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安倍政権の7年8ヶ月から「ウソ、詭弁、隠蔽、改竄」を引くと何が残るか?

歴代最長の総理在職記録を達成した際の記者質問に対し、「何日間在職したかではなくて、何を成し遂げたかが問われるのだろうと思う」と語った安倍首相。では首相は、7年8ヶ月という長期に渡る政権運営期間中において、どのようなことを「成し遂げ」てきたのでしょうか。これまでも安倍政権に対して鋭く切り込んできたジャーナリストの高野孟さんはメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で今回、安倍首相の7年8ヶ月間を「やってる感」演出の乱発のみに終わったと厳しく批判しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年8月31日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

長ければいいってもんじゃない安倍政権“悪夢”の7年8カ月――残されたのは負の遺産ばかりのガラクタの山

安倍晋三首相が8月28日、辞任を表明した。

一人密かに辞任を決断したのは24日、今月2度目の慶應大学病院での診察で持病の悪化を告げられた後だった。その日が第2次安倍政権が発足してから2,799日目で、大叔父=佐藤栄作を連続在任期間で抜いて歴代トップを記録した日だったというのは、偶然ではない。6月に体調不全が始まって以来、国会は開かず会見は持たず会食も控えるという半ば蟄居生活を送り、体も心も衰えていく中で、「長い割にはろくな遺産も残せずに終わるのだとすれば、せめてその長さだけでは歴代最長を達成して去ろう」と思い詰め、ようやくこの日にまで辿り着いて、そこで力尽きたのである。

逆に、今になって振り返ると、とにかく長く続けるという以外に、安倍政権には目標がなかったのかもしれないとさえ思えてくる。自らに課した最大の課題であったはずの「憲法改正」にしても、96条お試し改憲論から始まって、閣議決定による解釈改憲、9条1項2項温存のまま3項付け加え論など、こちらがダメならあちらはどうかとメニューをコロコロと入れ替えて、何ひとつ成果が上がらなくとも「やってる感」だけは振り撒き続けるというのは、政権を長続きさせるための策略だったのではないか。「アベノミクス」も「拉致」も「北方領土」もみな同じで、結果が出るまで突き詰めていくと上手くいかなかった時に責任を問われて政権が短くなってしまう危険があるから、最後まで行かずに横っ飛びして目先を変えてしまう。

「モリカケ」や「桜を観る会」や「河井夫妻1億5,000万円」など数々の疑惑から逃げまくって、世間が忘れてくれるのをひたすら待つかのようであるのも、きちんと事実検証をして説明責任を果たそうとすれば、何度辞任しても足りなくなるからに違いない。こんな風に、嘘、強弁、言い逃れ、誤魔化し、隠蔽、改竄、目眩し、引き伸ばしのようなことを日々重ねていては、心が病んでいくのは当たり前。彼が難病を抱えているのは気の毒で、少しでもよくなって安穏な余生を過ごせるようになることを願うものではあるけれども、この病を悪化させる最大の原因である精神的なストレスを自分の中に呼び込んで溜め込んできたのは彼自身で、それは、「落ち着きがなく絶えず動き回ってしまう」「思いついたことを突発的に行動に移す」「何かをやり遂げることが苦手」等々の性格によるところが大きい。その意味では自業自得とも言える結末と言える。

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ダメ押しとなったコロナ対策の迷走

こうした安倍政権の特異な性格はすべてそのままコロナ事態への対応にも流れ込んで数々の失態を招き、それが政権失墜へのダメ押しとなった。菅直人政権の3・11対応を、あることないこと言い立てて馬鹿にし民主党政権時代を“悪夢”と罵るのが安倍首相の演説や答弁の決め文句だったが、私の見るところ、安倍政権のコロナ対応はそれを遥かに上回って悪夢的ではないのだろうか。

安倍首相の決め文句はただの印象操作というかデマゴギーにすぎず、それに対して民主党側からは、菅直人自身による『「原発ゼロ」の決意/元総理が語る福島原発事故の真実』(七つ森書房)、当時官房副長官として対処に当たった福山哲郎の『原発危機/官邸からの証言』(筑摩書店)、やはり内閣官房参与だった田坂広志の『官邸から見た原発事故の真実』(光文社新書)など当事者による証言や、いくつかの事故調査委員会による詳細なレポートなどが出ていて、事実に即して検証し教訓を導くことが可能である。さてコロナ禍については、一段落した後に安倍首相自身をはじめ官邸周りで働いた人々から、それぞれの立場で捉えた真実を総括して貰いたい。それが出るまでは、どちらが悪夢的かという比較は留保しておきたい。

それにしても、最初の段階のダイヤモンド・プリンセス号における対策は、政治家としては橋本岳=厚労副大臣と自見英子政務官の不倫コンビが取り仕切り、その直下には医系技官の大坪寛子官房審議官がいて、実際にはこれまた“コネクティングルーム不倫”(これ、今年の新語大賞候補ですかね)相手の和泉洋人=首相補佐官と連絡を取りながら実務をこなしていた。不倫など個人の勝手とも言えるけれども、この2組のカップルは、人々の命に関わる未曾有の危機を防ぐ最前線の指揮を任されながら公務の場をも利用して愛を確かめ合っていたもので、そのような信じがたいほどの弛緩ぶりが、当時、岩田健太郎=神戸大学病院感染症内科教授が告発したように、船内のレッドゾーンとグリーンゾーンを峻別するという最も初歩的なルールさえも徹底されずに船内のスタッフが感染していたという事態に繋がっていた。あるいは、感染なしと判定され下船を許された乗客を横浜港で放してしまい、公共交通機関で帰宅するに任せたり、帰国の途に着いたオーストラリア人が航空機内で陽性反応を示し後に死亡したり、まあ出鱈目と言っていいフォロー体制がとられていた。ここから日本の失敗はすでに約束されていたと言える。

それで焦った官邸官僚が、全国一斉休校措置、アベノマスク配布、各戸30万円でなく各人10万円一律給付など、思いつくままにあれこれの衝動的な「やってる感」演出を乱発し、もう訳がわからなくなってしまった。この辺りから安倍首相の病状悪化が始まったものと推測される。

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ポスト安倍政権に降りかかる難題の数々

次が誰になるにせよ、どん底状態の日本を押し付けられて苦難のスタートとなる。何よりもまず、コロナ対策の立て直しだろう。安倍首相は「政権投げ出し」批判を避けるために、28日までに新たな対策方針を決定したと胸を張って見せたが、その中身は、「感染拡大防止と社会経済活動の両立」「1日平均20万件の検査能力を確保」「各都道府県で病床や宿泊療養施設を整備」「ワクチンは来年前半までに全国民に提供できる数量を確保」「雇用調整助成金の給付上限1万5,000円への引上げを12月末まで延長」(官邸HPより)など、変わり映えしない。PCR検査については、安倍首相も繰り返し「増やす」と約束しながらなかなか増えず、そこには「感染症法に基づく行政検査」という法的な縛りがあるので国立感染症研究所から保健所に至るピラミッド型体制の中でしか行えないという仕組みの問題があるとされてきた。それをどうするかの検討もなしにただ数字だけ挙げても、また「やってる感」になってしまう。

それ以前に、我々は毎日発表される地元や全国の感染者数の増減を息を詰めてチェックしているが、実は全国20政令都市と東京23区の計43の自治体のうち、陽性率を発表しているのは約半分の22で、他の21は非公表だと言う(8月28日付読売)。非公表には仙台、京都、福岡など8政令都市と東京の13区が含まれる。理由は、「医療機関から検査数が報告されない自治体もあり、全検査数が把握できず、正確な陽性率が計算できない」だと。何ですかね、この発展途上国丸出し状態は。これでは一体何を根拠に、政府も自治体も専門家も「検査を増やせ」とか「いや、そんなに増やさなくても大丈夫」とか議論しているのか。

このことを筆頭に、経済も社会保障も、外交も安保も、福島原発の汚染水も辺野古基地建設の軟弱地盤も、五輪開催も、スキャンダルの解明も、何もかもが安倍政治の“呪い”から解放されなければならない。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年8月31日号より一部抜粋)

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image by: 首相官邸

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