会社を活性化させるために必要だとされる組織改革。社員が力を発揮できるようにすることが重要だと言われますが、具体的には何を変えればいいのでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、「組織とはなにか」という観点から経営学の著名人の言葉を引きながら論じています。
うまく組織運営ができる3つの要素
企業における経営資産は、「人、モノ、金、情報」だと言われます。その中でも「人」は、別格の資産です。企業という組織は、人がいなければ動きません。それに、「モノ、金、情報」と違って、「人」には感情があります。今回は「組織」の話です。
組織とは
ある1,000人程度の会員組織が、組織変革をしようと動き始めました。この先、うまく変革ができるでしょうか。
その話は後回しにして、「組織」とは何でしょう。おそらく、あなたは「組織の形」を思い浮かべたのではないでしょうか。組織には様々な形があります。例えば、
・ラインアンドスタッフ組織
・職能別組織
・事業部制組織
・マトリックス組織
といったものです。これらの組織の形は、時代の変化に伴って変わってきました。企業の規模の大きさによっても、採用される形が違います。経営者の考え方によって組織の形が変わるということもあるでしょう。ひんぱんに組織の形を変える企業もあります。
では、組織の形を変えれば、経営はうまく行くのでしょうか。そうとは言い切れません。組織は「人」から成り立っているからです。
経営者は、その「人」をうまく配置して組み合わせることで、企業の業績が伸びることを期待します。そのために、組織の形を変えるということが起こるのです。そうすれば、人の力を十分に発揮できると考えるからでしょう。
本当に、組織の形を変えただけで、人は力を発揮するものでしょうか。そのためのヒントを考えてみましょう。
人が力を発揮する組織
組織について、有名な経営学者のチェスター・バーナードはこう言っています。
一人では出来ないことを、複数の人間が協力し合って実現しようとするときに生じる“関係性”である。
つまり、組織とは「関係性」という目に見えないものだということです。単なる「組織図」を指しているのではありません。
そして、バーナードは組織に必要な要素が3つあると言っています。それは「協働意思」「共通目的」「コミュニケーション」です。学者だけに、分かりにくい表現ですね。簡単に言えば、「協働意欲」とは、組織の活動に貢献しようとする意欲のことです。「共通目的」とは、いわば経営理念とかミッションとか、組織全体の目的を指します。「コミュニケーション」は、組織の共通目的をメンバーに伝え、メンバーの意欲をかきたてる行為のことです。
つまり、組織の形はどうあれ、この3つの要素を組み合わせることで、組織メンバーの力が発揮できるのだと言っています。具体的にはどういうことでしょう。
そこで、最初に紹介した「ある会員組織」を例にとって考えてみます。組織の変革にあたって、組織のトップは変革の「共通目的」を明確にしました。「組織を活性化するための変革」です。理念やミッションといった大きな目的ではありませんが、まあ良いでしょう。
その次に、各事業部門や各地域に対して、「現状の課題と解決計画」の提出を求めました。メンバーには、組織の活性化に「貢献」して欲しいと思うからです。
3つの要素を活かす
しかし、「解決計画」を出してもらうだけでは、組織の活性化はしないでしょう。メンバーが組織に「貢献」するには、組織から受け取るメリットを明確にしておくことが必要です。企業ならば、一番のメリットは「金銭的報酬」ということになるでしょう。
ところが、この組織は金銭的報酬を与えることを目的にした組織ではありません。それ以外のメリットを与える必要があります。金銭的報酬でないとすれば、メンバーにとってのメリットは何でしょう。それは、この組織に所属することのアイデンティティとか名誉といった、心の満足です。組織の雰囲気というものも、それに当てはまります。
さらに言えば、この組織が自分の家族や友人に自慢のできる組織かどうかということが大切です。メンバーがそうしたことを感じていれば、組織変革に協力してくれるでしょう。逆に、これらのメリットを組織メンバーが感じていないとすると、組織のトップは改めてここから始めなくてはなりません。時間がかかります。組織変革のためには、大きな課題です。
実は、このことは通常の企業にも必要なことだといえます。金銭的報酬を求めて企業に貢献する「人」は多いでしょう。しかし、金銭以外の報酬があれば、人はもっと企業に「貢献」しようと思うに違いありません。
そして、3つ目は「コミュニケーション」です。組織の「共通目的」を伝えてやる気をかきたてることだと言いました。言い方を変えれば、「組織のあるべき姿」をメンバーに示して、「現状の姿」からどうやってあるべき姿にたどり着けるかという「シナリオ」を描くことです。
今回の組織の場合、「あるべき姿」は「組織が活性化した姿」ということになるでしょう。これだけでは伝わりにくいです。ここは、もう少し具体的に示さなくてはいけません。たとえば、
・組織全体が一体となって活動する組織
・社会から高い評価を受ける組織
・市場に対し、常に革新的な提案の出来る組織
といったように。これでもまだ抽象的ですので、もっと具体的な姿を示す必要があります。その上で、組織のメンバーに協力して活動してもらうように訴えるのです。そのための「シナリオ」をトップは考え、メンバーに理解してもらわなくてはなりません。
もちろん、その「シナリオ」は、各部門各地域から出された「現状の課題と解決計画」の中にもアイデアが含まれています。そのアイデアを活用することで、メンバーに理解される「シナリオ」が出来上がっていくのではないでしょうか。
いかがでしょう。この「コミュニケーション」がうまく取れれば、きっとこの組織の変革は成功すると思います。頑張って欲しいものです。これと同じように、あなたのお店でも3つの要素を実行すれば、良い組織運営が出来るでしょう。
■今日のツボ■
・組織は人の関係性という、見えないものである
・組織に必要なのは「協働意思」「共通目的」「コミュニケーション」
・組織の「あるべき姿」にたどりつくには、「シナリオ」が要る
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