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辞任の安倍首相に中国人が「好意的」は本当か?現地SNSを調べた結果

安倍晋三首相は去る8月28日、持病の潰瘍性大腸炎が悪化したことなどから国政に支障が出る事態は避けたいとして、総理大臣を辞任することを正式に表明したのは周知の通り。実は、このニュースを日本国内とほぼ同じタイミングで速報した国がある。香港情勢や米国との対立などで、昨今やたらと国際社会を賑わせているお隣の大国、中華人民共和国だ。

安倍首相「辞任」のニュースは世界各国でも速報されたが、どこよりも早く報じた国が中国だった。9月1日に公開されたダイヤモンドオンラインの記事によると、中国国内では安倍晋三首相の辞任の報を受けて、多くの国民が「好意的」なメッセージをSNSなどに投稿しているという。

その中身は、「お疲れ様」とねぎらうものから、今までの「功績」を称えるものまで数多くあり、中国人の安倍首相の辞任劇への関心の高さが窺われる、としている。また、健康上の理由とはいえ、一国の権力者が潔く(?)辞任したことが中国人に衝撃的だった、とも伝えている。

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しかし疑問なのは、中国国内は本当に「安倍首相礼讃」ムードなのか?という点だ。つい最近まで、安倍首相は中国や韓国に「タカ派」「右翼」などというレッテル貼りで語られていたことは、日本国民もよく知っているはず。

さらに、「桜を見る会」や「モリカケ問題」などの疑惑は世界中で報じられており、国会の答弁でしどろもどろになっていた安倍首相の様子を見たことがある中国人も少なくないに違いない。中国で好意的な書き込みばかりが目立っている、とする報道には違和感が残る。

実際にSNSを調べてみると…

そこで、MAG2 NEWS編集部では、中国版ツイッター「微博」(ウェイボー)には、安倍首相の辞任について好意的な投稿が溢れかえっているのかを調べてみることにした。

ウェイボーの検索窓に「安倍」という文字を入力すると、次の画像のような予測変換が出てきた。

上記の予測変換では、「安倍計画辞任」「安倍辞職、腸の痛みによる」「安倍晋三辞職記者会見」「安倍晋三正式に辞職を発表」「安倍晋三辞職」「安倍辞職」「安倍晋三が慶応大学医院へ入る」「アベノミクスの8年をふりかえる」「安倍晋三病院へ」「安倍晋三なんの病気?」「安倍吐血 」など、安倍首相を特別褒め称えるような言葉は見つからない。しかし、好意的なキーワードをわざわざSNSで検索する人もそう多くはないはずなので、これだけで判断するのは早計だろう。

中国人「安倍辞任」への反応は?

そこで、今度は「安倍 辛苦了(お疲れ様)」「安倍 辞职(辞職)」などで検索したところ、さまざまな反応が投稿が出てきた。以下にいくつかの呟きを紹介しよう。

「安倍お疲れ様、次は誰かな?」

この投稿では、安倍首相の経済政策「アベノミクス」の功罪や、安倍首相を揶揄する日本の「反安倍派」の人物が作ったと思われる求人広告風の画像など3点を引用している。

このよくできた求人広告風のパロディ画像は中国人のツボにハマったのか、別の投稿でも引用されていた。

「これみて、日本にいる後輩がグループチャットで送ってきた画像なんだけど、総理大臣の役職って結構ハードルが低いんだね(笑)」

国会などの答弁で官僚の原稿を読むだけの安倍首相を皮肉った画像がウケたようだ。どうやら日本語がわかる中国人の投稿らしい。

また、安倍首相に同情的な投稿もあった。

「安倍さん悲惨ですね。オリンピックも習近平の春の訪日も、新型コロナで中止になりました。もともと安倍自身の総理大臣再選にとってはとても有効なカードだった。今度は自身の病気が原因で不本意ながら辞職になった。悲惨すぎる」

さらに、今回の潰瘍性大腸炎の再発についても触れた投稿も。

「彼は本当に病気なのか? それとも仮病なのか? 安倍氏は八字占いによると彼は金人であり強い精神力を持っている人です。しかし、ニュースでは腸に強い痛みを感じていると言っていました。私は彼の健康に比較的重大な問題が起きていると考えていましたし、事態は楽観視できないと思っておりました。そして突然辞職を発表し本当に辞職してしまいました。私はこの先を推測できなくなりました」

以上2つの投稿は、多少は安倍首相に同情的であるものの、やはり「安倍晋三礼讃」とは言えないようだ。

かと思えば、こんな投稿もある。安倍首相が2013年12月に靖国参拝をした際に、米国や中国など世界中から非難を浴びた時の話だ。

「そういえば、数年前に安倍が靖国神社でいろいろ揉めてたときにたくさんの人がここ(ウェイボー)で安倍を罵倒していた。。。案外、安倍はそんなに反中ではなかったのか?彼よりひどいやつがいた???私。。。」

思ったほど反中派ではなかった(というより、経済の面では中国の言いなりだった)安倍首相を多少は擁護するような投稿だ。日本の保守派には「嫌韓、嫌中」をアピールしながら、自民党内や経済界には「親韓、親中」のダブルスタンダードだった安倍首相を皮肉っているのかもしれない。

では、擁護の投稿がまったく無かったかといえば、そうでもない。以下は、安倍首相の功績を称え、体調を心配する投稿。

「突然のニュースでびっくりしました。あと少しで、中日韓の貿易を一体化できたところで、こんなことになってしまいました。たしかに安倍は右寄りの指導者でした。また中日関係にダメージを与えることをたくさんしましたが、日本の自国のために行ったことだと考えるとやはり尊敬される人でした。潰瘍性大腸炎は免疫系の病気で原因は不明です。おそらく精神的なストレスにより病状が悪化したのだと思います。首相という立場は常にたくさんの外圧にさらされるため、このままだと病気が悪化することを知っていたのでしょう。最近はますます症状が頻繁に現れ、体調管理の必要性を感じたと考えられます」

以上、駆け足で中国版ツイッター「微博」上にて、安倍首相辞任に関する呟きを調査してみた。ざっと投稿を見た感想としては、「お疲れ様」や「同情」はあるものの、安倍首相の功績を称える投稿があふれている状態ではなかったと言えるだろう。たしかに、隣の国のトップが電撃辞任をしたというニュースが中国でも関心が高かったことを窺い知ることはできた。そして、中国もまた、次の日本のトップが誰になるのか、という話題に移り、安倍首相の存在感は徐々に薄れているという感は否めない。菅義偉官房長官が自民党総裁選への出馬を表明した今、世界も「ポスト安倍」に注目している。

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image by: 首相官邸

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