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中国の「米ドル離れ」とグレートリセットは衰退日本の息の根を止めるか?

米中が軍事の面でも経済の面でも覇権争いを続けている中、中国の「ドル離れ」が加速しているようです。ドル基軸通貨を使用しない貿易決済を進め始めている中国の動きを伝えるのは、日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さん。津田さんは、自身のメルマガ『国際戦略コラム有料版』の中で、世界貿易に占める割合がトップの中国による「ドル離れ」がこのまま加速すれば、米ドルの基軸通貨としての地位が揺らぐと予想しています。

銀行に「ドル決済システム」を使わぬよう指令した、ドル離れの中国

米中対立で、中国は国際的なドル決済システム「SWIFT」(国際銀行間通信協会)から追い出される可能性を考え、ドルの貿易決済から人民元の貿易決済にシフトする必要が出てきた。

その中国は、2015年に人民元の国際決済システムのCIPS「Cross-Border Interbank Payment System」(国際銀行間決済システム )を作り現在、世界で2000銀行が加入。日本のメガバンクも参加している。

中国政府は、中国の銀行に対して「ドル決済システムを使わないでCIPSを使え」と指令した。主に一帯一路に関係する国との間で使い、2019年実績で1日当たり1753億元の取引がなされている。

ドルはもう1つ、原油取引の主要通貨であるが、これも中国は人民元取引の原油先物市場を作り、それを通じて原油を購入し始めている。

このように、中国はドル基軸通貨を使用しない貿易決済を行い始めている。特に、2020年にはドル利用をしないよう銀行に指令しているので、中国のドル離れが進んでいる。この中国が世界貿易に占める割合がトップであり、そのためドル基軸通貨の地位が揺らぎ始めている。

逆に、外交問題評議会の雑誌『FA(フォーリン・アフェアーズ)』で、「ドルの基軸通貨を捨てて、貿易赤字を減らした方が良い」という意見が出てきた。ドルをどうするのかという議論が今後出てくることになるだろう。

その上、パウエルFRB議長が「インフレでも金利を上げるつもりはない」と発言したことで、ドル通貨量は上昇し続けると投資家は判断した。

これらを受けて、ドル信認の低下が起きているため、ドル安方向になってきた。次の基軸通貨は人民元ではなくユーロだろうと、ドル売りユーロ買いが出てくる。米長期金利の上昇でドルを買い戻す動きも出ているが、一時的であろう。

米中関係と米大統領選挙の行方

中国は、CIPS体制ができたので、香港の国家安全法を施行したようである。香港のペッグ制が廃止されても、中国は人民元中心の国際決済ができるということのようだ。しかし、CIPSは世界貿易決済の1%程度しかない。

もう1つの決済方法として、今まで人民元と香港ドルを交換して、その香港ドルを米ドルに交換してきたが、HSBCへ米国がドル貸出を止めると、香港ドルと米ドルの交換ができなくなる。その結果、香港でもドルペッグ制が使えなくなる。大きな決済手段の1つがなくなるのだ。

中国は、欧米日などのドル決済国との貿易に支障をきたすことになるが、ドルから離れるようである。

米国も中国をドル決済システムから追い出すと、中国との貿易決済ができなくなり、中国からスマホや中国日用品の輸入ができなくなる。米国は、中国へのバッシングを強めているが、ドル決済システムからは追い出せないでいる。

しかし当初、トランプ大統領は口だけの対中強硬の姿勢であり、戦略的な取り組みではなかったが、チェコ上院でのポンペオ国務長官の演説は、米中関係を冷戦期の米ソ対立と比較し「中国共産党の脅威に対抗するのはそれよりもずっと難しい」と述べていた。

そのため、民主主義の同盟国と共に対中国の取組みが必要だとして、戦略的な政策になるとも言う。

中国の宣伝機関である「孔子学院」を1つの外交機関として認可対象としたり、FBIが「中国のスパイが米国の技術を盗み出している」として、中国人スパイを逮捕しようとしている。入国管理では、中国人学生のビザ審査を厳格化した。また、中国先端企業5社との取引がある企業の米国政府への納入禁止など、トランプの対中政策は戦略的な取り組みになってきた。

しかし、クドロー商務長官は中国との第1次協議の合意の履行を協調したり、8月15日の米中閣僚会議を行ってドル決済の利用を制限しないことで第2次協議に入る予定だったが、無期延期になった。クドロー氏は「その他の問題では中国との意見の相違は大きいが、第1段階の通商合意については、われわれは履行している」と述べている。

トランプ政権内で、クドロー商務長官、ライトハイザーUSTR(アメリカ合衆国通商)代表、ムニューシン財務長官などの経済系閣僚とポンペオ国務長官、ナバロ補佐官などの安全保障系閣僚の対立があるように見えるが、現時点では安全保障系閣僚の方の意見が優勢になっている。

米国社会でも、対中強硬派の安全保障系閣僚の意見が支持されているので、強い対応を取るトランプ大統領の支持率が上昇してきた。

もう1つ、シカゴの略奪事件などで黒人の暴動に嫌悪感が出てきたため、トランプ支持が伸びている。「隠れトランプ支持者」が増えているようだ。

つまり、トランプ大統領「再選」の可能性が出てきている。ニューヨーク・タイムズなどは、郵便投票を推進し、かつ大統領候補同士の討論会の中止を言い始めており、討論に弱いバイデン候補を応援し始めている。

止まらない、日本のコロナ感染拡大

重症者は、6月中旬には36人まで減っていたが、8月7日116人、11日162人、12日171人、13日203人、14日211人と日増しに増えている。そして、大阪の重症者は70人と過去最多を記録しているが、東京の重症者数は21人と少ない。

Go Toトラベルによるのかどうか、地方の重症者数が多いようだ。そのため、地方の脆弱な医療体制に問題が生じ始めている。特に沖縄の医療体制がひっ迫してきており、看護師の派遣を他県に要請している。

このように、重症化しやすい65歳以上の人と基礎疾患がある人は、今後も注意が必要である。50歳から減り始めるT細胞の減少やACE2受容体の数によって、コロナ感染症で重症化しやすくなる。

首都圏の若い人たちは、抗体がある可能性があり、コロナに感染してなくても結核菌やその他インフルエンザなどの感染で既に抗体があり、その抗体の交差作用でコロナウィルスに効いている可能性もある。

そのため、若い人は周りに65歳以上や基礎疾患の人がいなければ自粛の必要がないが、この人たちまで夏を満喫しないで自粛するので、経済活動が停滞し、日本の景気を非常に悪くしている。この景気の悪さが日銀のETF買いなどで株高になり、実感として見えてこない。

しかし、大不振のANAは、赤字のために5000億円規模の資本調達すると報じられているように、今のままだと、秋口には空運、鉄道、旅行業などの企業からリストラが本格的に始まるだろう。

そのため、9月に選挙などはできないし、来年までコロナ感染者数が減らないと来年の選挙も自民党・安倍政権のままでは、大逆風になるはずだ。自民党議員は、逆風を前提とした準備をする必要がある。

それよりも、内閣支持率が3割割れの寸前まで落ち込んで安倍首相が退任し、次の首相の下でしか選挙ができないようにも見える。

東京オリンピック開催も絶望的だろう。

感染対策を検証し、政策を変えることが必要になっていると思うが、今の政権には、それができないようだ。

さあ、どうなりますか?

image by: Alessia Pierdomenico / Shutterstock.com

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国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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