森友問題で自殺の赤木さん妻が明かす、責任者がつい漏らした本心

 

この報告書にカラクリがあるのは言うまでもない。安倍首相発言を佐川局長がどのように受けとめたのか。佐川局長の「記録はない」という国会答弁や、理財局の部下たちへの「記載のある文書を外に出すべきではない」発言は、安倍首相への忖度によるものか、それとも官邸から働きかけがあったのか。佐川局長は総務課長らに文書の書き換えを具体的には指示していないというが、指示していないのなら、「具体的には」は不要だろう。肝心なところが省かれたり、ボカされたりしている。

むろん、これで雅子さんが納得できるわけがない。著書「私は真実が知りたい」に、伊東氏が2018年10月28日、調査報告書について説明するため赤木さん宅を訪れたときの会話内容が書かれている。雅子さんがICレコーダーで録音していたものだ。雅子さんが、安倍首相の発言が文書改ざんに関係があるのかどうかを問いただすと、伊東氏はこう話した。

「国会が、まぁある意味延長したのは、あの発言があったから。野党は安倍さんの首を取りたくて…あれでまぁ炎上してしまって。で、理財局に対するいろんな野党の『あれ出せ、これ出せ』っていうのもですね、ワーって増えているので、そういう意味では関係があったとは思います。炎上しなければ別にそんなに、何か無理しなくても…」

安倍首相の国会発言があって、野党が財務省に資料を出すよう激しく騒ぎ立てた。佐川局長はひとまず「ない」と突っぱねたが、昭恵夫人の関与をうかがわせる記載があるなら、無理にでも書き換えさせておかねば、と考えた。そういう意味で、首相発言と文書改ざんは関係があったということなのだろう。

首相発言を受けて財務省理財局が改ざんに動いたというのは、もはや世間一般の見方ではあるが、この伊東発言によって初めて裏付けられたと言っていいのではないか。

だが、関係があることはわかったにせよ、どのように首相発言から改ざんに至ったのか具体的な経緯がいま一つはっきりしないのも確かだ。

首相発言のあとの一連の流れ。佐川氏が「記録はない」と答弁し、本省の指示で近畿財務局が改ざん作業を進める。これが、「阿吽の呼吸」や「忖度」のたぐいで、黙々と進められるようなことが果たしてありうるだろうか。

17年2月17日の衆院予算委員会。安倍首相の発言を聞いた佐川氏は驚愕したに違いない。佐川氏は鑑定価格9億円余の国有地を8億円以上値引きして森友学園に売却した件で、野党の質問攻勢を受け、国会対応に苦慮していた。そこに、「関係していたら辞める」と首相が言い放ったのである。野党の追及がさらに強まるのは火を見るよりも明らかだった。

たまたまこの日は首相発言に関する佐川氏への質問はなかったが、今後の国会対応を思うと、ほっとしているヒマはない。佐川氏は、すぐに部下に安倍首相夫妻の関与をうかがわせる文書があるかどうか、調べさせたのではないか。もし、そんな文書が流出したら大騒ぎになり、理財局長としての自分の立場も危うくなる。

案の定、不都合な文書があった。近畿財務局が作成した決裁文書だが、当然、本省も共有している。

◇平成26年4月28日 (森友学園との)打ち合わせの際、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください。』とのお言葉をいただいた。」との発言あり。

これはマズイ、と佐川局長は思ったはずだ。同年2月24日の衆院予算委では、「交渉記録あるいは面会記録、全て残っておりますね」と共産党の宮本岳志議員から質問され、「交渉記録というのはございませんでした」と答弁してその場をしのいだ。「ある」と答えたら「出せ」と言われる。「ない」で通せればいいが、昭恵夫人の記載箇所をそのまま残しておくのは不安だっただろう。

とはいえ、公文書改ざんが佐川氏の独断だったというのは、いささか早計である。総理の不用意な発言をカバーするため、順調に出世してきた幹部官僚が自発的に違法行為を指示するとは思えない。

おそらく、不都合な決裁文書の存在を確認するや、佐川氏は当時の政務担当総理秘書官、今井尚哉氏(現・首相補佐官)に知らせ、取り扱いについて判断を仰いだのではないかと、筆者は疑っている。

今井氏は総理夫人付きの職員を通して昭恵夫人をサポートする立場だった。影の首相とまでいわれる凄腕の秘書官だ。首相に不利になる文書があると聞いたら、改ざんしろとは言わないまでも、「何とかしろ」と迫ったに違いない。そうなると、佐川局長は逆らえない。上昇志向の強い典型的高級官僚のサガである。

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