ビジネスマンにとって「数字」を読み解くことは必須のスキル。しかし、ただ単に数字を示すだけ、数字を眺めるだけではビジネスシーンに活かすことはできません。では、どうすれば数字を仕事に活かすことができるようになるのでしょうか? メルマガ『深沢真太郎の「稼ぐ力がつく! 数学的思考の授業」』著者の深沢真太郎さんは、「数字勘(センス)」という言葉の定義「数字から情報を作る感覚」を身につける方法を、具体的な例を示しながら分かりやすく伝授しています。
数字勘(センス)はどうすれば身につくの?
ある研修にご参加した方が、講師である私に休憩時間にご質問をしてくださいました。
「数字勘(センス)はどうすれば身につくの?」
なるほど。みんながなんとなく感じている、でもはっきりした答えがない問いですよね。いい質問だなと思いました。
とても抽象的でふんわりした「数字勘(センス)」の正体とは? さっそく考えてみたいと思います。いわゆる計算力や暗算力があればそれは数字勘があると言えるのでしょうか。
私の答えはもちろん「NO」です。
この授業や私の著作を読まれている方は、このような時に何をすべきかよくご存知でしょう。そう、定義することですね。
そもそも、「数字勘(センス)」とは何か? これが言語化できていなければ、この授業はただの空論になってしまいます。
<定義>「数字勘(センス)」とは、数字から情報を作る感覚のこと
例えば売上高1億円という数字があったとします。
数字勘のない人はこの数字を情報に変換することができません。「売上高1億円です」と上司に報告したところ、「だから何?」と言われてしまう方はこれに該当します。
一方、数字勘のある人は例えば他社や過去と比較することでこの1億円の意味を語ります。
あるいは単価や客数などに細かく分解することでこの数字の内訳を把握し、この1億円の意味を語ります。
1億円の意味を語る。これが先ほどの定義で述べた、数字から情報を作るということです。
ではその感覚とはどのようにして養えば良いのでしょう。多くの方がここがよくわかっていない。だからいつまで経っても「数字勘(センス)」が身につかない。私はそんなふうに見ています。
結論から言います。
- 比較すること
- 分解すること
この2つの行為を習慣にするだけで、「数字勘(センス)」は身につきます。
端的な例は先ほどの1億円の話でしょう。例えば他社や過去と比較する。例えば単価や客数などに細かく分解することでこの数字の内訳を把握する。結果、この1億円の意味を語れる。
少しエクササイズしましょうか。
<エクササイズ>御社の従業員の平均年齢は? その数字から何がいえますか? 1分間でまとめてください。
例えば36.5歳だとします。この「36.5」という数字だけでは何も語ることができません。「で、だから?」です。
おそらくあなたはこの「36.5」を業界平均や競合他社、あるいはご自身の年齢などと「比較」するのではないでしょうか。それが高いのか低いのか。数値の便利なところは大小がはっきり存在することです。だからその利便性を使って情報を作り何かを語ります。
あるいはこの「36.5」を男女で分けて考えることもできるでしょう。仮に男性が45歳、女性が28歳だとすると、女性が長く定着せずに退職してしまうという課題の存在を感じ取れます。細かく数字を見ていくことで、本当の課題が明らかになることでしょう。
比較すること。
分解すること。
数字から情報を作ることが上手な人は、実はこの2つをしているだけなのです。このことがわかってしまえば、あとは日常の癖づけをするだけ。
電車に乗っているとき。車内で見かけた広告記事に何か数字が書いてあったなら、それを使ってどんな比較ができるか、どんな分解ができるかを考えます。
野球が好きな方なら、スポーツニュースなどで報じられるデータを使ってトレーニングができます。
日経新聞が読める方なら、素材に困ることはないでしょう。
あとはやるかやらないか。それだけです。
ビジネス数学も実は比較と分解でほとんどを語ることができます。
売上を分析するなら、単価や客数に細かく分解して数値を把握します。相関係数という数字は最大値が「1.0」ですが、相関係数0.8という数字の意味は、この「1.0」と比較することで説明できます。損益分岐点売上高比率という数字も、損益分岐点と目標値の比率のことであり、すなわち比較です。比較と分解さえできれば、ビジネス数学は制したも同然と言って良いでしょう。
ちなみに今回ご紹介した「分解」という行為は、すなわち「わける」という行為に他なりません。この「わける」がまさに私の最新刊となる小説「わけるとつなぐ」のメインテーマになっています。
分解する思考が苦手だなと感じる方は、ぜひ読んで欲しいと思います。とても簡単に身につくことがご理解いただけるはずです。
そろそろ時間だ。
今日はここまで。
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