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なぜ三越伊勢丹は「オンライン接客」の取り組みを始めたのか?

百貨店といえば対面でのきめ細やかな接客が売りというイメージがありますが、老舗の三越伊勢丹がオンラインでの接客を始め話題となっています。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんは、百貨店に限らず、これまでは考えられなかった業種でオンライン接客が進んでいる状況を紹介。売り方のデジタルトランスフォーメーションによって売り逃しを防ぎ、売り伸ばす会社が増えていくと伝えています。

中小企業にデジタタルトランスフォーメーションは必要か?三越伊勢丹のオンライン接客に学ぶ

三越伊勢丹のスマホアプリ刷新

三越伊勢丹ホールディングス(HD)が、6月に刷新するスマートフォンのアプリに、オンラインでの接客機能を取り入れる、と発表しました。日本経済新聞によると、「今までは三越と伊勢丹とで別々だったアプリを統合して、店舗の情報などを共有できるようにする」のだそうで、「これに合わせてオンライン接客を取り入れる」とのことなのです。そして、「アプリを利用する時に、ユーザーが欲しい商品について、その場所の販売員やスタイリストチャット機能を使って、サイズや色などを問い合わせることができるようになる」そうです。そして、「気に入ればその場で商品を購入することもできる」とのこと。

なぜこの時期に、オンライン接客を始めたのか?

百貨店は小売業の中でも、特に伝統的なビジネスモデルです。特に高級店では、格式やしきたりにこだわったりします。なかでもやはり、対面での接客できめ細かくお客様をサポートする、というのがひとつの特徴でした。

確かに、化粧品売り場の各ブランド店では、しっかりと説明をしてくれる販売員さんがいますし、紳士服売り場に買いに行っても、自分に合う服や、今の流行の傾向、サイズなどを、こと細かく提案してくれます。

なので、これまでであれば、「そろそろIT化しなきゃ。オンライン接客とかどう?」という意見が出ても、「うちの店は、いいお客様が大半だ。伝統ある百貨店で、スマホで接客なんてどんでもない!」ということになっていたでしょう。

しかし、今回の新型コロナウイルスの感染拡大を機に、対面式の接客だけにこだわる、という風潮が減ってきたことが、三越伊勢丹の姿勢を変えさせました。デパートでは先日までは休業せざるを得ず、その間の売り上げも立たない、という状況でした。加えて、その前からインターネットでの通販も台頭してきています。

中小企業でもオンライン接客はできるのか?

このような背景があって、百貨店に限らず、小売業でこのようなオンライン接客に乗り出す企業が、増えているのです。愛知県刈谷市にある引っ越し会社の引越一番では、引越しの見積もりをLINEでのやりとりでできるようにしています。これによって、お客様も営業の人に来てもらう時に、家にいなければならない、ということを避けられます。

また、やはり愛知県にある「ケイワークス」という会社では、キャンピングカーの販売に、オンライン接客を導入しているとのことです。手順はシンプルで、まずはLINEで友達登録をして、専用フォームで予約。予約確認からチャットに入って、オンラインで接客できるようにしているとのこと。

化粧品や衣服よりもさらに高額のキャンピングカーでも、このようにオンラインで説明をしたりすることをされているのです。ホームページによると、「自宅にいてもショールームに来ていただくのと、同じ体験をしてもらえます」とあります。

確かにお客様からすれば、遠くていきづらいとか、時間とお金がかかってしまう、という不便さを解消することもできます。今は、動画でもテレビ電話的にできるので、顔を見ることもできて安心しますよね。

売り逃がしを防ぎ、売り伸ばすためのDX

このように、リアルでやっていたことを、デジタル技術に置き換えることを、デジタルトランスフォーメーションと言います。デジタルへの移行は、接客を対面から移行するということだけではなく、ビジネスの場面では多くみられます。

リモートワークにソフトウエアを導入することや、それによって費用を削減できること、キャッシュレスもそうですし、印鑑文化をなくしていくことも、広い意味ではデジタルトランスフォーメーションですよね。この流れは大企業だけではなく、中小企業にも来るはずです。その時に考えたいのは、お客様の心持ちです。

お客様の利便性を上げていくのにはデジタルで、しかし、安心感や温かみといったことは、やはりデジタルよりリアル・対面の方が伝えられます。さじ加減やバランスが大事になってきますよね。

マーケティングの基本は、お客様を理解すること。そして、マーケティングの目的は、お客様を「動かす」こと。リアルでの販売にこだわっていたり、IT化の波に遅れをとったりしていると、大きな「売り逃がし=機会損失」になってしまいます。この機会に、売り方のDXで売り伸ばしていく企業も増えていくでしょう。

image by: Shutterstock.com

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