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コラボマスクも好評完売。カインズに学ぶ「行く理由」の創り方

7月初旬、ホームセンターのカインズがジーンズのエドウインとのコラボで製品化した「EWD マスク」がすぐに完売し話題となりました。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんは、カインズが以前から多くの企業とコラボしてきた実績を紹介。使いやすさが評判のアプリ開発など、実店舗やECサイトに「行く理由」を創り出す「IT小売業」戦略には、学べることがあると伝えています。

なぜ、カインズはマスクを出したのか?~イノベーションに本気で取り組む、カインズのイノベーションハブ

ホームセンター大手のカインズが、ここのところ面白い動きをしています。新型コロナウイルスの拡大の中で見えてきたのが、企業は1つの事業に偏らず、「事業ポートフォリオ」を組み、不測の事態に陥った時にも、落ち込まない事業を持つことで、収益を確保しなければならないことです。バランスよく経営ができるよう、準備をしなければなりません。

そのためには、新しい事業を立ち上げる力や、今の事業を常に改善していける力を、組織の中に蓄えなければなりません。今回は、このような力を付けていくためには、何をすればいいのかを、カインズの事例から紐解いていきます。

なぜカインズはエドウインとコラボのマスクを出したのか?

先日も、ジーンズのエドウインと、コラボ商品で出したマスクが話題になっていました。見た感じもジーンズのような色合いの生地を使っていて、ちょっとかっこいい感じです。

ちなみにブラックもあるそうで、さりげなく、エドウインのロゴも入っています。本物のジーンズ生地を想像すると、なんとなくゴワゴワしていそうですが、肌にあたる内側の部分には、柔らかくてサラッとした、風合いのある生地を使用しているとのこと。

マスクが耳に当たるゴムがやや太めになっているため、耳が痛くなりにくいように配慮してある上に、立体縫製なので呼吸もしやすく、空気の通りもいいため蒸れにくくなっているそうで、メガネが曇りにくいという特徴があるそうです。私もメガネをしているので、こんな工夫があると重宝しますよね。

ITメディアニュースによると、使い捨てのマスクは供給もかなり進んで、品薄感も減ってきたそうですが、「高品質なマスクの需要は依然として高く、品切れ状態になっている商品も多い。そのため、国内の大手アパレルなどが、次々とマスク市場に参入している」ということです。これは、ユニクロが発売した「エアリズムマスク」も、同じ流れですよね。

PBで“行く理由”を創り出すカインズ

カインズは、ホームセンターとして業界でも大手なのですが、このように、自社で製品開発をして、自社の店舗やインターネットサイトで販売する、いわゆるプライベートブランド=PBを開発しています。もともとカインズブランドのネーミングで、洗剤や除菌グッズなど、家庭用品周りのものを多く扱っています。

このような自社開発、自社ブランドのPBだけではなく、カインズデザイン展と称して、メーカー21社とコラボレーションした、限定デザインの商品を中心に、オリジナルの日用品を販売しています。「毎日のシーンをたのしく」をテーマに、くらしに最も身近な日用品にちょっとした工夫を加え、くらしを楽しく、心地よくするデザインを提供します、というコンセプトでやっているとのこと。

このホームページに行くと、カラフルなデザインの商品がたくさん紹介されていて、思わず買いたくなります。アサヒビールとのコラボでの、スーパードライ「燻製」パックとか、キリンビバレッジとのコラボでの「アレンジティーセット」など、家で楽しむことができる商品を限定として販売しています。「そこでしか買えない」という特徴があるため、カインズの店舗や、インターネット通販のページに行きたくなります。

カインズの顧客視点でのサービスが生まれる理由

カインズでは、PB以外にも、アプリが好評です。使い勝手が良く、新しい機能も早く多く追加されていることなどが、ユーザーの間でも話題になっています。10万種類以上ある商品からユーザーが欲しい商品を探す時に、即座にアプリでわかるようになっています。

また、店内で店員さんが、商品タグのついていないレンガや壁紙のようなアイテムの価格などを、画像で調べることができるようにもなっているそうです。

便利なアプリをスピードもって開発していくことを可能にするために、表参道にイノベーションハブという施設を作り、そこで社内でアプリを作成しているため、「お客様が困っているからこういう機能を追加して欲しい」といった、社内からの要望を素早くできるようにしているそうです。PBにしてもアプリにしても、かなり独自の路線です。

ホームセンター小売業界では、ここ10年横バイが続く中、他と同じことをしていてはいけない、という危機感をカインズは持っていたそうです。そこで考えたのが、「IT小売業」という戦略。カインズによると、自社を単なるホームセンターと捉えずに、「IT小売企業」と定義して、お客様の「ストレスフリー」「パーソナライズ」「エモーショナル」につながる、“買い物体験の価値向上”を進めているとのこと。

ものを売る会社、というだけでは、扱うものも似通ってきて、最後はどうしても価格競争になります。小売店、ではなく、お客様が実際に商品を使う時に、「何が提供できるのか」を考える会社だという意味でしょう。

「イノベーションを起こす」、ということは、簡単にはいきません。カインズから学べることは、

という点です。その意味で大変参考になる事例でした。

image by:ARICA13 / CC BY-SA 

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