米中対立激化で一気に進む開戦シナリオ。その時日本はどうする?

 

両国の対話の実現と仲直りが両国のEU加盟の最終条件となっていますが、このところ、バルカン半島での主導権争いにアメリカはもちろん、ロシア、中国、そしてトルコが登場しており、【バルカン半島の安定は、欧州全体の安定に欠かせない】との認識を強めている欧州委員会にとっては、その地位を確立するためには、今のところ、アメリカとの緊密な協力が必要との認識から、対中脅威論に乗っかる可能性がこれまで以上に高まってきています。

日本については100日にわたって連続している【中国海軍の艦船および海警局の武装艦船による尖閣諸島海域と沖ノ鳥島周辺への領海侵犯(侵入)への対応】が急務です。

本件については、コロナ以前までは、時折日中関係の悪化と並行して起きていましたが、外交的な抗議のやり取りで終わることが多く、緊張関係の極限の高まりまではエスカレートしてきませんでした。ただ、連日の抗議にも関わらず、より武装度を高めた艦船による連日の威嚇行為と領有権問題の顕在化は、一線を超えた威嚇行為と理解することが出来ます。

これまでアメリカ政府も度々尖閣諸島問題には懸念を示しつつも、“基本的には日中両国間で解決すべき問題”として強いプッシュはしてきませんでした。

しかし、米国内での中国脅威論と全面的な中国否定の流れが強まり、東シナ海での中国の権益拡大を許すまじ!との立場と、絶対に中国包囲網に必要とされる同盟国の日本の権益保全という観点から、積極的に日本寄りの介入を行うようになっています。

南シナ海問題と東シナ海問題を両睨みするという意味で、空母攻撃群の中核をなすロナルド・レーガンとミニッツという2空母を展開していますし、在沖縄米軍の配備のアップグレードも進め(グアム基地との間で)中国への軍事的な対峙に備えています。

尖閣諸島問題に絡み、もし日本の航空自衛隊の戦闘機や海上自衛隊の艦船と、中国の艦船などとの間に偶発的な衝突でも起きた場合には、一気に日本近海で軍事的な緊張が高まることになるでしょう。それも日中二国間ではなく、アメリカを交えた比較的本格な対峙に。

その様子をつぶさに感じているのが、北朝鮮の金正恩体制とそれを支える妹の与正氏による“2頭体制”でしょう。コロナの影響もあって国際情勢上、影が薄くなっていた北朝鮮ですが、このところ韓国への辛辣な批判と軍事的な脅威の表明をはじめ、最近では【来るべき危機に向けて核・ミサイル戦闘能力を高め、核による抑止力を高める】と表明して、アジア・太平洋地域、特に北東アジア地域における米中の対峙による緊張をうまく用いているような気がします。

とはいえ、今のところ、トランプ大統領は北朝鮮とのディールには関心がないようですが、もしかしたらボルトン氏が言うように4回目の会談に臨むというサプライズに行くか、もしくは、歴代のアメリカ大統領が支持率急回復のために行ったように戦争に打って出る、つまり北朝鮮への直接的な軍事的行動を起こす可能性があります。

今のところ、以前お話ししたように、朝鮮半島を舞台にした米中直接対決は起こらないと見ていますが、昨今の米中対立の政治化の傾向に照らし合わせた場合、南シナ海での衝突を避けることが出来たとしたら、代わりに朝鮮半島が衝突の場になるかもしれません。

非常に不確実性の高い情報なのでこの辺りでやめますが、実は米中両国の政府内では、ついにその可能性が議論され、プライオリティが上がったそうです。どのような帰結になったとしても、米中両国と“良好な”関係を模索する日本としては、米中対立の激化は非常に懸念すべき事象です。

これまでのところ、非常にデリケートなバランスの下、賢明かつ巧みな外交を行うことで米中の間に立って、いわゆるバッファー(緩衝材)的な役割を果たしていると私は考えますが、そう遠くないうちに【どっちにつくんだ】とサイドを選ばされる事態になるでしょう。

その際にはどう対処するのか。コロナ禍で非常に大変なかじ取りを多方面で行わないといけない状況ですし、そのどれもが国民の生命にかかわる内容だと考えますが、迅速に何パターンかの方針を用意しておく必要があるでしょう。

もし米中が自滅戦争を戦い、それが核を用いた武力衝突になるような最悪のシナリオの場合、両国の核ミサイルは場合によっては日本列島の真上を飛び交うことになるわけですから。

私が今回書いた内容は、ただの私の妄想でしょうか。そうであることを切に願います。

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