緊迫の尖閣。日本が学ぶべき「対中外交」成功した国、失敗した国

shutterstock_471365768
 

在日アメリカ軍のトップ、シュナイダー司令官が、『アメリカ軍として周辺海域での警戒監視や情報収集を強化して日本を支援するという考えを示す』など、尖閣諸島をめぐる日中の問題が緊張化しています。中国が領土拡大を進める中、その対応で成功した国、失敗した国があると語るのは、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。北野さんは自身のメルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、それらの国の対中政策をもとに、日本が今後どうすべきかを説いています。

尖閣をめぐる日中戦争が近づいている、日本はどうするべきか?

私が「尖閣をめぐって日中対立が激化する」と書いたのは、08年のことです。「隷属国家日本の岐路」という本で、ダイヤモンド社から出版されました。副題は、「今度は中国の天領になるのか?」です。(@復刻版(2020年度補足つき)は、「自立国家日本の創り方」と名を変え、ダイレクト出版から出版されました)

その後、2010年に「尖閣中国漁船衝突事件」が、2012年に「尖閣国有化」があり、日中関係は戦後最悪になった。それで、「どうしてわかったのですか???!!!」と問い合わせが殺到しました。

そして、この問題は、まだ全然終わっていません。中国は、尖閣を強奪するため、ロシア、韓国に「反日統一共同戦線」構築を提案した(2012年11月)。さらに、「日本には尖閣だけでなく【沖縄】の領有権もない!!」と宣言しているのです。

そして、尖閣は近い将来、尖閣強奪に動く可能性が、どんどん高まっています。まずは、こちらをごらんください。

第11管区海上保安本部(那覇市)は22日、沖縄県石垣市の尖閣諸島の接続水域(領海の外側約22キロ)内を中国公船4隻が航行していると発表した。接続水域内での航行は、4月14日から100日連続となった。(読売新聞7月22日)

100日連続…。ちなみに中国は、年初から7月22日までに、領海侵犯を14回行っています。さらに。

中国政府が日本政府に対し、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での多数の漁船による領海侵入を予告するような主張とともに、日本側に航行制止を「要求する資格はない」と伝えてきていたことが2日、分かった。16日に尖閣周辺で中国が設定する休漁期間が終わり、漁船と公船が領海に大挙して侵入する恐れがある。日本の実効支配の切り崩しに向け、挑発をエスカレートさせる可能性もあるとみて日本政府内では危機感が高まっている。(産経新聞8月2日)

意味は、「8月16日以降、中国漁船の大群が日本の領海に侵入するけど、日本にはそれを止める資格はないよ」。なぜ?「だって、日本が主張している日本の領海。本当は日本の領海じゃなくて、【中国の領海】なのだから」ということでしょう。

彼らは、「尖閣は、中国固有の領土であり、『核心的利益』だ!」と宣言しています。その証拠に、彼らは、こんな「トンデモ主張」もしています。

中国政府は、5月8~10日に公船が領海に侵入して日本漁船を追尾した際には「『中国の領海』で違法操業」している日本漁船を「法に基づき追尾・監視」したとの見解を示した。(同上)

日本の漁船が日本の領海で漁業をしていた。すると中国の公船が、「お~日本の漁船が【中国の領海】で違法操業しているぞ!」とイチャモンをつけて、追いかけた。どう考えても、中国が「尖閣強奪」を狙っているのは明白です。非常に残念ですが、尖閣をめぐって日中戦争が起こる可能性は、日に日に高まっています。

失敗したフィリピンモデル

日本はどうしたらいいのでしょうか?実に悩ましい問題です。大きくわければ、「戦う」と「戦わない」(懐柔を試みる)にわけることができるでしょう。中国に対しては、どっちが効果的なのでしょうか?

これは、絶対的に、「戦う」方が効果的なのです。中国は、周辺のほとんどすべての国と争っています。しかし、中国に対する態度は、異なっています。弱気の代表はフィリピンでしょう。

中国とフィリピンは、日中と同じように領土問題を抱えています。しかし、仲裁裁判所は、「中国の主張は間違っていて、フィリピンの主張が正しい」という判断を下しました。

オランダ・ハーグ(Hague)にある常設仲裁裁判所(PCA)が南シナ海(South China Sea)をめぐる中国の主張には法的根拠がないとの判断を示したことについて、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は、一帯の島々は古来より中国の領土だとして、政府は今回の判断に基づくいかなる行動も受け入れないと述べた。国営の新華社(Xinhua)通信が伝えた。(AFP=時事2016年7月13日)

国際司法は、「フィリピンの言い分が中国よりも正しい」と判断した。ところが、ドゥテルテ大統領は、愚かにもアメリカとケンカした。後ろ盾をなくしたフィリピンは、裁判で勝ったにも関わらず弱気になり、中国に「敗北宣言」したのです。

フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領は19日、中国はあまりに強大であり、フィリピンや中国が領有権を争う南シナ海(South China Sea)のスカボロー礁(Scarborough Shoal)で中国が進めている構造物建設を止めることはできないと述べた。(AFP=時事3月19日)

フィリピンは、「中国に融和政策をとれば、優しくなる」と期待した。ところが、中国は、「もらえるものは全部もらってしまえ」という態度なのです。

日本が弱気になったり宥和的になれば、「では、ありがたく尖閣をもらっておこう。次は、沖縄を全部もらおう!」となるでしょう。

print
いま読まれてます

  • 緊迫の尖閣。日本が学ぶべき「対中外交」成功した国、失敗した国
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け