元国税が暴露「アベノミクスで貧困化した人」が怒るべき数字とは?

 

貧しい人は減ったのに、なぜ生活は苦しいまま?

次に低所得者の増減について見ていきましょう。低所得者の定義というのは難しいものがありますが、ここでは年収300万円以下ということにします。現在の日本では年収300万円以下では、結婚や子育てなどがかなり厳しくなるからです。

年収300万円以下のサラリーマンの推移は次のようになっています。

平成11年 小渕政権  1,491万人 33.2%
平成16年 小泉政権  1,666万人 37.5%
平成21年 麻生政権  1,890万人 42.0%
平成24年 民主党政権 1,870万人 41.0%
平成25年 安倍政権  1,902万人 40.9%
平成27年   ↓   1,911万人 39.9%
平成29年   ↓   1,866万人 37.7%
平成30年   ↓   1,860万人 37.0%

これを見ると、サラリーマンの平均年収とほぼ似たような動きになっていることがわかります。この20年、日本では年収300万円以下の低所得者層は増加し続け、民主党政権では横ばいとなり、安倍政権(第二次)になって減り始めたということです。

こうして見ると、アベノミクスでは我々庶民もそれなりに恩恵を受けているといえます。ただし、それは「それまでの政権に比べれば」の話なのです。この20年間で賃金が下がり、低所得者層が増えたという流れの中で、アベノミクスはその流れを若干、引き戻したというレベルに過ぎません。

20年前に比べれば、今でも平均賃金は下がっていますし、低所得者層の割合も増えているのです。まだ20年前のレベルにさえ達していないのです。それが、日本社会がなかなか閉塞感から抜け出せない要因なのです。

世界との比較で分かる「本当に怒るべき数字」

それは、ほかの先進国と比べればわかりやすいです。このメルマガでも何度かご紹介しましたが、日本経済新聞2019年3月19日の「ニッポンの賃金(上)」によると、1997年を100とした場合、2017年の先進諸国の賃金は以下のようになっています。

アメリカ 176
イギリス 187
フランス 166
ドイツ  155
日本   91

1997年時点と比べれば、アメリカ、イギリスはほぼ倍増しているのに、日本は減額されているのです。アメリカ、イギリスに比べても日本のサラリーマンの賃金上昇率は倍近い差があるといえます。フランス、ドイツと比べても1.5倍以上の差があるのです。このように日本の賃金状況は、先進国の中では異常ともいえるような状態なのです。先進国はどこもリーマンショックを経験していますし、リーマンショックの影響は欧米の方が大きかったのです。にもかかわらず、欧米はちゃんと賃金が上がっているのです。

アベノミクスは、これまでの政権とは違って「賃上げ」を重要視し、この20年間続いてきた「賃下げ傾向」を止めることはできました。が、ほかの先進諸国と比べれば、まだ全然、賃上げは不足だといえます。

また安倍政権(第二次)になって消費税は計5%上がっています。サラリーマンの賃金は約7%しか上がっていませんので、賃金の上昇分は消費税とほぼ相殺されてしまったといえます。つまり、我々の生活はほとんどよくなっていないのです。

そして残念なことにアベノミクスでは、一部に大きな恩恵を受けた人たちもいます。その最たる者が大口投資家と大企業の役員です。彼らの受けた恩恵に比べれば、我々庶民が受けた恩恵などは微々たるものなのです。次回は、そのアベノミクスで大儲けした人たちについて追及していきたいと思います。

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