中国の暴挙。香港「国家安全維持法」を日本の各紙はどう報じたか

 

香港を震え上がらせる法律

【東京】は2面の解説記事「核心」。見出しから。
香港 瀕死の民主派活動
国家安全法が成立
中国の強権的介入 必至
「習主席の来日に重大な影響」
協定維持 トランプ氏の本音
「香港より対中貿易合意」

●uttiiの眼

《東京》も、《読売》《毎日》と同様、民主派の窮状から書き起こしている。リードでは、今回の国家安全法成立によって、「昨年から続く抗議活動も事実上、継続困難な状況で、共産党独裁の中で何とか保たれてきた香港の自由は、瀕死の危機に直面している」とある。

民主派に対する強硬姿勢は既に見えていて、中国政府の香港マカオ事務弁公室の声明では、「中国政府と香港政府の関係部門は徹底的に法を執行し、国家安全を脅かす活動を震え上がらせ、法律の威力を見せつける」としているという。

林鄭月娥行政長官は、香港警察内に新設する国家安全部門に150人の警官を配備すると表明。また香港政府に新設される国家安全維持委員会の人事なども既に報じられているという。親中派の前行政長官は、同法違反者の逮捕を効率的に行うため、最高で百万香港ドルの懸賞金を出すと明らかにしたという。

注目すべき記述は2つ。

1つは亜細亜大学の遊川和郎教授のコメント。89年の天安門事件では軍を投入したが、今回は法による弾圧で「デモを強制終了に持ち込んだ」というもの。しかし、条文も国民に明らかにされないまま“可決”される法とはなんだろうか。少なくとも議会制民主主義の形だけは維持してきたわれわれの常識とは別次元の「法」は、暴力
装置による威嚇を背景にした、権力の命令に他ならない。

もう1つは、解説の隣の記事。見出しに「習主席の来日に重大な影響」とあるのは、河野太郎防衛相が語ったとされる言葉。河野氏は84年の中英共同宣言を念頭に「国際社会への約束が守られていない。一方的な現状変更の試みだ」と中国政府を非難したという。

これが安倍内閣の方針となるのかどうかは分からないが、注目しておくべき要素の1つだろう。

image by: Jimmy Siu / shutterstock

内田誠この著者の記事一覧

ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 uttiiの電子版ウォッチ DELUXE 』

【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

print
いま読まれてます

  • 中国の暴挙。香港「国家安全維持法」を日本の各紙はどう報じたか
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け