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木村花さんの死を利用しインテリさをアピールする見識者の不見識

人気バラエティ番組「テラスハウス」出演で注目されるも、22歳の若さで死に追いやられてしまった女子プロレスラーの木村花さん。その最大の原因は「SNSへの心無い匿名の書き込み」というのが衆目の一致するところですが、一見頭のよさげなロジックで問題を複雑にするかのような持論を展開する「見識者」も存在します。そんな現状に異を唱えるのは、米国の邦字紙『NEW YORK ビズ!』発行人を務める高橋克明さん。高橋さんは自身のメルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』で、インテリぶった見識者たちを批判するとともに、今回のような悲劇を二度と起こさぬことこそが何より重要ではないのかとの思いを記しています。

ブログでは書けない、色々とここ最近、感じたこと 木村花さんの死について

リアリティ番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラー、木村花さんが22歳の若さで自ら命を絶たれました。SNSでの彼女に対する誹謗中傷が原因だと言われています。

花さんご本人とは、僕は直接面識はないのですが、花さんのお母様、木村響子さんとは2度ほどご一緒させて頂きました。親しい、というわけではないのですが、彼女がニューヨークに来た際、編集部にも遊びにいらして頂いたことがあります。その際、娘さんの花さんのお写真も見せてもらったことを覚えています。まだ花さんが有名になる前のことでした。

とても、とても、気さくなお母さんの人柄から、おそらく娘さんも素敵な方だったと想像します。

今回の件、色々と言われていますが、僕個人の見解では、

一番悪いのは、“実は”匿名をいいことに、誹謗中傷を繰り返した人間なんです。絶対そうなはずです。そこはブラしちゃいけない。間違いなく「人が人を言葉の刃で傷つけること」がいいわけはないはずです。小学生でも知っている。それが答えなはずです。

「でも、それを助長したテレビ局にも問題はあるよね」「番組上、煽ったMCたちにも責任あるよな」「一定数、そんな批判もあるのだから仕方ないよね」「そんな番組に覚悟して出演した本人も悪くね?」「命を絶っちゃダメでしょう。死んだ本人がいちばん悪いってことにしなきゃ」

日に日に、そんな意見がSNS上で出て来ていることも知っています。

でも、そんな“正論”でなにかが解決するのか?

原因の原因のそのまた原因をつきつめて、理想的かつ現実的な解決ができるのか。

挙げ句の果てには、「番組を制作したプロデューサー、そしてそれを流した局自体が諸悪の根源だ」とまで言う見識者は、本質的な理想の解決法を探しているのか、逆張りする自分のインテリジェンスを世間にアピールしているのか、どっちが目的なのか僕にはわかりません。

インフルエンサーたちが、自身の物事の本質を見極める力(りょく)を世間に知らしめる為、テレビ局や、司会者や、視聴者や、故人を悪者にしたいのはわかるけれど、「もうこんな悲劇を繰り返さない」という最大の目的の前に、その意見が、発言が、なにかの現実的な役に立つようには思えない。

それらの発言の先にある目的、ゴールはなんなのだろう。金輪際、制作会社にリアリティショーを制作させないため?では、一般人参加のバラエティ番組は?そこでも同様の悲劇が起こる可能性は否定できない。いっそのこと、バラエティ番組を全部、中止にしようか。いや、もともとの局、民放をすべて解体しよう。日本はNHK一本でいい。でも、バラエティの需要がなくならない限り、NHKもバラエティ制作に今以上、力を入れるようになるだろう。また同じことが起こる。なので、日本はテレビ放送、すべて中止。テレビをなくそう。でも、SNSが今回の発端ってことは、日本国籍を持つ国民はTwitterにログインできない法律を作っちゃうとか?

すべて、非現実的です。ありえない解決方法を、頭の良い感じでしゃべっても、頭が悪く見えてしまうのは僕だけでしょうか。

唯一、現実的な方法が、官民で力を合わせて、SNS上の攻撃的な書き込みを規制すること、ではないでしょうか。匿名性を排除して、個人識別ができるようにする、とか。

実際に、国も、弁護団も、そう動き始めています。もし、本当の本当に、番組が、司会者が、視聴者が、そして故人が、悪いのであれば、国も、弁護団も今回のように動いていないはずです。テレビ局や、司会者や、故人を書類送検するはずです。そうしないのは、彼らが元凶ではないから。

つまり、元凶は「奴ら(書き込み連中)」で、決まりです。実は、もう、それで、決まりなはずです。

どうして、そんな当たり前のことを、長々と説明したかというと、そんな当たり前のことが、「全体のバランスを取るための、正論の逆張り」発言たちによって、ブレていくのが嫌だったからです。薄れていくのが怖かったからです。

頭の良さそうな人たちが、「テレビ局のせいだよ」と発言したとして、それが仮に正しいとして、それで、書き込みをした連中が、「そうだよな、オレ(アタシ)のせいじゃないよな、こんな頭のいい人たちが、諸悪の根源は、司会者だ、局だ、なんなら、世の中の風潮だ、時代のせいだって発言しているんだから」と逃げられる空気になるのが許せなかったからです。逃がしたくない。

少なくとも、僕たちは、バラエティ番組を、リアリティショーを、今まで、楽しんできたはずです。今になって、理屈で理屈を固めて、そこを責め立てるのか。それでもいいけど、子供の頃、先生や親に言われた「人の悪口を言って、傷つちゃダメです」の解決策の方がラクじゃないのか。

「法でどう規制したとして、ゼロにはできない」「でも、減らせられるよね?」

日本は共通認識で国自体が成り立っている。つまり、初対面の隣の人の言いたいことが、話さずとも、ある程度、わかる、わかりあえる文化です。だから「当たり前の会話」が退屈に感じるのでしょうか。ちょっと一風変わった意見で、インテリぶるのが、トレンドなのでしょうか。

ニューヨークは、たとえば、スターバックスに隣同士で座っている人間が、片方がアラスカの、片方が南アフリカ共和国の出身の可能性があります。片方がイスラム教の、片方がヒンズー教の教徒の可能性も普通にあります。片方が共和党支持者で、片方が民主党支持者、片方が大学教授で、片方が文字を読めない教育レベルの可能性もある。片方がカタコト英語で、片方が英語まったくダメな可能性も往々にしてあります。なので、まずは第一結論から話し合う、自分がどういう主張が、何したいのか、どう考えているのかを、まず最初にぶつけ合います。そこに、逆張りも、一風変わった意見のブランディングも、する余裕がない。

もう一回、言います。頭のよさげなロジックで、問題を複雑にするのは頭が悪い。

人によっては、リアリティーショーが今後も必要だと言う人も、司会者の面白おかしいMCのやり方が今後も必要だと言う人も一定数はいると思います(ちなみには僕は「テラスハウス」を見たこともないし、リアリティーショーが好きでも嫌いでもありません)

でも、人によって「匿名で、許されない誹謗中傷を書き込む」ことが必要だと言う人は一体、どれくらいいるでしょう。「共産主義や独裁国家じゃあるまいし、言論の自由は保障されるべきだ!」と言われるかもしれません。人を殺すまで、誹謗中傷を、しかも、匿名で書き込むことが、言論の自由というのならば、無名ながらも書くことを生業にしている僕から言わせると、その国は、その国の国民も、終わってる。もし、匿名でなければ、木村さんも他の解決方法があったはずです。匿名じゃなきゃ、もともと、書き込む勇気もなかった輩たちかもしれないけれど。

「解決策」がメインなはずです。「どこに責任の一端があるか探し出そうゲー~ムぅー!」ではないはずです。

「解決策」と「正当な責任追及」は、同じことじゃないか、と言われるかもしれませんが、実は違います。同じことじゃない。

解決できるのであれば、方法論は間違っていても、僕は問題ないんじゃないかと思っています。

解決できないのに、延々と正しい方法論を論じる方が、問題だと思っています。途中経過は関係ないんです。

わかりやすい例え話をします(いや、僕のわかりやすい例え話は、余計、わかりづらいって、よく言われるしな、、)。

たとえば、あなたが、ヘアサロンに行ったとします。バッサリ切って、かなりのショートヘアにしてと、注文したとします。スタイリストさんはプロです。完成形はスタイリストさんの頭の中には見えています。解決策をスタイリストさんは知っている。まずは鏡に向かって左サイドから、切っていきます。途中経過では、片方が長くて、片方が短い。当然です。そのつど、あなたはスタイリストさんに「うん、うん、いい感じ、でも、でも、髪型って、アタシは左右対称がいいから、当然、右サイドも同じように切ってね、切ってね、大丈夫だよね?ね?ね?」といちいち、カットされている途中で確認するでしょうか?大切なのは完成形で、途中経過の段階で「左右対称じゃなきゃダメだよね」という正論ではありません。まして、毎カットごとに、そのつど、そのつど、言及する必要があるでしょうか…。

いや、ごめん、余計わかりづらい、この例え話(やっぱ、例え話、ヘタだな、オレ)。

次、いきます。今の例え話は忘れてください(自分で書いていて、余計、自分の言いたいことがわからなくなってくるほどヘタだ。忘れて)。

あなたがすっごい肥満だとします。120キロ越えの。健康診断でもオールE。朝昼晩と、大量の炭水化物と甘いデザートで出来上がった体は、このままだと、心筋梗塞か脳卒中か糖尿病まっしぐらです。信頼できる主治医にとにかく、まずは体重を落とせ、と注意されました。「体重を落とすこと」があなたの目的です。病気にならない「解決策」です。あなたは今日から、日常食のショートケーキもポテトチップスもコーラもやめ、そして、当面は糖質制限を始め、軽めのジョギングをスタートしようと決意します。

そこに、頭の良さそうな、インテリジェンスあふれる話し方の栄養士の肩書きを持った女性が目の前に現れます。

「ただ、糖質は人類、ホモ・サピエンスにとっては、必要な栄養素でもあるのです。5大栄養素、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルと並び、摂らなくてはいけないモノであり、炭水化物をやめることによって、逆に老化が進むと、シンガポール大学の研究で証明されています。決して炭水化物を悪者にしないでください。太古より日本人は玄米という穀物で人体形成を行ってきた歴史があります。糖質を制限することは決して得策ではないのです」

直後、右から、テレビでもたまに見かける、有名な大学の教授が話しかけてきます。国際経済学の権威であるその教授が語りかけてきます。

「コカ・コーラという優良企業が、現代の資本主義に貢献してきた実績をご存知ですか。彼らは民間にかかわらず、多くの人々を雇用という形で救ってきました。確かにそのプロダクトは人体にとって有益とは言えないかもしれない。でも、彼らの経済を牽引した過去の貢献を棚に置いて、諸悪の根源扱いするのは、人類のエゴではないでしょうか」

そうしているうち、左から、タンクトップにムキムキの、さわやかインストラクターの登場です。

「素人がいきなりジョギングして、足腰を痛め、さらに運動嫌いになる様子を何人見てきたか。続かない無駄な努力はむしろ、マイナスに作用します。いいですか、体重を減らすためには、食事療法が最優先。せっかく買ったランニングシューズですが、捨ててしまいなさい!結果にコミットするうちに入会しないと運動しても挫折しますよ!」

最後に、うしろから、法衣を纏って両手を合わせた宗教家の登場です。

「いまのあなたのままで、いいのです。無理をしなくていいのです。あなたを愛してくれている人たちは、今のあなたを愛しているのです。ありのままで。今の現状を受け入れましょう。決して神様はあなたを見捨てません。必死に、ガムシャラに、無理する必要はないのです」

すべて正論です。4人とも。完璧なロジックで、正しすぎるくらい、正しい。

でも、その正しい理屈は、もともとの、あなたが「痩せて健康的な生活を送る」という目的に、得する情報だったでしょうか。途中の解決策の、手助けになるでしょうか。たとえ、それが100%正しかったとしても。

いいですか、120キロなんです。医学的に赤信号なんです。重箱の隅をつつく正論は今すぐ捨ててください。痩せる行為こそが、重要なんです。それが目的です。

いいですか、死んだんです。心無い言葉の刃で、しかも匿名の連中のストレス解消に、人が自ら死を選んだんです。インテリな正論は解決策の役に立たない。リアリティショーの歴史を紐解いて、欧米がどうとか、日本のエンターテイメントがどうとか、関係ない。もう今回のような悲劇を二度と起こさないのが目的なはずです。

ちょっと、感情的になって書いたので、いい文章じゃないかもしれません。

それこそ、頭のいい人たちに言わせると、穴だらけのロジックだとも思います。

僕が有名人なら、それこそ、的外れだと炎上する可能性も高いコラムです。

でも、人が死んだ時くらい感情的にならなくてどうするのか。それに、感情的になって書いたこととはいえ、あとで冷静になっても、言いたいことの本質は、僕は変わらない。

image by: 木村花Twitter

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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