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トランプ劣勢が危機を招く。米国が切る「第三次世界大戦」勃発のカード

世界の命運を左右するかもしれない米大統領選挙まで、わずか2カ月足らずとなりました。その影響からか、ますます激化する米中の覇権争いですが、このまま両大国が武力行使にまで至る可能性はあるのでしょうか? 今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、米中貿易戦争の裏で取引されたと思われる事柄を分析。そして最悪の場合、選挙でトランプ劣勢の現状が「第三次世界大戦」を引き起こしかねないと警告しています。

米中貿易対立から軍事対決へ

トランプ大統領が「開催もしないし、現在は話もしない」とした米中貿易協議を8月25日に行ったが、翌日には香港で民主派議員など16人が逮捕されている。この裏で、米中の取り引きが行われたようである。

ドル決済システムからの追放はしない代わりに、第1次貿易協議で決めた農産物などを買うことになったようだ。米国の農民票を得るためには、中国から農産品を大量買いしてもらう必要があったためである。

もし不十分な場合は、米国としては損失額に相当する規模の関税を課す可能性があるが、中国はそこを問題視しているわけではない。

米国への輸出を増やすため、オーストラリアから米への牛肉輸入を止める必要から、中国が「禁止薬物を検出した」として一部を停止した。

中国としても、現時点では、ドル決済システムから追放されると大変なので仕方がない。中国は、今までは輸出で外貨を稼ぎ、その外貨で「一帯一路」などの中国拡張政策をしていたが、今後、双循環ということで、内需と外需の両輪で経済を回すとした。そのようにして、ドル決済が必要な米国経済圏から離脱を目指すことになるようだ。

そして今は、中国経済は成長軌道に乗り始めているが、米国はコロナ感染蔓延で当分経済は縮小になる。もしかすると、今年中に経済規模で米中逆転も起こりえる状態になる。勿論、中国の公式見解では、の話ではあるが。

もう1つ、中国も長雨と洪水で農産物の不作が予想されるので、米国産農産物の輸入は必要である。両国の利害が一致している。

そして、その場で中国は香港の統制強化を条件に出したようだ。米国は香港の民主派逮捕に対して何も抗議していないということは、中国はその条件を勝ち取ったようである。

米国は、中国のハイテク製品の米国内での販売を禁止することで、中国のハイテク産業発展阻止を図っている。中国は米国アプリを現時点で中国国内で禁止しているので対抗策がない。

そこで、中国は次の一歩を踏み出すことになる。ハイテク経済戦争に対して、南シナ海の領有権を米国に認めさせることである。サラミ戦略の次の一歩として、ミサイルを南シナ海に発射して、米空母の南シナ海への航行をけん制した。これに対して、エスパー国防長官は、中国の試みに一歩も譲らないと声明を出した。

嫌な感じなのは、大統領選挙年であり、トランプ大統領が劣勢だと、挽回のためにオクトーバ・サプライズを行う可能性があることだ。その選択肢の1つに、南シナ海の部分軍事衝突もありえるからである。そして、米長距離ミサイルを南シナ海に向けて発射する可能性も示唆している。

バイデンの受諾演説のTV視聴率よりトランプ大統領の受諾演説の視聴率が低く、「Qアノン」などの陰謀主義的な演説は正常な感覚がある人には聞いていられない。

その上、中国は福建省でミサイルを大量輸送し、大陸東部で病院を徴用して戦争の準備をし始めている。中国が台湾侵攻作戦を行う可能性もある。きな臭い感じになってきた。

しかし、南シナ海への米空母派遣は、中国の対艦長距離ミサイルがあるためできないので、米ミサイル発射などの戦術をとるしかないことになる。場合によっては、秘密で開発していた米軍の宇宙兵器か何かが見えるかもしれない。

下手をすると「第3次世界大戦」になるかもしれないので注視が必要である。

北朝鮮の惨めな状況で東アジアが変わる

北朝鮮が何か変である。金正恩委員長から権限の多くを金与正氏に移譲されたということがおかしい。金正恩氏の健康問題もあり、経済問題もあり、大変なことが起きていると想像できる。

特に、中国の洪水被害を問題視していたが、それよりも北朝鮮の方が大変なようである。梅雨前線や台風8号もあり、農産物の不作が中国と同様に起こり、秋の収穫が大減収になるようだ。

事実、平壌でも配給が停止して、多くの北朝鮮民が飢え始めているという。収穫期の秋には体制の維持ができない事態で、援助の大幅な増加を図ることが必要になる。しかし、中国も食料不足で、北朝鮮への援助もできないはずである。

そのため、韓国からの援助を期待するしかないが、米国の経済制裁を解かないと、韓国も援助することができない。しかし、中国が韓国へ接近して北朝鮮への援助を依頼する可能性がある。近々、習近平主席が韓国を訪問するようである。

韓国を米国から切り離すとともに、北朝鮮の援助もさせて、その代わりに北朝鮮と韓国を統一して中国経済圏に取り込めることになる。一石三鳥の外交政策である。

韓国の文政権としても、米国経済より中国経済の方が大きくなると望んでいることもあり、習近平訪韓歓迎なので、それに伴い在韓米軍撤退などが起こりえる状態になっている。勿論、GSOMIAの終了もその時になるだろう。

コロナで、世界の仕組みは企業経営もデジタル技術に変わるが、世界の支配体系も大きく変わることになりそうである。

それも中国が世界を変えるトリガーを引くことになる。その意味では、米国同様、中国の動向にも目が離せないことになっている。

安倍首相の辞任で次の首相は誰か?

健康上の理由で、安倍首相の辞任が決まった。安倍首相は、国際的に日本の地位を上げ、国家安全保障局設立、国家安全保障戦略策定、平和安保法制、機密保護法、日豪関係や日印関係の強化、CPTPPのリード、特にトランプ大統領と関係を密にして、日本の国益を守り、日本の経済的な苦境を脱した。安倍首相、ご苦労様でした。

健康を害しても、次の自民党総裁が決まるまで安倍首相が務めるという。しかし、緊急時は党大会に代わる両院議員総会で実施できると規定されているので、これで総裁選挙を行うようである。

党員選挙であれば、石破さんに目があるが、両院議員総会で総裁を選ぶとなると、石破さんの目はない。残念ながら。それと、ネット世論で石破氏はぼろ負けなのもきつい。

しかし、アベノミクスの後始末とコロナ大不況で日本経済は大きく落ち込むので、この挽回策は大変である。ここ半年で31万社の中小企業の倒産が起こると調査会社はみている。

安倍首相の健康とやる気を失わせたのも、コロナ感染拡大もあるが、今後の経済情勢が良くないことであろうから、次の首相は大変だ。この大変な時、有効な政策を打たないと支持率が上がらずに短命政権に終わる可能性もある。

世界的な大変革期である。米国の衰退と中国の横暴な外交が益々増してくる。外交も難しい局面を迎えることになる。

さあ、どうなりますか?

image by: Shutterstock.com

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国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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