国でも行うことになりそうになった。

トランプ大統領は、「人権」より「法と秩序」を優先したことで、香港での国家安全法を施行する上で、香港市民のデモを軍事力と警察力で完全に抑え込む習近平国家主席の「人権」より「法と秩序」と変わりがないことにもなる。

このような情勢で、政治的な発言を控えていた前・元米大統領4人が、記者会見を行い、暗にトランプ大統領の軍によるデモ鎮圧を非難した。

エスパー米国防長官も多くの米軍幹部から抗議を受けて、軍隊の派遣を停止したようであるし、軍隊の構成員に黒人が多く、抗議デモの鎮圧は、軍の中にいる黒人たちが反乱を起こす可能性もあった。

事実、州兵が抗議集会に同調して参加していた州もあるし、警察官が抗議集会で片膝を立てて座り、同調する姿もあった。

これと同じことが米軍でもおきる可能性が高いのは、米軍のトップ層まで黒人がいるからであるが、そうすると軍の反乱となり、米国の崩壊になる危険性も、歴史家で人格者のマティス元国防長官は見ていたように感じる。軍隊はあくまで外の敵に使うものであり、国内のある勢力に使うときは、慎重に行う必要がある。

事実、ミリー統合参謀本部議長、マッカーシー陸軍長官、ギルデイ海軍作戦部長、ゴールドファイン空軍参謀総長などが「軍は米国民とともに」と表明して、トランプ大統領、総司令官の命令に従わないとした。普通なら、エスパー国防長官と米軍幹部を大量に解雇すればよいが、それもできない。軍を敵にすると、クーデターやトランプ暗殺の可能性も出てくる。

というように世論が分裂した状態で、軍を使うことは難しい。そのような基本的なことも知らないトランプ大統領は、大きな反発を受けることになったようである。

軍出動は、ローマ帝国の最後と同じになる。ローマ軍の主力がゲルマン民族になっていたが、ゲルマンの反乱にローマ軍が出動したが、逆に反乱軍になって、ローマ帝国は滅亡する。

このため、バイデン候補の支持率が急上昇している。トランプ大統領の支持率はコアな人たちであるので支持率40%と変わらない。黒人層が大挙して、バイデン候補を支持し始めた。福音派の一部や共和党保守本流もトランプ大統領から離れたようである。

批判が大きくなり、やっと、トランプ大統領は、フロイドさんが受けたような暴力は許されないと発言。「法の下の平等な正義は、人種、肌の色、性別、信条に関係なく、全ての米国人が法執行機関から平等な扱いを受けることを意味しなければならない」と語った。やっとである。

というように、ローマ帝国崩壊と同じような米国の崩壊を目の前で見ている。米国の破壊者トランプ氏の破壊力はすごいことになっている。米国の理念も潰し、米国の時代は過ぎ去った。

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