緊迫の尖閣。日本が学ぶべき「対中外交」成功した国、失敗した国

 

成功したベトナムモデル

一方、フィリピンとは反対に、徹底抗戦しているのがベトナムです。世界一の戦略家エドワード・ルトワックさんは、『戦争にチャンスを与えよ』の中で、こう書いています。

2014年に起きたベトナム沖の海底油田をめぐる事件が、その典型である。当時の中国は、船の数で圧倒すれば、ベトナム側は引き下がる、と考えた。

ところが、実際には、戦いは、海から陸に移り、中国人の旅行者や商店に対する暴動や焼き討ちが起こり、中国側は、ベトナム沖の海底油田からの撤退を余儀なくされた。

ベトナム側が態度で示したのは、「これは子供の遊びではない、戦争だ」ということだ。海に40隻浮かべたから勝てるような遊びではない、というのだ。(84p)

どうですか?中国に比べれば、フィリピンもベトナムも小国です。フィリピンは、早々に敗北宣言し、ベトナムは、戦いました。そして、フィリピンは、中国の属国に堕ち、ベトナムは勝利したのです。

では、日本はどうする?

では、具体的に日本はどうするべきなのでしょうか?ルトワックは、『戦争にチャンスを与えよ』の中で、「中国が尖閣に【漁民上陸作戦】をする可能性がある」と指摘しています。

なぜ中国は、「大量の漁船が日本領海に侵入すること」(彼らは、中国の領海と主張)、「日本には、漁船の大群を止める権利がない」と宣言しているのでしょうか?近々、「尖閣漁民上陸作戦」を実行しようとしているのではないでしょうか?

では、ルトワックは、「どうすればいい」と書いているのでしょうか?

今やるべきことは、一体何だろうか。それは、日本が先手を打って、魚釣島で物理的プレゼンスを示すことだ。目的は、中国を挑発することではない。日本は、尖閣の実効支配を明確に中国側に伝えるためにこそ、人員を配備すべきなのだ。これによって「あいまいさ」を排除し、中国が「漁民」を上陸させることを防ぐのだ。(65p)

皆さんご存知のように、私は、常に「穏健派」でした。しかし、危機が目前に迫ってきている今、ルトワックさんの考えを支持します。具体的にどうやるべきなのでしょうか?

まず、ポンペオ国務長官にお願いし、「尖閣は日米安保の適用範囲だ。日中で軍事衝突が起これば、我が国も介入せざるを得ない」といってもらいます。

ちなみに中国は、2010年の「尖閣中国漁船衝突事件」の時も2012年の「尖閣国有化」直後も、尖閣侵攻を計画していました。しかし、いずれもアメリカ政府高官が、「尖閣は日米安保の適用範囲」と発言したことで引き下がった。だから今回も、効果があるかもしれません。(ここ8年で、中国は、さらに強大になっていますが。)

次に、アメリカに、「尖閣周辺で合同軍事演習をしてほしい」と依頼します。日米が合同軍事演習している期間中に、海上保安庁あるいは海上自衛隊員が、尖閣に上陸する。そのまま、常駐するのです。魚釣島には1940年まで日本人が住んでいました。だから、今でも住むことは可能なはずです。

結果どうなるでしょうか?中国は、激怒して侵攻してくる可能性があります。侵攻しなくても、日中関係は戦後最悪になるでしょう。しかし、既述のように、中国が「漁民」を上陸させ、尖閣強奪に動く可能性は、日に日に高まっています。もしそれが起こったらどうするのでしょうか?

菅官房長官が、「決して容認することはできない。真に遺憾である。断固として抗議する!」といって終わらせ、日本は尖閣を失うのでしょうか?それとも尖閣奪回作戦をするのでしょうか?

その時、中国は、「日本が中国固有の領土である魚釣島を侵略した!」と大々的に騒ぎ、喜んで反撃することでしょう。ちなみに世界の国々は、「尖閣は日本の領土か中国の領土か全然知らない」ことも踏まえておく必要があります。

日本と中国は、戦闘になるのでしょうか?日本が、尖閣に人を常駐させて戦闘になる?中国が「漁民」を上陸させて、奪回作戦で戦闘になる?

どっちがマシなのでしょうか?ルトワックは、「奪回作戦はまずい」とはっきり書いています。

中国の怪しい「漁民」が尖閣に上陸したとしよう。彼らは信号弾(空中で炸裂すると色のついた光を発する弾丸で、連絡用などで使われる)を持っている。もし信号弾を撃ってきたら、警察官を運搬するヘリは、視界を遮られ、島に到着できないリスクがある。

したがって、このようなハイリスクな奪還作戦を考えるよりも、予め尖閣に軽武装した人員を送り込み、常駐させるべきだ。いわば「静かな占領」を行っておく方が、はるかにベターなのである。(68p)

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