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政治はエリートから庶民の手に。トランプの4年が目覚めさせたもの

トランプ大統領が新型コロナに感染したことで、苦戦する大統領選への影響が懸念されます。ただし、仮にバイデン氏が当選してもトランプ氏が破壊し、作り上げた時代の流れは変えようがないと解説するのは、メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんです。津田さんは、大統領が白人の本音の代弁者として振る舞った流れは、ついに日本にも菅「庶民」首相を誕生させ、コロナ対策や検察庁法改正などが国民の声により修正されたように、企業やエリートのための政治から、庶民の本音に答える政治が支持を得る時代だと読み解いています。

トランプのコロナ感染でも、バイデン当選でも止まらない時代の変化

大統領選挙が迫り、株価は乱高下しやすい環境になっているが、その中、トランプ大統領が新型コロナに感染。今後を検討する。

来年のダボス会議のテーマは「グレート・リセット」ということで資本主義の見直しをテーマにするようである。2020年代は、デジタル化しかないが、これによる社会の変化と、それに対応するには、今までの新自由主義的資本主義では無理であり、どのような資本主義に変化させるのかを話し合うようだ。

コロナ感染抑制には、中国や韓国などのように個人の自由を大幅に制限して、感染拡大を止める必要があるが、どこまでが制限の許容範囲かも議論になる。これに成功したことで、自信を深めた中国は、国家資本主義から独裁的な全体主義になってしまった。その上に戦狼外交で世界を相手に戦うというから大変である。

グローバリゼーションの巻き戻しも必要であり、中国は、マスクや薬品原料などの感染予防品の輸出を制限したことで、日本企業が中国の工場で生産した製品を日本に輸送できないという問題が起きた。このように、国家が自由な貿易を阻害したことで、グローバリゼーションの前提が大きく崩れてしまった。

もう1つが、グローバリゼーションの拡大で、先進国に製造業がなくなり、サービス業が中心となって、国民の所得が下がったことと、経済の脆弱化が問題視されている。

さらに、デジタル化とAI化で、経済のより広範なレベルが影響を受ける。何百万人もの人々が今までの職を失ったり、収入を減らしたりするなか、貧富の格差はさらに拡大することになる。とくに、専門職という人たちが影響を受けることになる。

そしてもう1つが、日本の問題として、政治家の2世や3世たち、高級官僚などエリートたちの危機対応が国民の期待値以下であり、国民の気持ちに寄り添えていないことが判明した。初期のコロナ対応が完全な失敗になった。

ということで、大きく歴史の転換点に来ていることがわかる。新自由主義的な資本主義から、ある程度統制された資本主義に変わる必要がある。国益を重要視した産業政策や国民所得を真に引き上げる政策が必要になっている。それと、エリートたちから庶民への権力の移行期にあるような気がする。

SNSなどで庶民たちが本音を発言でき、その発言を無視できなくなった。そのため、エリートたちが発言する新聞やテレビの報道も下火になっている。しかし、野党もエリート化していて、庶民の気持ちに寄り添っていない。大企業のエリート化した労働組合の要求や年金生活の70歳以上の老人層の理想や理念で動くが、それは若い人や庶民たちの本音とは大きく違う。野党の支持率が低い原因でもある。

「改革の時代」に突入した世界

改革の時代という意味では、貴族から武士に政権が移行した承久の乱以降の鎌倉幕府の時代が来たようである。55年体制から完全に移行する時代になったようだ。老人層やエリートたちの理想や理念から、国民全員の本音の時代になったようである。それに伴い、指導者も変化することになる。政治家の2世たちから、実力のある政治家へ移ることになる。庶民の気持ちのわかる政治家が必要なのである。

先に米国は、白人たちの本音を語るトランプ大統領が出て、米国一国主義に転換して、製造業を中国から米国に戻し、労働者の賃金を上げる方向であり、米中の経済分離政策を進め、かつ軍事費削減のために中東から米軍は撤退していくようである。そして、この方向は、バイデン候補が勝っても継続するしかない。

グローバリゼーションの大きな後退であり、移民も入れないとしたことで、今後は人と物の移動はできなくなる。しかし、知識や資金の移動はできる時代である。白人たちは、黒人など多民族より特権的な地位を要求しているが、その部分で分断が起きている。このままいくと「南北戦争2.0」などと言われているが、多くの部分では米国民の共通利益になっている。

要するに、自国民全員の所得を増やすことや自国民だけの安全な生活ができることが重要で、一部資本家・企業家の利益を増やすことではないことに米国の白人も黒人も気が付いたことで、企業の経営は大きな転換が必要になっている。バイデン候補が当選しても、企業の法人税を上げて、富裕税も上げて、製造業を戻し、国民全員の所得を上げる方向になる。

国民の多くは、自分だけの安全な生活や自分の所得を増やしてほしいのである。それが本音だ。企業経営者は、企業利益最大を目標とするが、それでは国民と乖離しているので、国民から選ばれる政治家がそれを変更することになるのだ。

米国は「軍産学複合体」が支配しているので、抜本的な改革ができなかった。それを最初に壊したのが、トランプ大統領である。一度壊すと皆が目を覚ますので、元の体制にはできなくなる。トランプ大統領を見ると、室町時代初期の婆娑羅大名のような感じである。権威も権力も否定して、派手な行動をする。時代を変えるには、そのくらいの行動をしないとできないのであろう。そして、時代がそのような人を必要としていたのである。

同じように、日本でも庶民首相が出てきた。菅首相であるが、エリートとは違い、ビジョンを示さないが、1つ1つの指示がある方向を示している。それは、グローバリゼーションを見直し、国民全員の所得が真に上げられる政策を行うことで、それは製造業や電子産業やデジタル産業の復興である。そのための研究開発である。

観光業などのサービス産業や土地が少ない農業の拡大では、国民全員の所得拡大は、できない。それと同時に、産業育成の規制緩和やデジタル化での官庁の縦割りを打破することにでるようだ。もちろん、農業の高収益化はできるが、北海道のような大土地農業が必要になり、多くの人が働くことはできない。

また、安全な生活を阻害する中国や北朝鮮からの紛争を防ぐ軍事研究を止める総理直轄の日本学術会議の委員任命を拒否した。これは、庶民の本音に基づいた判断である。ということで、日本にも庶民の本音を理解する面白い首相が出てきたようである。

大統領選挙

現時点でも、バイデン候補が優勢であり、トランプ大統領がコロナ感染で第2回の討論会(15日)はできないし、第3回の討論会(22日)もできないか、電子会議になる可能性も出てきた。これは、断然、バイデン候補に有利になった。現時点で9ポイントの差があるが、この差を埋めるトランプ陣営の選挙集会もできない。できるのはツイッターでの発言だけである。

トランプ大統領の逆転は、コロナ感染症を治して、コロナ感染症の方針を大きく変えることができれば、その可能性が出てくる。

今後は、バイデン氏が大統領になった後の経済政策を推測した株価になるような気がする。当分、法人税や富裕税、キャピタルゲイン税の引き上げなどから株価も下落であろう。どちらにしても、VIXの高い状態が続くことになる。下落すると強気のロビンフッダーたちが買いを入れるので、そうなる。

さあ、どうなりますか?

image by:Evan El-Amin / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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