地球温暖化のウソと本当。「私たちの心がけ」で日本の夏は涼しくなるのか?

 

6月30日にはJパワー(電源開発)の竹原火力発電所新1号機(広島県、60万kW)が営業運転を開始し、前日の7月1日には鹿島パワー(Jパワーと日本製鉄との折半出資会社)の鹿島火力発電所2号機(茨城県、64.5万kW)が、それぞれ営業を開始した直後であった。

本来なら二酸化炭素排出量の最も多い石炭火力発電所はすべて廃止しなければならないところ、今回の日本政府の発表は、石炭火力発電を今後も使い続けるという決意を示すものだった。それで二酸化炭素の排出量が激減するのであれば納得もできるが、図04で見る通り、古い小さな発電所ばかり休止・停止させても数は多く聞こえるが、設備の容量では石炭火力発電所のわずか10%ほどしか減らない。

図04 非効率石炭 100基休廃止の意味(出典:気候ネットワーク

その上、発電効率では高効率を名乗っても、発電効率が38%以下の亜臨界圧(SUB-C)や38~40%程度が41~43%程度の超々臨界圧(USC)や46~50%の高効率な石炭火力発電所に置き換わるだけだ。仮に平均で効率が5~10%良くなったとしても、その二酸化炭素排出削減効果は、従来の石炭火力発電の排出の5%程度しか減らせず、発電所全体の排出量からみるとほとんど1%も影響しないだろう。石油を燃料とした発電所と比較して、石炭はそれより約三分の一排出量が多く、天然ガスは石油より約三分の一少ないのだから、石炭を止めて天然ガスに変更するなどしないと大胆な削減などできないのだ。

これで 「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減」 というパリ議定書の約束を守ることなどできない。発電所は通常30~40年の耐用年数で予定するのだから、守るためには2050年の30~40年前に予定しなければならない。つまり2010年~2020年には切り替えられていなければ間に合わない。それを2020年になって「2030年からする」と言うのだから、「地球温暖化対策は日本はしないことにした」 と言っているに等しいのだ。

これは事実上の対策放棄であり、世界的な約束に対する裏切りだ。こんなことを平然とあたかもやっているかのように見せながら実施するのは、堕落しきった政府の証明だろう。これなら地球温暖化の事態ではなく、「温暖化対策を恐れている電力会社、自動車メーカー、経済界の人たち」にとっては有難いだろう。残念ながら温暖化の被害はこれで待ってくれることは微塵もないのだが。

その一方で地球温暖化を食い止めたいと考える人たちは、この二酸化炭素排出原因説だけでは何もできないままになってしまう。手をこまねいたまま様々な大災害を受け、そして一歩ずつ滅んでいくことを見守るしかないのだろうか。

そこから考え直した時、二酸化炭素原因説は間違いないと思うが、重心の起き方に間違いがあったように思うのだ。もし今の強欲で破滅に向かおうとする人々が思い直したとして、その時に何ができるだろう。

大地に炭を埋設していくことも大きな可能性だし、木々に炭素を吸収してもらうことも大きな可能性を持っている。家を無垢、低温乾燥の木造で建てることももちろん炭素固定になるし、土地に入れた炭は土壌の改善効果もある。

そしてこれまでに放出された二酸化炭素のうちの約半分が土壌から放出されていたのだとするなら、土壌を改善することにはものすごい量の二酸化炭素排出量の改善効果があるはずだ。(メルマガ『田中優の‘持続する志’(有料・活動支援版)』より)

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