森友問題で自殺の赤木さん妻が明かす、責任者がつい漏らした本心

 

文書改ざんの指示は、理財局国有財産審理室の杉田補佐から近畿財務局に伝えられた。赤木俊夫氏が書き残した「手記」に以下の記述がある。

◇元は、すべて、佐川理財局長の指示です。局長の指示の内容は、野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。…杉田補佐が過剰に修正箇所を決め、杉田氏の修正した文書を近畿局で差し替えしました。

近畿財務局で杉田氏から修正指示を受けたのは池田靖統括官である。池田統括官は森友学園に国有地を売却したさい、交渉の責任者だった。赤木氏は交渉当時は他の部門にいて、いきさつを知る立場にはなかったが、その後、異動して池田統括官の部下になっていた。

池田氏は改ざんの作業をほとんど赤木氏に押しつけたとみられる。赤木氏は抵抗したが、近畿財務局長はゴーサインを出した。「手記」に、ありありとその様子がうかがえる。

◇楠管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局中村総務課長をはじめ田村国有財産審理室長などから楠部長に直接電話があり、美並近畿財務局長に報告…美並局長は、本件に関して全責任を負うとの発言があったと楠部長から聞きました。…本省からの出向組の小西次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ。」と、調書の修正を悪いこととも思わず…杉田補佐の指示に従い…

赤木氏の苦悩を見続けた雅子さんは、率直な思いをありのまま「私は真実が知りたい」に書き綴った。

◇トッちゃんは、自分が罪に問われることを恐れていた。ことあるごとに「大変なことをさせられた」「内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた」「最後は下っ端が責任を取らされる」「ぼくは検察に狙われている」とおびえていたことを、よく覚えてる。

2018年3月2日、朝日新聞が「森友文書 書き換えの疑い」とスクープ記事を掲載。スマホでこの記事を見た雅子さんは「この人のやらされたこと、これだったんや」とすぐわかった、という。

3月7日、赤木俊夫さんは「雅子へ これまで本当にありがとう ゴメンなさい 恐いよ、心身ともに滅いりました」との遺書を残し、自宅で首をつって亡くなった。若い二人の部下には改ざんを手伝わせず、一人で背負いこみ、苦し
みぬいた末の死だった。

雅子さんから見れば、俊夫さん一人を犠牲にして、財務省と近畿財務局は組織を守ることに汲々としてきた。上司たちが次々と弔問に訪れたが、遺書を雅子さんが世間に公開するのを心配したり、メディアを避けるべきというアドバイスをするばかりで、真実は何一つ語られなかった。

なぜ夫は死ななければならなかったのか。雅子さんは、財務省の内部調査ではなく、第三者による客観公正な調査を求めているが、安倍首相や麻生財務大臣に応じる気配は全くない。

だからこそ、政官の巨大権力に押しつぶされそうになりながらも、真相解明を求める35万人の賛同者に励まされ、雅子さんは勇気をふりしぼって、大阪地裁に損害賠償請求訴訟を提起したのだ。

冷淡で不誠実な安倍官邸と保身官僚たち。正しくありたいと願う一人の職員が自ら死を選んだというのに、素知らぬ顔でウソをつき、文書を改ざんしてまで、責任を免れようとする。権力の堕落は目を覆うばかりだ。

image by:安倍晋三公式Facebook

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