独メルケル首相が米トランプに見切り。日本がとるべき道は何か?

 

メルケル首相の決断で、世界の構図が決まる

2015年のシリア難民の大量受け入れで指導力を失っていたドイツのメルケル首相は、コロナ感染症の初動対応が評価され、支持率が上昇して力を取り戻した。その勢いで、メルケルはマクロン仏大統領との会談で、「新型コロナで疲弊したEU加盟国を救うために、5000億ユーロの基金(復興基金)を立ち上げる。その原資は初のEU国債を発行して集める。以上を欧州委員会に提案する」ことで合意した。

ドイツを中心として、他の加盟国のために低利で起債しようということであり、インフレを恐れて、財政赤字につながる南欧諸国救済に反対していたメルケル首相がコペルニクス的転換をしたことになる。ドイツが欧州の盟主としての役割をやっと演ずるようである。

一方、トランプ大統領のドイツたたきは執拗で激しい。「ドイツは巨額の対米黒字にもかかわらず、ロシアから天然ガスを輸入し、米国のシェールガスは買わないし、国防費が2%以下でロシア軍対策は3万5000人の在独米軍に頼り、その費用は十分支払わない」という。事実、2019年のドイツの国防支出は、NATO目標2%に対し、GDP比で1.38%と推定されている。

対して、メルケル首相は、6月に予定されていた米国主催のG7首脳会議を欠席するとしたことで、会議自体が延期になってしまった。そして、それに怒りトランプ大統領は、ドイツから米軍9500人を撤退するとして、米独間の不仲説を裏づけることになった。

ドイツとフランスは、EUを足場に「米国でも中国でもロシアでもない」勢力で民主主義を守る中軸勢力となることを宣言したようなものである。これは、メルケル首相がいう「米国衰退後の世界を見据えた対応」の一環である。米国に頼らないドイツを作ることにしたようだ。

この状況を予測して、欧州連合の政策執行機関である欧州委員会の首班(欧州委員長)に、エースである前ドイツ国防相のウルズラ・フォン・デア・ライエンを送り出している。徐々にEUを中心にしてドイツも含めて統合化させる方向で動き始めたようだ。

しかし、メルケル首相は、復興基金についてのEUの次期予算を巡る交渉で、加盟国の隔たりは依然大きいと語った。まだまだ、その道のりは遠いが、着実に米国離れを行い、イタリアなどの中国依存国家を再度EUに統合して、民主主義の中軸勢力にするようである。日本は、豪州、台湾、インドなどとアジアでの民主勢力を糾合して、ドイツを中心とするEU諸国と連合して、民主主義を守る必要がある。

このドイツの方向を確認して、ロシアもロシア国民投票で改憲を承認され、プーチン大統領の長期続投を可能にして、世界の構図の中で、ロシアを強国に位置づけようとしている。ロシアは、世界の指導国家の1つになることを目指しているので、ドイツなどEUと協力できる道を探ると見る。

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