中国の暴挙。香港「国家安全維持法」を日本の各紙はどう報じたか

 

瀬戸際の香港民主派

【読売】は3面の解説記事「スキャナー」。見出しから。
香港の自由 瀬戸際
国家安全法
民主派 相次ぎ解散
習氏強権 スピード成立

●uttiiの眼

《読売》は、解説記事の3分の2近くを、香港民主派の動きに充てている。取り締まりを警戒した各団体は解散を表明、「言論や集会などの自由の下で活動してきた民主派は、瀬戸際に追い込まれつつある」(リード)として、「勇気を振り絞り、抹殺されるまで戦う」とか「生きてさえいれば希望がある」といった、指導者たちの悲痛な声を伝えている。

国家安全法の下では、場合によっては中国本土に連行される可能性があること、今後は「中国化」を受け入れる層と受け入れない層との選別が進められると思われること、民主派が行ってきたような抗議運動は中国共産党や中国政府に対する挑戦と見なされること、など、民主派がおかれている窮状が説明されている。

当面、9月の立法会選挙が焦点となるが、国家安全法は議員や公務員に香港の憲法(基本法)に忠誠を誓うことを義務づけており、今回の新法が基本法に加えられているため、新法に反対すれば立候補自体が認められない可能性があるという。民主派の中には、英国に拠点を移そうとするもの、また「地下組織化」を呼び掛ける書き込
みもネット上には増えているという。

7月1日の返還記念日恒例のデモは、新型コロナウイルス対策を理由に許可されなかったが、民主派議員らはデモを呼び掛けた。その動きに対して中国政府は、民主派を威嚇するように、中国軍香港駐留部隊の陸海空3部隊による合同訓練を、香港で行ったという。

記事の残り3分の1は、「毛沢東の後継者」を任ずる習近平主席が容赦なく「一国二制度」を攻撃してきた過程が解説されているなか、注目すべき記述があった。中国では7月後半以降、党の指導者や長老が集まり、重要案件を巡って非公式に意見の調整を行う「北戴河会議」が開かれる見込みだという。習氏が国家安全法の制定を急いだのは、「会議の前に党内でも批判が強かったとされる香港問題の早期決着を図る思惑があった」という。

中国共産党の指導部あるいは長老たちの中に、習氏の香港政策に批判的な部分が存在している可能性がありそうだ。ただし、「異論」といっても、「もっと強硬にやれ!」ということかもしれないが…。

マカオのようになる香港

【毎日】は3面の解説記事「クローズアップ」。見出しから。

香港の自由 暗転
市民萎縮 国安法恐れ
中国「反乱の芽」摘む

●uttiiの眼

《毎日》も《読売》と同様、香港における言論の自由や民主主義の圧殺の懸念を中心に解説をしている。

リードでは「香港の自由や繁栄を支えた「1国2制度」の崩壊は、既に始まっている」として、30日のデモが警官隊によって蹴散らされた状況、民主派指導者たちの脱退と団体自体の解散、そして、既に海外に「逃亡」した幹部もいるとする。そうした幹部はSNS上で「海外に拠点を置く勢力が香港独立を達成するまで運動を続け
る」と書き込んだが、《毎日》は「運動の継続は事実上、困難な状況に陥っている」とする。

《毎日》は最後に、マカオの例を引いている。99年にポルトガルから中国に返還されたマカオの政府は、自ら国家安全法を施行。まだ摘発例はないそうだが、マカオ立法会の民主派議員は「首の真上に刀が吊されている感覚だ。市民は恐怖心から過度な自己規制をするようになり、マカオで言論の自由は事実上なくなった。香港も同
じ運命をたどるかもしれない」という。

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