働いたのに年金が減らされる?泣き寝入りしないための年金受給術

 

さて、この女性は厚生年金の支給開始年齢は61歳(令和2年11月)ですが、一旦ここで61歳前月までの記録で年金を請求により支給する。

平成13年11月から令和2年10月までの228ヶ月間は厚生年金。

なお、平成13年11月から平成15年3月までの17ヶ月間の平均標準報酬月額は12万円とし、平成15年4月から令和2年10月までの211ヶ月間の給与と賞与を合計して平均した平均標準報酬額は35万円とします。

・令和2年11月の61歳からの老齢厚生年金(報酬比例部分)→12万円×7.125÷1000×17ヵ月+35万円×5.481÷1000×211ヵ月=14,535円+404,772円=419,307円(月額34,942円)

ところで、この女性が61歳時点での夫(昭和28年9月5日生まれ。平成30年9月に65歳到達)の年齢はすでに65歳を超えています。なので、65歳からは配偶者加給年金390,900円が夫の老齢厚生年金に加算されていた。妻が年金を貰い始めた事で、何らかの影響があるかもしれないと思っていたが、夫の年金には特に何も変化は無し。

しかしながら女性は61歳以降も継続雇用で働き続ける事になった。最近は70歳まで働くというような世間の流れになっていたが、体力に自信が無かったのでせめて65歳までには辞めるつもりだった

61歳以降は標準報酬月額20万円で働くとします。賞与はなし。

さて、年金受給後も働き続ける事で何か変化は出てくるのか。

まず62歳(令和3年11月)時点で辞めるとする。そうすると退職した月の翌月からは年金額が再計算される(退職改定)。

・退職改定により増額する年金→20万円×5.481÷1000×12ヵ月=13,154円
なので419,307円+13,154円=432,461円となる。

ところが、62歳時点で61歳時点の厚生年金期間228ヵ月+12ヶ月分=240ヵ月となってしまったので、夫の配偶者加給年金は令和3年12月分から全額停止となる。

退職改定で13,154円増えたのに390,900円が消し飛んだ形になりましたね^^;

更に妻が65歳になった時は夫の配偶者加給年金から振り替えられる振替加算26,988円(年額)も、厚生年金期間が20年以上ある年金を貰えてるから加算されない。

振替加算額(日本年金機構)

62歳から65歳までは、この妻は432,461円(月額36,038円)の年金を受給する。

【※参考】
62歳退職後は妻は失業手当を受給すると思いますが、失業手当受給中は妻の老齢厚生年金は全額停止するので、全額停止中は夫の配偶者加給年金は支給される。

65歳になると老齢基礎年金と、老齢厚生年金の差額加算も発生する。

・老齢基礎年金→781,700円÷480ヵ月×(任意加入77ヵ月+3号187ヵ月+60歳前月までの厚年216ヵ月)=781,700円
・付加年金→200円×77ヵ月=15,400円
・老齢厚生年金(差額加算)→1,630円(令和2年度定額単価)×240ヵ月ー781,700円÷480ヵ月×216ヵ月(20歳から60歳までの国民年金同時加入となる厚年期間)=391,200円ー351,765円=39,435円

よって、年金総額は老齢厚生年金(報酬比例部分432,461円+差額加算39,435円)+老齢基礎年金781,700円+付加年金15,400円=1,268,996円(月額105,749円)

じゃあ61歳以降も働き続けると62歳で夫の配偶者加給年金が支給されなくなる事を考えると、62歳になる前に退職するしかないのか(240ヵ月にならないためには少なくとも令和3年10月30日までに退職。10月31日に退職すると10月まで期間がカウントされてしまって240ヵ月になってしまう)。

まあ、239ヵ月で退職すれば夫の配偶者加給年金は、妻が65歳になるまでは止まりません。更に65歳になれば振替加算26,988円も付く。

とはいえそう都合よく退職出来ない事もありますよね。そういう時は62歳以降も退職せずに65歳まで働き続ければ、妻が65歳になるまで夫に配偶者加給年金が支給され続ける事になります。

え?厚生年金期間が240ヵ月になったら配偶者加給年金止まるでしょ?というのはやや誤解があります。さっきの退職改定で「年金額を再計算」して、「240ヶ月分の厚生年金」を貰い始めると配偶者加給年金が止まるんです。

退職せずに働き続けると「年金額を再計算できない」ので、再計算しない限りは61歳時点の228ヶ月分の厚生年金を貰い続ける事になる。

つまり62歳になっても退職せずに在職し続ける限りは配偶者加給年金は止まらないので、65歳までは安心して働いてもらって構わない。65歳まで退職する事無く働くとすれば、夫の配偶者加給年金も停止すること無く、妻の年金もできるだけ増やす事が出来る。

・61歳から65歳までの48ヵ月働いた場合の老齢厚生年金(報酬比例部分)→20万円×5.481÷1000×48ヵ月=52,618円増額。

・老齢厚生年金(差額加算)→1,630円×276ヵ月(平成13年11月から65歳前月の令和6年10月までの厚年期間)ー781,700円÷480ヵ月×216ヵ月(20歳から60歳までの国民年金同時加入の厚年期間)=449,880円ー351,765円=98,115円

よって、65歳まで働いた場合の妻の年金総額は老齢厚生年金(報酬比例部分419,307円+退職改定52,618円+差額加算98,115円)+老齢基礎年金781,700円+付加年金15,400円=1,367,140円(月額113,928円)

振替加算は65歳から20年以上の厚生年金が貰えるようになるので加算されない。振替加算がどうしても欲しいなら令和3年10月30日までに退職するしかないですね(笑)それでは今日はこの辺で!

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
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