アパレルのデジタルトランスフォーメーションはどうあるべきか?

 

3.販売員からショップスタイリストへ

私は小売業の主役が企業から個人に移行すると考えています。企業より個人、ブランドより個人、ショップより個人です。むしろ、個人がブランド化するのかもしれません。そうなるには、販売員のポジションを変えなければなりません。店頭で商品管理と接客販売するだけの販売員から、店内の商品をコーディネートして、情報発信する「ショップスタイリスト」に変わるということです。

ネットショップとリアルショップの双方を展開する場合、販売はネットショップで行い、ショップはメディアとしての性格を強めると思います。ショップスタイリストのミッションは個人メディアとして、情報発信してファンを集め、顧客へと誘導することです。

個人がSNSで情報発信をするには、店内での写真撮影を認めることも必要になります。アパレルショップでは、デザインが盗用されるからと店内を撮影禁止にしているところが多いのですが、これも再考の必要があるでしょう。

4.商品の店間移動と価格変更

アパレルにとって、いかに「プロパー消化率」を上げるかが利益のボイントとなります。アパレルは仕入れた商品在庫をいかに利益に換えるかが問われるビジネスだからです。百貨店は、決まった店舗面積からいかに利益を生み出すかを考えるので、「売り場効率(月坪)」を上げることがポイントになります。

商品の値下げをいかに少なくするか。半期に一度、集中的に半額セールをするのが良いか。あるいは、2割引き、3割引きと小刻みに値下げを行うのが良いのか。「しまむら」は、商品の店間移動をしながら、価格を変えて、消化していくと言われています。

これを行うには、徹底した単品管理と各店のデータ分析が必要です。店間移動は意外に難しい問題です。商品を最適な店舗に配置するには、売れない店から商品を引き上げ、売れる店に移動します。しかし、売れる商品を引き上げられるのは嫌なものです。そこで揉めることになります。ですから、商品の移動には明確なルール作りが必要になります。これもAI活用が生きる分野だと思います。

5.単品単位の売上進行予測

アパレルビジネスとは、予測ビジネスです。将来の需要を予測した上で、商品を仕入れ、展開します。プロモーションする場合も、常に消費者意識の変化を予測しなければなりません。営業は店別の売上予測、販売員別の売上予測が必要です。

企画にとっては、商品別の売上予測が必要になります。商品別の予測と管理ができれば、商品によって、販売期間を設定することができます。ロングセラーの商品、シーズンの立ち上がりに必要な商品、実需期に必要な商品、端境期に必要な商品等は、それぞれに販売期間が異なります。

商品の性格によって、期中にワゴンでセールをした方が良い商品も出てくるでしょう。あるいは、一定の消化率を達成したらセールにかけるという設定もできます。((下)に続く)

image by: Shutterstock.com

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