ついに武力行使か?米中衝突の時計の針を一気に進めた中国の暴挙

 

イランも巧みなので世界を巻き込んだ全面戦争には発展しないものと思われますが、協調と微妙な力の均衡の箍(たが)がイスラエルを軸とした中東再編が起こすハレーションで崩れた場合、中東地域全域を巻き込んだ戦争に発展する可能性は大いにあります。

そして大きな理由が、アメリカ国内の世論を見たときに、70年代にあったテヘランアメリカ大使館占拠事件とイラン革命によってアメリカ国民が犠牲になったという心理的な影響ゆえに、イラン攻撃は実はアメリカ国民の支持を最も得やすいネタであるという分析です。例えるならば、拉致事件ゆえに日本国内にある北朝鮮への不信感やネガティブな感情に比べても、アメリカ国内でのイランへの反感は強いと言われています。

実際にイランがトランプ大統領や歴代のアメリカの政権が言っているほど悪いかどうかは別として、11月3日の大統領選挙に向けて状勢が不利だと言われているトランプ大統領とその陣営にとっては、イランへの武力行使は格好の支持回復のための材料と考えられるため、短期的に起こりうるアメリカによる武力介入があるとしたら、それは対イランだろうと予想します。

とはいえ、もちろん、先述の通り、COVID-19の米国内での感染拡大を受けて、アメリカ国民の嫌中感情の高まりが超党派のうねりになっていることもあり、対中限定戦争も、ここ数日の南シナ海での中国からの軍事的な威嚇行為の連続を見ていると、偶発的な衝突でも起きてしまうと、勃発する可能性はありますが。ここでもコロナ世界の新世界秩序の下、均衡が崩れ、国際情勢が再編されている影響が見て取れます。

そして究極は、東アジアにおける軍事的なバランス(均衡)が大きく変化していることで、微妙な具合に協調体制を支えてきた力の均衡が崩れ、アジアも再編の可能性に直面している事態です。日本も例外ではありません。

今回のCOVID-19パンデミックの始発点であり、(実際にはどうか知りませんが)最も早くCOVID-19の災禍から回復した中国は、アメリカや日本、東南アジア諸国、欧州がコロナ禍で身動きが取れない隙に、南シナ海の軍事化と要塞化(南沙諸島と西沙諸島)を進め、尖閣諸島海域への100日以上に及ぶ領海侵犯を強行した上に、香港の“自治”(一国二制度)を瞬く間に奪い去っていきました。

結果、アメリカ政府の【中国共産党の全面否定】というイデオロギー戦争にまで発展し、アメリカが南シナ海を攻撃するのではないかとの懸念も高まりました。まるで中国を刺激するかのように、アザー長官を台湾に公的訪問させ、台湾海峡有事の際にはアメリカは全面的に台湾を支援する旨伝えたとされ、南シナ海を舞台にした米中の武力対立は不可避とまで言われました(私もこのメルマガでそういいました)。

これがシャレにならなくなってきたのは、中国の軍備の充実度合いが目を見張るレベルにあることでしょう。以前お話しした極超音速滑空ミサイルの開発・配備や空母群の充実、最新鋭の潜水艦とSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)のレベル向上、そして100基を超えるドローンを同時に操る無人攻撃部隊の実戦配備などが典型例でしょう。

そして、その中国やロシア、パキスタン、そしてイランの協力を得て北朝鮮の軍備も近代化されているという情報も懸念材料です。例えば弾道ミサイルに搭載できるまでに小型化された核弾頭の存在、ICBM/SLBM技術の存在、そして、これまで軍事上、禁じ手とされてきた核による電磁波攻撃を行うことが出来る能力なども、東アジア、特に北東アジア地域の力の均衡を根本から変えることになるかと思います。

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