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全米が絶賛。大坂なおみ選手に学ぶ痛みを抱えた人への寄り添い方

テニスの大坂なおみ選手は9月13日、全米オープン女子シングルス決勝でベラルーシのビクトリア・アザレンカ選手を逆転で下し、全米OPで2年ぶり2度目、四大大会で通算3度目の優勝を果たしました。今大会で注目された「黒人の名前入りマスク」も、優勝以上の価値があると海外で絶賛されています。ニューヨーク在住『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』著者のりばてぃさんは、米国での大坂なおみ評を紹介。静かに、そして真摯に難しい差別の問題に寄り添うその姿の価値を伝えています。

大坂なおみ選手から学ぶ寄り添い方

(1)大絶賛されている大坂選手

今、ニューヨークではテニスの全米オープンが開催中だが、今年は新型コロナの影響で、無観客で開催。でも大坂選手のある行動が例年以上に大きな感動を全米に届けている。

大会9日目の9月8日は女子シングルス準々決勝の大坂なおみ選手とシェルビー・ロジャース(Shelby Rogers)選手の試合だった。この試合で大坂選手は、これまで一度も勝てなかったロジャース選手に1セットも落とさず圧勝(第1セット6-3、第2セット6-4のストレート勝ち)という快挙を遂げ、2年ぶり2回目のベスト4進出を決めた。

大坂選手の素晴らしい試合もそうだが、今大会で大坂選手は、黒人差別事件などに巻き込まれて亡くなった方々の名前が書かれたマスクを着けて出場している。1試合勝つごとにマスクを変えるため、次の試合は別の人の名前が書かれたマスクになる。勝ち進めば勝ち進むほどに亡くなった方々のお名前が1人ずつUSオープンを見る視聴者の目に入るのだ。

すでに5試合終わっているので5人のお名前(Breonna Taylor, Elijah McClain, Ahmaud Arbery, Trayvon Martin and George Floyd)の書かれたマスクを着けて出場している。これについて、ロジャース選手との試合後のUSオープン会場でのインタビューでは、女性のアナウンサーさんからこんな質問があった。

「このトーナメントに、あなたは7つの(事件などに巻き込まれて亡くなった人の名前が書かれた)マスクを持っていらっしゃって、あなたがそれを着用することで、世間の人々を教育し、そうした犠牲者の方々の物語を伝えようとされていらっしゃる。そして、それを見る全ての人々にとり、とても力強いものになっています」

(原文)
“as you said you took seven and you brought seven with you to the tournament, as you display and try to educate and tell the stories of these victims and it’s been a very powerful thing for everyone to see”

そして、続けてその犠牲になられた若者たちの親御さんが大坂選手の行動に感謝の気持ちを伝える映像を流し、それを見た後に、「どのように思われますか?」と大坂選手に質問し彼女はこう答えている。

「とても多くの意味があります。ご遺族の方々は、とても強いと感じます。もし私が彼らの立場にいたら、何ができるのか分かりません。でも、現時点では、私は、気付きを広めるための『ヴェッセル』(vessel、容器、器、船などの意味)のようなものだと感じています。痛みを消すことはできません。でも、できれば、私は彼らが必要とするあらゆるものを手伝いたいと思います」

(原文)
“It means a lot. I feel like they’re so strong. I’m not sure what I would be able to do if I was in their position, but I feel like I’m a vessel at this point in order to spread awareness. It’s not going to dull the pain, but hopefully I can help with anything that they need.”

気づきを広めるための「ヴェッセル」。この発言は、まだベスト4進出を決めたばかりだが、もう彼女が優勝でしょ、いやいや優勝以上の偉業をすでに成し遂げてるよ…との声も飛び交うほどとなっている。

例えば、スポーツ専門のESPNは、「大坂なおみ選手のUSオープンでの成功は、彼女自身(がこの大会で優勝すること)よりも遥かに大きい」などだ。
Naomi Osaka’s US Open success is far bigger than herself
Naomi Osaka nearly moved to tears by messages from families of Ahmaud Arbery and Trayvon Martin
Naomi Osaka Receives Messages from Parents of Ahmaud Arbery & Trayvon Martin: ‘Extremely Touching’

(2)本当の意味での寄り添いとは

今、アメリカを中心に起きているBlack Lives Matter運動などは、文化や歴史の違いなどから、多くの日本の報道は、この大坂選手の行動を「人種差別に抗議するために…」とか、政治とスポーツを一緒にするなといった意見も出ていたりする。

また、黒人差別は問題だということはわかるけども、イマイチ共感を得づらかったり、アメリカで起きている様々な現象を理解しにくかったりするという人も多いだろう。それは当然のことだと思う。だって、当事者ではないし、もし理解できるという人がいてもそれは偽善だと思う。

当事者じゃないし、実際に経験もしてないのに話を聞いただけでわかるわけなどないのだから。そんな簡単なことじゃない。じゃあ、当事者以外はどうしたらいいのか?その答えの1つを大坂選手はUSオープンで示してくれた気がするのだ。

否定するでも非難するでもなく、こういう事実があったということを広めることに徹していて、結果的にご遺族の方々に心から寄り添う形になったのではないかと感じている。もしかしたら多くを語らないことで逆に強いメッセージとなって伝えられているのかもしれない。

大坂選手の謙虚だけど、心のこもった力強いお言葉に、だからこそ今、全米が感動しているのだろう。せっかくなので、当該インタビューを見ていただくと、Black Lives Matter運動などに関する今のアメリカの空気感を少しでも感じて頂けるのではないかと思う。

image by:lev radin/Shutterstock.com

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ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。読んでハッピーになれるポジティブな情報や、その他ブログで書けないとっておきの情報満載のメルマガは読み応え抜群。

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